男子の定義ってどこも一緒のようで
私が転生してから数日が立ったある日、
私たちは村長の双子の息子と一緒に、
村長の好意で街に出かけることになった。
さすがに、娘三人だけ行かせるわけにもいかないということで、
お父さんが同行することになった。
そりゃそうだよね…… いくら村長の好意とは言え、
年頃の娘を同い年の男子がいる一行に、
親なしで行かせては、何かが起きるかもしれない。
数日で思い知らされたことだけど、
やっぱり、男子って力が強くて抵抗ができないんだよね。
美少女が無防備に寝てたら、理性保てますか? ”俺”だったら無理だな……
「お父さんが一緒で安心するよ。
お父さんが居なかったらどうなってたことか……」
「そ…… そうか? 俺は当たり前のことをしてるだけだぞ。」
お? 照れてる照れてる…… かわいいなぁ……
サンとユエ、お父さんの間も仲が良くてほほえましい。
それでいて、お父さんのこの反応……
はい、この人、子煩悩です。
おかげで、二人も素直で明るくいい子に育ってるようで、
よく両親の手伝いをしている親思いだ。
ご近所さんからもうらやましがられる家族の中、
私も家族として接してもらい、何不自由なく過ごせています。
「うっひー…… お尻いたい……」
少しでも和らげようと両手をついてお尻を浮かせている。
目の前の男子共はどこに目が行ったのか、
顔を赤らめて目をそらした。
(こいつら…… サンの胸元を見たな……)
少年よ…… わかるぞその気持ち……
見ちゃうよなぁ? 慎まやかでも、衣服と肌の間って魅力的だよな?
わかるぞぉ…… ”俺”でも見ちゃうね……
まぁ、”俺”はこの数日で、自分のをガッツリ見てるから、
もう慣れちゃったがな。
”私”からしたらこういうのって、案外気づくもんなんだなぁ……
すまない…… 前世の”俺”が見てしまった人たちよ……
「な、なんだよ?」
「なんでもなーい」
私の視線に気づいたのか、慌てた様子を見せてきた。
中身が40過ぎってのもあるかもしれないけど、子供だなぁって感じはした。
「そういえばお前、両親ともに似てないよな?」
「ああ、言ってなかったっけ? 私、拾い子だよ?」
「なんだぁ? ラルス…… デリカシーないなぁ?
かなたは私たちの大切な家族、それで十分よね?」
ラルス…… 双子の兄弟の兄の言葉に即座に反応するサン、
ユエも心なしか起こってるように見える。
大切に思われてるのはうれしいことだ。
兄弟からは結構突っかかってこられてはいるが、
お互いに年が近いこともあって、何かと仲が良かったりもする。
二人は私に気があるとか、サンが言ってたけど。
なかなかお似合いでカップリングできてるんだよなぁ……
私は溢れ組だ……
「ねぇ、つくまで長いんだし、基礎知識を教えてよ。」
「お、おう…… 俺にわかることがあれば答えてやらんこともない。」
要は答えてくれるってことでOK
「じゃぁまずは…… 各地を旅して回るような冒険者と呼ばれる人たちがいる?」
「そりゃぁ居るには居るさ。」
「何その中途半端な答え……」
居るには居るということは、
この世界ではその人たちを冒険者という明確な区切りはないということになるのかな?
「魔物が居るって記憶してるんだけど、
それなら、その魔物に対抗する人たちが居るってことでしょ?」
「そういう例え方なら居るだな。
お前の言う冒険者はたぶん放蕩者と呼ばれる人たちだな。
街に拠点を構えて、魔物の討伐や採取、
護衛依頼なんかを請け負うのが請負人だ。」
冒険者というひとくくりではなくて、
放蕩者と請負人という風に分類されるんだ。
「どちらも、魔物に対処するという点では一緒だが、
一つの街で拠点を構えてダンジョンを攻略したり、
依頼を受注してこなす請負人と違い、
定着をしないであちこち歩きまわる放蕩者の方が蔑まれたりする。
未知の領域に足を踏み入れる分、危険も多いしな。」
確かに、未知の領域は危険が付き物だけど、
そこを探索するのが醍醐味でしょうに……
(ん?)
考え事で逸らしていた目線を戻すと、
目の前に座っているラルスが慌てて視線をそらした……
さてはこいつ…… 私の体を見て欲情してたな……
まぁ、ほかの女の子達に比べれば、
ひときわ発育の良さは際立ってると認めはする。
「何かなたの体見て発情してんのよ? スケベルス。」
「そんなん見てねーし! 言いがかりだし!」
「分かりやすい反応だなぁ……」
この二人、なかなか息あってるよなぁ。
いずれ付き合って、結婚したりするのかなぁ……
そういえばサンのやつ…… 私に気があるとか言ってたな……
私とラルスが? …… うん、ないな……
「うん? かなた?」
「ううん、なんでもない。」
いかんいかん…… 変な考えが頭をよぎっちゃった。
「冒険者ギルドとか育成機関とかあったりするの?」
「冒険者の育成機関とかは聞いたことはないが、冒険者ギルドは確かに存在するぞ。
民間人や国家、各ギルドからの依頼の受注、冒険者への仕事の斡旋なんかを、
一手に引き受ける組織が存在するぜ。
大体の街には支部があって、クエストカウンターと掲示板に、
食堂と宿泊ができる大掛かりな建物があるって話だ。」
「へぇ、意外と詳しいのね。」
「誰かさんが冒険がしたいって言ってたからな。
俺が代わりに調べてやっただけだ。」
「ありがとう、それは素直にうれしいよ。」
「お…… おう……」
えぇぇ…… 何この反応…… うちらまだ10だぞ?
10で好きな子が居るのは普通なのか?
居たことないからワカラーン……
「そういえば、なんでスキルを調べるのに町へ行く必要があるの?
それに、10歳まで待たなくちゃいけない理由って何?」
「なんでってそりゃ…… スキルを調べるような高価なアーティファクトを、
俺らの様な村が管理できるわけないだろ?
10歳は節目で、大体の男児はこの年から職に手を付ける。」
「えー なにそれ? 私全く知らないんだけど?」
「女の子は家事の手伝いをして覚えていくんだ、
二人はもちろん、かなただってお母さんの手伝いをしただろ?
もちろん、一般的な家での話だから、
お前たちが望むのであれば、好きな道に進むのも止はしない。
だが、せめて成人までは家にいることだな。
それから先のことはお父さんは何も言わないが、
お母さんがなんていうかだな。」
「お父さん…… あのお母さん…… 落とせると思う?」
「俺には無理だな…… お前が冒険者になりたいのなら、
お前が自分の気持ちをはっきりということだな。」
やべぇ…… このオトン…… かっこよすぎて惚れてしまいそう……
この世界の成人って確か15だよね? あと5年かぁ……
5年…… 短いなぁ……
「女性冒険者っているのかな?」
「いや、普通に居るだろ? そりゃぁ、男に比べれば人数は少ないかもしれないが。
請負人の中にも名が通った女の人は結構いるぞ。」
「そうなの?」
「逆になんでお前が知らないんだよ……
冒険者になりたいんだったら、普通は調べていそうなのに。
それに、お前の両親は放蕩者の冒険者だろ?」
「え? そうなのお父さん? 私、知らないんだけど?」
「ああ、言ってないからな。
父さんが後衛で、母さんの援護をしていたものだ。」
「それなら!」
「厳しいと思うぞ? 冒険者の危険さや厳しさを一番知っているんだからな。
お前だったら、自分の娘にそんな道を歩ませたいか?」
確かにその通りだわ…… そんなところに送り出したりするだろうか?
わからん…… ”俺”に子供なんて居たことないし…… ”私”はまだ10だし……
「かなたにはまだ早かったな。
家庭を持つってのはそういうことなんだぞ?」
「いやぁ…… そういうのはまだいいかなぁ……」
「ラルス君にだったら、かなたを嫁がせてもいいかな。」
「それはない!」
「即答かよ!」
私は確かに10歳だから、そんな話も出てきてもおかしくないかもしれない。
だけど、私の女子歴はたった数日なんだよなぁ……
「あれ? そういえば…… アルスの奴、静かじゃない?」
「ああ、アルスならほら。」
あ…… 酔ってた……




