ep18 縫の覚醒とアサルの刃
光が収まった。
森の闇と黒霧がゆっくりと戻る中、繋は額から冷たい汗を流しながら立っていた。
縫は――半透明だった体が、徐々に黒光を帯びた人型へと変わっていく。
幼い、しかし確実な意思を持つ姿。
呼吸が見える。確かに“生きている”。
「……できたのか?」
リセルが小声で震えながら問う。
「まだ……油断できない。」
綾が杖を握り直す。
森全体の空気はまだ重く、縫の体から放たれる光はまばゆくも、どこか不安定だった。
――――――――
アサルはその光を睨みつけたまま、一歩も動かない。
「まだ……だな。」
その声は冷たい刃のように森を切る。
縫は震えた声で小さくつぶやく。
「……ケイ……怖い……でも……大丈夫……」
繋はその声に応え、ゆっくり手を伸ばす。
「大丈夫だ、縫。俺がいる。」
白い光が縫の体に絡み、徐々に安定していく。
縫の手が繋の手にしっかりと触れた瞬間――
黒霧の核が、突然暴れだす。
「っ!」
綾が杖を振るうも間に合わず、黒霧が森を裂き、枝や枯れ葉を吹き飛ばした。
そして――アサルの刃が閃く。
「これ以上の猶予はない!」
縫が咄嗟に体を反らす。
だが黒霧の乱れに巻かれ、縫の左腕が刃にかすかに触れる。
――鋭い痛みが走る。
「縫っ!」
繋は導標を振り下ろし、縫を庇った。
しかしその反動で、繋自身も刃の斬撃の一部を受ける。
肩から脇腹にかけて鋭い痛みが走り、倒れそうになる。
リセルが泣きそうな顔で駆け寄る。
「けい、大丈夫!?」
繋は手で縫を押さえ、辛うじて立ち上がる。
「……大丈夫だ、少し痛いだけ。」
その声に、リセルは顔を真っ赤にして涙をこらえる。
「けい……お願い……守って……!」
――――――――
縫はまだ完全に覚醒していない。
黒い影の一部はまだ形を保てず、森の中で揺れている。
繋は導標から再び白い光を流し込む。
(もう一度……今度は完全に結びつける!)
意識を集中させる。
縫の体に流れ込む光が核を包み込み、揺れていた影が徐々に固まっていく。
体から漏れる黒光が、鮮やかな白光に変わり始めた。
しかし――
森の奥から、さらに別の影が迫ってきた。
「っ……!?」
綾が叫ぶ。
「ここまで……来たの……!?」
黒い塊が、未だ森の闇に隠れたまま、縫に向かって突進してくる。
アサルは刃を構え、冷静に待ち構える。
「――これは手強いぞ。
未成体がもう一体いる……しかも高レベルだ。」
縫が体を小さく震わせる。
「怖い……ケイ……助けて……」
繋は縫の手を強く握り、導標をさらに力強く光らせた。
「縫、怖がるな。俺がついてる。
だから――お前も戦え!」
黒影が縫に襲いかかる。
導標の光が、黒影の勢いを正面から受け止めた。
弾ける光と闇。森が裂ける轟音が響く。
リセルは立ちすくみながら叫ぶ。
「やっぱり……!
こんな相手、命を賭けないと勝てない……!」
綾も杖を握る手に力を込める。
「繋、行くわよ!
縫を守りつつ、結びつけを完成させるの!」
繋はうなずき、縫と視線を合わせる。
(ここで逃げたら、縫は絶対ナニカになる。
守るしかない……俺が――)
白光が導標から縫の体へ流れ込み、黒影に押し返される。
光と闇の衝突が、森全体を揺らした。
縫の黒光が白光に包まれ、初めて“意思ある体”として確立し始めた瞬間――
アサルが刃を振るう。
作者の一言
ついに日を跨ぎましたとさ。書くのおせぇよというのは言わないで下さいちゃんと6時には投稿できるようにしてるんで!




