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起きたらそこは知らない部屋でした

 目が覚めて一番に目に入ったのは見知らぬ天井だった。

 起き上がろうとする体を襲ったのはものすごい倦怠感に加えて、

 服や布団がしっとりと湿っているような気がしてきた。

 寝ぼけた頭が精いっぱいの状況判断をしていると、

 突然部屋のドアが豪快に開け放たれた

「かなた! 大丈夫!」

 勢いよく入ってきたのは赤髪の女の子だ

「ちょっと! 病人の部屋に入り方じゃないよね?」

 もう一人は青髪の女の子だった

 あれ? こんな知り合い居たっけ?

「ちょっとサン! かなたは病み上がりなんだから、

 もっと静かにしないと!」

「ユエもそこそこうるさいぞう?」

 赤い子はサン、青い子はユエというみたいだ、

 二人はどうやら双子で自分とは幼馴染のようだ。

 こんな双子のかわいい子の幼馴染なんて居ないはずなんだけど、

 記憶では確かに二人とは幼馴染とある。

 ……ん? なんでこんな記憶があるんだ?

 それに確か…… かなたって呼ばれた気がした……

「とりあえず、体拭くから脱がしちゃうね」

 サンが衣服を脱がしてきて、ユエがタオルと水桶を用意してくる

「!」

 突然、あり得ない感触が伝わってきた

「かなたって、相変わらず大きいなぁ……」

「サン…… 拭く前にくっついたらダメじゃない……

 邪魔だしとっとと離れてくれない?」

「ユエだって、これうらやましいんでしょ?」

 朝起きてから、倦怠感とは別に違和感を覚えていたんだけど、

 その違和感の招待が今わかった……

(女の子になってる……)

 OK…… いったん落ち着こう……

 40過ぎのオッサンはここでみだりに取り乱したりはしないものだ。

 記憶をたどってみると、今はかなたという10歳の女の子のようだ。

 両親の記憶はない…… 物心ついた時から、

 サンとユエのご両親に引き取られて、一緒に暮らしている。

 皆には本当の家族のように接してもらっていて、

 何不自由なく生活できている。

 そこは不安はないようだけど、世界を旅してまわりたいという憧れを持っていた。

 その憧れは本当の両親の血筋なのだろうと推測するが、

 養父母はそのことに関しては一切教えてはくれていない。

 今まで一人称は”俺”だったけど、これからは”私”でいかなくてはなぁ……

 もともとこの子が私呼びだったし、抵抗はないから問題はなしだな。

「10でこれって反則じゃない? まるで桃だよね?」

「殴るよ?」

「もう殴ってます……」

 無意識のうちにサンの脳天に拳骨を叩き込んでいた。

 私が記憶している平和な一コマとして、

 これが日常的なやり取りになっていた。

「ほらほら、かなたも病み上がりなんだから、もう少し寝てなくちゃ。

 あと、お姉ちゃんはいい加減にしなさい。」

 赤い方が姉で、青い方が妹か…… 生前に愛用したあれに似てて覚えやすいなぁ。

 ユエに体を拭いてもらいながら現状を整理してみる。

 家で寝ていたはずのオッサンが、なぜ、起きたら少女になっていたか……

 都合がいいことに、オッサンだった時の過去と、

 かなたでの過去の二つの記憶がある。

”俺”は何気ない日常を送り、普通にベッドで眠った。

”私”は風邪で熱を出してしまい、昨日はベッドで休んでいた。

”私”としての最後の記憶は、熱くて苦しいだ。

 高熱が原因で、消えたはずの”俺”の記憶がよみがえってしまい、

”私”の人格が消えてしまったということなのか?

「かなた! 近いうちにスキルの鑑定に町に行くんだけど、

 準備とか大丈夫?」

 はい、異世界確定…… スキル鑑定なんてあるのか……

「はいはい…… お姉ちゃんが居たら、できるものもできなくなるでしょ?」

 扉からぬっと出てきたサンをユエが押し込めた。

「うーん…… 大丈夫だと思うけど……

 そのスキルって何?」

 まぁ、なんとなくは予想がつくけど、ここはあえて忘れたふりをしておこう。

 正確な情報を集めて、現状を把握しておかないといけない。

”私”には悪いが、”俺”が”私”として第二の人生を楽しませてもらおうかな。

「私もお父さんから聞いただけだから、詳しくはわからないんだけど。

 スキルというのは一種の技能みたいなもので、

 10歳を迎えた少年少女がスキル鑑定で調べるのは、

 どんな生まれ持ったスキルを持っているかを調べるんだって。」

「生まれ持ったスキルって……」

「狩人のお父さんが持ってたのは”集中力向上”と”命中上昇”と”弓攻撃力上昇”の

 三つだったって言ってた」

「なるほど…… パッシブスキルってわけね。」

「パッシブ? よくわからないけどそんな感じなのかな?

 あとは、修行とか練習で獲得できるんだって。」

「つまりは…… どんな個性を持ってるかを調べるったことかな。」

「でも、そんなに調べる人はいないって聞くよ?」

「うちみたいに貧乏じゃ、調べるための費用が払えないからね……

 大体、一緒に暮らしてれば、大方の予想はつくし。

 お姉ちゃんは、”頑丈”、”怪力”、”棒術”ってところじゃない?」

「サン…… 腕ほっそいのに力あるもんね。

 イノシシも棒を持って一人で狩っちゃうし。」

「私はケガをしてもルナの治療技術があるから無理ができるんだよ。

 その点は妹あってのことだよね。ありがたいことで。」

「ルナは僧侶向きなのかな?」

「で? なんで、そんなうちが高いスキル鑑定をやることに?」

「ほら、この村の村長で同い年の双子の兄弟がいるじゃん?」

「ああー 何かにつけて、よくつっかかってくるあの兄弟?」

「あの二人、かなたに気があるみたいよ?」

「かなた、この村でトップを争うくらいにかわいいよね。」

「胸、おおきいし……」

 好きな女子をいじめたくなるという、思春期男子特有のあれかぁ……

 それに、話を聞く限りではただの女の子ではなくて美少女か……

 うん、悪くはないな。

 大体、異世界転生って顔が整ってる子に転生するよね?

「気を引きたいから、お前らの分も調べてやるよってところかね?

 あと、二人も結構かわいいから自信もっていいよ?」

 お母さんが村一の美女といわれるだけのことはあって、

 その二人の血を受け継いだ目の前の双子も母親似ですごくかわいい。

「それでよく、村長が私たちの分まで負担する気になったね?」

「ああそれな…… どうやら、村長もお父さんと張り合ってたらしく、

 お母さんがお父さんにとられたことが悔しいんだろうね……

 俺が出すんだからありがたく思えってどやってたって、

 お父さんがあきれてたよ。」

 コンコンコンと開け放たれていたドアをノックする声が聞こえてきた。

「お楽しみのところ悪いが、サン、今日も狩りを手伝ってくれ。

 ルナはお母さんの手伝いをしてくれ。」

「やば! もうこんな時間か!」

「それじゃぁね、かなた。」

 二人は慌てて部屋を出て行った。

「かなたは病み上がりだから、今日のところは休んでおけ。

 それじゃぁ、俺はサンを連れて出かけるからな。」

「はーい、お父さん」

 お父さんが部屋を後にすると、部屋は一気に静かになった。

 女三人寄らば姦しいとは言うけど、娘ばっかりで、肩身が狭いだろうなぁ……

 年のころは同い年の双子を抱えながら、

 狩りの最中に私を拾って、生活も本当に厳しいはずなのに、

 本当の娘のように育ててくれたことは本当にありがたいことで、

 いつか恩返しができたらいいだろうなぁ。

 それでも”私”は外へのあこがれがぬぐい切れず、

 それは”俺”も同じ気持ちがある。

 家を飛び出すってもの面白そうか?

 いい機会だし、私がどんなスキルを持ってるか知っておいて損はないか。

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