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家に戻って

 スキル鑑定を終えて村に戻ったその日、お母さんは荒れた。

 当然だ…… 娘二人が出て行ってしまったからだ。

 だけぢ、二人が出ていく原因になった、

 私にはいつものように接してくれた。

 お父さんもお母さんも、決して私を責めるようなことはしなかった。

 それはそれでうれしいんだけど、同時にさみしくもあった。

「かなた、すまなかったな。」

「大丈夫よ、あの子達は自分の意識だから。」

「強いな…… かなたは……」

 確かに10才の女の子だけど、中身は中年のおっさんなんだよなぁ。

 お父さん、私はあなたより年上ですよ。

「二人は生きているんだから、そんなに落ち込む事無くない?

 まぁ、私は裏切られたほうだから、二人とは敵対関係になったわけだけど。」

「怖いこと言うなよ……」

「あら…… 私は武器を向けられたら、例え元が身内であったとしても容赦はしないわよ?」

「かなたお前…… なんて恐ろしい子だよ……」

「そうかしら? こういったものは相手に最初からその気は無いのだから、話し合うだけ無駄じゃない?」

「お父さん、かなたの事がわからなくなってきたぞ……」

 お父さんはわざとらしくヨヨヨとなきはじめる。

「そんな大根芝居しなくていいから……」

「かなたが冷たい……」

 はぁ…… これで三人の娘を持つ父親なんだぜ……

 お父さんキモいなんて言ったら真っ白になるんだろうなぁ。

 面白そうだから、こんど言ってみるか……

「かなた…… あまりお父さんをいじめたらダメよ?」

「お母さん、もう大丈夫なの?」

「正直、つらくないといえば嘘になるけど、あの子達が自分で決めた道ですもの。

 あの子達がいつか帰って来たときに変わってたら心配するじゃない……」

「むしろ、お説教する位元気でいないとね。」

「それにかなただって、いずれは旅にでたいんでしょ?」

「バレてたの?」

「血はつながってなくても、私はあなたのお母さんよ?

 見てれば何を考えているか分かるわよ……」

「やっぱりお母さんにはかなわないか……」

「それと、高熱出して寝込んでから、前世の記憶を思い出したとかない?」

 お母さんから信じられない言葉を聞いた。

 確かに、私が”俺”の記憶を取り戻したのはちょうどその時からだ。

「あの時からかなたの雰囲気が変わったのよね。

 控えめでおとなしい子だったのが、

 年の割には落ち着いて大人びているのよ……

 反面、さっきのお父さんのように、いたずらな子の一面もあるし。」

 お母さん、よく見ていらっしゃる……

 人見知りしていたのかと思ったけど、記憶の中ではサンとルナの影響で、人付き合いはいい方だ。

 サンとルナが前を歩いて、その後ろについていくという形ではあるけど……

「かなた、あなたのスキルはなんだったの?」

「極集中力、極想像力、絶対記憶、魔眼だったよ。」

「一見すると戦闘向きではなさそうね……」

「お母さんもそう思う?」

「あくまでも一見はね…… かなたは前に出て戦うのに向いてないだけ。」

「確かに…… トロくて脆くて非力だけど……」

「自分をそこまで卑下にしなくてもいいわよ…… 言ってて自分で悲しくならない?」

「うん、悲しくなってきた……」

「偶然にも魔眼持ちの知り合いがいるから、来てもらいましょう。」

「パーティーを組んだことのある天族の女性よ。

 魔眼は天族特有のスキルだからね。」

「それじゃぁ、私に天族の血が流れているのは……」

「お母さんもお父さんも最初から気付いていたわよ?

 環と翼がないのはわからなかったけどね。」

「私、混血ってことなのかな? 捕まったらヤバいって守衛長さんが言ってたけど。」

「それなら小さい頃に魔法薬を頭から被って体質が変わったとでもいえばいいわよ。

 実際、体質を変える魔法薬があるわけだし。」

「え? あるの?」

「瞳の色を変えるのもファッションの一貫って事、ものすごく高値だけどね。」

「私、もしかしたら?」

「心配しなくても、いまのかなたはナチュラルよ。」

「それはうれしいはずだけど、なんか複雑……」

 私自身は今の姿でも満足している、

 前の記憶を辿っても自身にコンプレックスを抱いていたという記憶はない。

 実際、自分が白髪である事以外は知らなかったわけだし。

「お母さんとしては、今のままでいて欲しいかな、ナチュラルでそこまで綺麗なのそうそうないわよ?」

「私もそこには同意かな。」

 姿見で見た、あの整った姿を変えるのは普通にもったいない!

「お母さん、やけに協力的だよね? もっと苦労するかと思ったんだけど……」

「お母さんだって冒険者だったのよ?

 ただ、信頼できる男の子と一緒に行動しなさい?」

「信頼できる男の子とか…… もう一人しかいないじゃない。」

「あら…… ラルス君はいい子だと思うわよ?

 帰って来てからは、結構素直になったみたいだし……」

「私に突っかかって来てたのは主にアルスの方よ……

 本当に気にくわないだけとは思えなかったけど。」

「アルス君もかなたにかまってほしかったのかしら?」

「勘弁してよ…… 何かとマウント取ろうとしてくる人は好みじゃないわ……

 それを考えると、ラルスのほうがよっぽどかまし……」

 視界の端に見えたお父さんが何かそわそわしている。

 私とお母さんの話が聞こえたらしい……

 まだ嫁ぐ歳でもないだろうに……

「あらあらあなた…… 今からそんな調子じゃ、かなたがお嫁さんに行くとき大変よ?」

 私の視線の先のお父さんの様子に気づいたお母さんが、

 お父さんをなだめに行った。

 大変だなお父さん…… あなたの娘は三人いるんですよ?

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