表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

災渦の魔物 ク・リトル・リトル

 ラミールさんがウチに来てから二年の月日が流れた頃、村に奇妙な噂が流れて来た……

 それは隣の街のオーロラプロムナードが、突然得体のしれない空間に飲み込まれ、大穴が空いてしまったということだった。

 その開いた大穴の中は、外から見ると星空が広がっているように見え、存在が不確かな大型の海洋生物の尾ひれが見えるらしい……

「飲み込まれたり中に侵入した者に魔力耐性がない人や生き物は、魔力の影響を受けて魔物化するらしいわ……」

 大人三人集まって話している所に私が偶然に通りかかってしまった……

 突然開いた大穴に大型海洋生物の尾ひれ……

 なんか見たことあるなぁ…… なんだったかなぁ…… あのクジラの名前……

「ク・リトル・リトル……」

 大人三人はいるはずのない客に驚き、一斉に私を見た……

「そんなに驚かなくても……」

「かなた…… いつから居たのよ……」

「えぇっと…… 街が呑み込まれたって所から?

 だけどそれ、隠す事なのかな? 村中に広まってるよ?」

「あぁそうだったな…… ところでかなた……

 ク・リトル・リトルとはなんなんだ?」

「空間そのものを食べちゃうクジラよ。

 宇宙に生きる大型の生き物で、私が知ってるのはそのクジラのお腹の中には、食べた空間がそのまま残るはずなんだけど……」

「つまりどういう事?」

「私の知ってるクジラから変異したか……

 元からこういう性質なのかは知らないけど……」

「何故かなたはそんな事を知ってるんだ?」

 これはやらかしたか? お母さんにはともかく、お父さんには前世の記憶を持ってるとは話してない……

「街に行った時に本で読んだとかでしよ?

 首都ほどではないにしろ、そこそこの数はあったから。」

「かなた…… そんな事やっていたのか?」

「うん…… 暇潰しといったらそれぐらいだったしね…… 服とかはあまり興味なかったし。

 最近でもラルスの所にお邪魔して読ませてもらってるよ。」

「年頃の娘が、一人で男の子のいる家に行くような子に、お父さん、育てた覚えはないぞ。」

「何の話し? まぁ、ラルスは好きな方だし、お父さんの気が気じゃないのは分からなくもないけど?

 でも…… いまそれどころじゃないよね?」

「ラルス君の事は、後でお母さんに聞かせて貰うとして、たしかにかなたのいう通りよ。

 街に空いた大穴が開いてきてるらしくて、この村を捨てて全員で避難する事が決まったのよ……」

「村って言っても全員だと、かなりの大所帯になるわよ? 自警団だけで守りきれるかどうか……」

「そこは俺や母さんも協力する、ラミールにもお願いするつもりだ。」

 なるほど…… それで空気がピリついていたわけだ。

「それなら私も……」

「気持ちは嬉しいが、かなたはまだ子供、しかも女の子だ…… 参加させるわけにはいかない。」

 そうだよね…… そういう反応が普通だよね。

「かなたちゃんには小さな子達の世話をして欲しいな。

 かなたちゃん、小さい子によく懐かれてるから。」

 ちっちゃいからからかわれているだけな気がするんだけど……

「ここから北に森も越えた先に遺跡があったろ?」

「一週間くらいの距離があるあの遺跡? 遺跡に移住するって事?」

「この辺りでめぼしいのはそこしかないだろ?」

「大穴から距離を取るのは賛成だけど、ここから北に広がっているのは結構険しい山でしょ?」

「どちらにせよ、俺たちだけで決める事ではないな……」

「ねぇ? 大穴がこれ以上は大きくならない可能性は?」

「大きくならないならそれはそれでいいが、それが周りに影響がないかどうかは、また別の話しになってくるだろ?」

「あれ、大穴に見えてその実、膨大な魔力の塊みたいなものよ? その影響下で周りの魔力濃度はとんでもないことになってるわ……」

「目に見える以上の被害がある訳か…… これは急いだ方がいいな……

 かなた…… お前のアイテムボックスは腐敗や劣化はあるのか?」

「特に無いかな…… 入れた時そのままの状態で取り出せるわよ。

 暖かい物はずっと暖かいままだし、冷たい物もずっと冷たいまま。

 生物は入れた時の状態だし、熱した鉄やガラスなんかも冷めずに熱いままよ。」

 収納魔法…… 都合上私はアイテムボックスと呼んでいるわけだけどこれがまぁ便利。

 練習も兼ねて色々と実験を重ねてきた。

 私が物として認識できれば、生き物はおろか液体や気体まで収納できてしまう。

 そして、入れた物の時間が止まるということだ、熱い物は熱いまま、冷たい物は冷たいまま、火を灯した明かりは燃え尽きず、点火した爆発物は爆発しないのだ。

 収納物を調べたい時はリスト化されカテゴリー分けされていて凄く見易い。

 アイテムボックスの中の物を解析鑑定したり製薬製錬はできない……

 それができてしまったら、もうどこかのスライムさんだ……

 後は保管容量なのだが、まだ限界を感じない位だ…… 要はわからないということ……

「すまないが荷物を頼めるか?」

「そのぐらいお安いご用よ。」

「理由は聞かないんだな。」

「ちょっと考えれば分かるよ…… ただ、私が所有権を持ってないやつは、持ち主に同意して貰わないと収納はできないからね?」

 持ち主の合意が不要になっちゃうと、いろいろと悪さができちゃうからね……

「はぁ…… なんでこんなことになるのよ…… 私達が何をしたというの?」

 私達から見たら確かに未曾有の大災害になるのだけど、ク・リトル・リトルからしたら、生きていくための食事に過ぎない。

「お父さん…… いつ出るの?」

「いつかはロバートと相談して決めるが、近いウチになるはずだ。

 いっそのこと、村ごと持っていけたらいいのにな……」

「さすがに村単位で収納はできないわよ?

 いくらなんでも対象が大きすぎる。」

「それなら人そのものはどうだ?」

「試した事が無いからわからないけど、多分収納できると思う……

 だからといって、同意があったとしても人を物として収納するような、

 非常識な事はやりたくはないわね……」

「皆の負担が少しでも軽くなればと思ったんだがなぁ」

 確かに大人数での移動となると負担もそれなりになるだろう……

 そう考えると、まじめに検討するか?

 いやいや…… アイテムリストに「村人×1」とか見たくないぞ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ