ある夜番でのこと
「しかし…… あれには驚いたよなぁ……」
私たちは食事を済ませ、洗い物を済ませた後、
休む時間帯になったために女の子チームの私たちは、
毛布にくるまって寝ている時間帯、
私はラルスが夜番をしている時間に目が覚めてしまっていた。
「私だって驚いたわよ……
まさか、できるとは思わなかったもの……」
食事のあと、私は反復練習をして、
自在に出し入れができるようになってしまった。
しかも、収納した物のリストも見られるようになったというおまけ付きで……
「収納魔法って簡単なのか?」
「私のきいた限りだと、誰しも魔力を持っていて、
練習したら扱えるようになるらしいんだけど、
その習得は難しいって話だよ。」
「少なくても、うちの村ではお前が初だな。
なぁ、どうやったんだよ?」
たしかに、興味はもつよねぇ……
手ぶらで歩けるって、旅をする上だと楽な事この上ないからねぇ……
「ただイメージしただけよ…… 自分だけの空間に物を入れるイメージ。
出すときはその反対に出すイメージで、
居れたものを見るときは、それを見てリストアップするイメージ。」
「ああ…… よくわっかんねぇなー」
「じっさい、そうとしか言いようがないよ……
感覚でやってるようなものだから。」
私は沸かしたお茶をラルスに手渡して隣に座った。
もう一つ持ったお茶をすすって落ち着いた瞬間、
私はあることに気が付いた……
(私のこの位置って…… 恋人の位置だよな……
もしかして、やってしまったか?)
「ああ! どうやればいいんだ!」
まだ、10の男子にそんな色恋なんて考えるようなことでもないか……
意識しすぎて不自然になったらどうなることやら……
「そんなに気になるんなら、
最初は物を使ってイメージの練習でもしたらどう?」
私は身振り手振りで伝えた。
そういえば”俺”の時は魔法はイメージが大切だって派だったな。
呪文はそのイメージを引き出すためのきっかけに過ぎないって、
何かの作品で見た気がする。
「どうでもいいんだけどさ…… 見張りはしっかりしてよね。
私たちの命はあんたにかかっているといっても過言じゃないんだからね?」
私はラルスを小突いた。
「ぶ……」
「どうしてそこで吹きだすのよ……」
飲んでいたお湯を吹きだしてむせている。
「私も目が冴えちゃったから手伝うよ?」
「いや、お前は休んでおけよ。
この先はまだ長いんだからよ。」
「そう? じゃぁ、せめて横にだけでもなっておくかな……」
うーん、なんだろう……
なんかいつもと反応が違うきがする……
なんかかわいい……
しかし、今から寝るって言っても、
しっかりと目が冴えちゃってるんだよなぁ……
そういえば、今はお父さんも今出ているところだっけ?
「なんだかなた…… こんな夜更けに。」
「んー…… ちょっと目が冴えちゃって。」
「おまえ、昔から変な時間に起きる癖があるよな。」
「おかげで、サンやルナに比べるとちょっと老けてきたかな。」
「10のお前が言うなよ…… お父さん、悲しくなってくるぞ?」
私はお父さんの隣に座る。
私が夜番をするとき、大抵この位置になる。
「そういえば、お前が高熱を出して以来雰囲気が変わったよな?」
「そう? 私は普段と変わりないはずだけど。」
「なんというか…… 妙に落ち着いてきてるんだよ。
まるで、一回りも年上の方と接してるみたいだ。」
「なにそれ? それこそキノセイじゃない?」
まぁ、それは無理もないんだよなぁ……
中身、40超えのオッサンだし……
とはいえ、体は10歳の少女だから、
体力や力は同世代の男の子からしたらかなり弱い。
同世代の女の子の中ですらちっちゃいのに……
「見た目は末っ子みたいなんだがなぁ……」
そこまで小さく見えるか?
ていうか、鏡がないから自分の姿を見たことないから何とも言えない。
目線が低いから小さいんだなって思うだけ。
「どうした?」
「そう言えば、私自分の姿を見たことないなってね……」
「うちには鏡なんて高価な物ないからな。
街に行けば目にするかもな。
興味があるなら探してみるのもいいかもな。」
姿見があったら、今どんな容姿か見ておきたいな。
「そうか…… かなたも気になる年頃になったんだな。」
「何をしんみりしてるのよ…… そんなんじゃないから!」
とは言ってみたものの、全く興味がないわけはなく、むしろ興味全開だ。
服を選んで着飾りたいものだ。
まぁ…… 今の生活ではそんな贅沢はできないんだけど……
「飾ったらさぞ美人さんになるんだろうなぁ。」
「私の顔、自分でさえよく分かんないから、
なんと言われても、どう反応したらいいのかわからないんだけど?」
私の未来の姿でも想像しているのか、
気持ち悪いほどに奴いている。
「いつも思うんだけど…… 静かな夜よねぇ……
こういうのって、もっと魔物とか野生動物の気配とかするもんじゃないの?」
「前はもっと緊張した空気だったんだがな、
お前を拾ってから、比較的静かになったな。
静かというよりはむしろ、
何かに怯えているようなそんなとこだな。」
「それって、サンとルナが産まれたってこと?
ただ双子が産まれたってだけで、
野生動物が警戒するようなことなの?」
私を見るお父さんの表情が曇る……
なんでそんな表情になるんだろう?
「ふわぁぁぁぁ……」
「これはまた、景気のいいのが出たな。
もう遅いことだし、さっさと休むんだ。」
「うん、そうする。」
体が小さくて体力がないせいか、
程よい疲労感が眠気を誘って、
重要そうな場面を遮った。
無理して起きていることもないだろうし、
旅路も始まったばかりなので、
ここはおとなしく休んでおきますか……




