ep21 街の黒影、二つの白光
街灯の明かりが消え、世界が一瞬で闇に沈んだ。
黒影の核が脈打つたび、路地裏の空気が息を詰まらせるほど重くなる。
繋は導標を握りしめ、縫を庇うように前へ出た。
白光が闇を押し返し、わずかに視界が戻る。
「リセル、綾! 後ろを頼む!」
繋の声が路地裏に響く。
リセルは頷き、繋の背中に自然と近づく。
距離はほとんど片手が届くほど。
まるで無意識に「離れたくない」と言っているようだった。
(今回の黒影……動きがおかしい)
繋は目を細め、黒影の揺らめき方を観察する。
形は定まらず、ただの霧のようにも見える。
だが――その霧の中に“何かの輪郭”が混じっていた。
縫が不安げに呟く。
「ケイ……あれ、怖い……近づいてくる……」
「大丈夫だ、縫。俺がいる。」
繋が縫の頭を軽く撫でると、縫の光が少し強くなる。
――――――――
黒影は徐々に人型に近づきつつあった。
ただし、今のところは核が剥き出しで、未完成の状態。
今のうちに結びつければ、一気に抑え込める。
「今ならまだ間に合う……!」
繋が導標を構え、白光を放とうとした――瞬間。
影が四方から襲い掛かってきた。
「っ……速い!」
綾が反応するより早く、黒影の一部が縫に迫る。
繋が振り返る。
導標を投げるように振り回し、白光で影を吹き飛ばす。
だがその隙に――
背後から別の影が繋に伸びた。
「繋、ダメッ!」
リセルが叫ぶと同時に、繋の肩を強く引き寄せた。
黒影の手が繋の首元をかすめ、石壁に深い傷を刻む。
繋は振り返って驚く。
「リセル……!? 危なかったじゃないか!」
リセルは息を荒げたまま、繋を見上げる。
その目には恐怖と――強い決意が宿っていた。
「……繋が傷つくの、見たくないの。」
繋が何か言おうとしたその瞬間、綾が叫ぶ。
「二人とも! いちゃついてる暇ないわよ!」
繋は慌てて前を向き直った。
――――――――
黒影は形を変え、人のような腕を伸ばしてくる。
しかしその繋ぎ目は壊れやすく、脆い。
(完成しきってない……今なら押し切れる!)
繋は導標に集中し、縫を呼んだ。
「縫、一緒に行くぞ!」
縫は光を纏い、小さな体で黒影へ飛び込む。
白光の拳が黒影を殴り飛ばし、影の一部が霧のように弾け飛んだ。
綾が呟く。
「このモノ、異様に反応が早い……。感覚が鋭いと言うか……」
確かに黒影は人に近い反応を見せていた。
まるで“誰か”の残滓を映したような、不自然な動き。
縫が影の中心に向かって叫ぶ。
「……ケイ、今!!」
繋は導標を天に掲げ、白光を放つ。
光が縫の体を通り、黒影の核を貫く。
黒影が悲鳴のような音を上げ、形を崩す。
路地裏全体が白光に包まれ――
黒影はゆっくり、静かに霧散した。
縫は息を吐き、繋に寄り添う。
「……怖かった。」
繋は優しく縫の背を撫でる。
「もう大丈夫だ。よく頑張ったな。」
――――――――
戦いが終わり、街灯がゆっくりと戻る。
黒影の痕跡は完全に消えていた。
リセルは繋の背後で、胸に手を当てて深呼吸している。
ずっと繋を見つめたまま。
綾はその様子に気づき、小声で呟いた。
「……あの子、ただの仲間って感じじゃないわね。」
繋には、まだ聞こえない声だった。
リセルは繋の袖をそっと掴む。
「ねぇ……もう、どこにもいかないでね……?」
その言葉の意味を、繋はまだ知らない。
しかし――
その小さな震えには、ただの仲間以上の“何か”が確かにあった。
作者の一言
果たしてリセルって何者なんでしょうね?考察とかあったらコメントしてください!いろんな考え見てみたいんで!




