ep20 新たなモノの影
縫との結びが完了した森は、静かさを取り戻した。
しかし、繋の胸には不安が残る。
森の深部に潜む“未成体の黒影”は消えたが、世界の崩壊を防ぐための戦いは終わっていない。
「やれやれ……少しは落ち着いたか。」
綾が杖を肩にかけ、森の残骸を見渡す。
枝や葉が粉々になった跡が、戦いの激しさを物語っていた。
リセルは繋の横で、落ち着かない様子で足を動かす。
小さな手の動きが何度も繋の袖に触れるたび、わずかな距離で確認しているようだった。
(どうして……こんなに繋に意識が行くんだろう)
繋は心の中でふと思う。
リセルは普段通り明るく、頼りになる仲間だ。
でも、今の彼女の目は――ただの仲間のそれではない。
「ねぇ、繋。」
リセルが声をかける。
「これからどこに向かうの?」
「次は街だ。情報を集めて、次のモノの発生地点を探す。」
繋は導標を手にし、縫と並んで歩き始める。
リセルも軽く頷き、後ろから歩く。
しかし視線は繋から離れない。
――――――――
森を抜けると、街の喧騒が広がった。
日常の生活と同時に、異常な気配を察知できる発見者の目には、街の片隅に潜む不穏さがはっきりと映る。
「おかしい……」
綾が眉をひそめる。
「こんなに小さな街でも、モノの気配がある。しかも、高レベルの可能性が……」
繋は導標を握りしめ、街の奥をじっと見つめる。
縫が隣で小さく震える。
「大丈夫だ、縫。すぐに結びつけて安全にする。」
繋の言葉に、縫は小さく頷く。
リセルは少し距離を置きつつも、何度も繋と縫を確認する。
小声で独り言のように呟く。
「……絶対に守る……絶対に離さない……」
その声は森の戦いの余韻と重なり、ほんのわずかに不安げでありながら強い決意を帯びていた。
繋はその言葉に気づかない。
――――――――
街の裏通りに入ると、黒い影が再び揺らめいた。
空気が一瞬で冷たくなり、人々は気配を察して足早に逃げる。
「モノ……だな。」
綾が杖を構える。
繋は縫の手を握り、前に進む。
リセルもすぐ後ろにつく。
その後ろ姿には、ただの仲間ではなく、強い護衛の意思が滲んでいた。
黒影が街灯の影に姿を現す。
まだ形は定まらず、黒く渦巻く霧のようだが、明らかに攻撃性がある。
「縫、今回は一緒にやるぞ。」
繋は力強く声を出す。
縫は深く息を吸い、黒光をまとった体を少し膨らませる。
黒影はゆっくり、だが確実に二人に迫る。
街の路地は一瞬で戦場となり、黒影と縫、そして繋の白光がぶつかり合う。
リセルは導標を握る繋に目をやり、言葉には出さずに心の中で決意する。
(どんな危険でも、絶対に繋を……守る……)
――――――――
その時、黒影の核がゆらりと揺れた。
街全体の明かりが消え、闇が一気に押し寄せる。
「来るぞ!」
綾が叫ぶ。
繋と縫が構える白光が黒影に突き刺さる。
街路の石畳が光と闇の衝撃で割れ、空気が震える。
黒影の姿は揺れ、街の影に溶け込む。
しかし、その黒影の一部が縫を目掛けて伸び、攻撃を仕掛ける。
繋は導標を振り下ろし、縫を守るように白光を浴びせる。
リセルはすぐそばで、手をかざして光を補助する。
(まだ本当の戦いは始まっていない……でも、絶対に守る……!)
リセルの決意が、街の暗闇に小さく光を灯す。
作者の一言
ついに20話です!こんなにも長く出来たのは初めて。




