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あの雨に届かなかった僕たちは。  作者: 雀野ヒナ
【紗月 side ④】
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ボウリング

 やっと、みーちゃんと飛田くんがくっついた。二人ともこじらせていたから、本当に長かったし、大変だった。

 一度邪魔をしようとしたわたしが、言うことではないのだろうけれど。


 カラカラカラカラ——ガコン。


 中央のピンに吸い込まれるように進んで行ったボールは、そのまま他のピンも薙ぎ倒した。


「涼太、すごい! 連続ストライク!」


 みーちゃんの声が響く。振り返った飛田くんは、満足そうな顔で戻って来る。


「ナイス」


 次の投手の寺坂くんが立ち上がり、片手を上げる。


「まあね」


 そう言いながら、飛田くんは寺坂くんとハイタッチを交わす。その流れで、飛田くんは座っているみーちゃんにも同じようにハイタッチをし、わたしの前でも手を挙げた。

 鼓動が速くなる。


「すごいね、飛田くん!」


 わたしは何でもないようなフリをして、手を挙げる。そのとき、飛田くんの薬指に、きらりと光る指輪が見えた。


——……ガラス?


 そう思っているうちに、一瞬、手が重なる。あまり音のならない、優しいハイタッチだった。


「ありがとう」


 飛田くんは笑う。それから、みーちゃんの隣に腰掛けた。みーちゃんの手にも目をやってみる。飛田くんのと同じように、透き通った綺麗な指輪が見えた。


——いつのまに、お揃いなんて。


 微笑ましいと思うのに、少し胸が苦しくなった。


「ねえ、どうやってるの? コツとかある?」


 みーちゃんが飛田くんに尋ねる。


「真ん中のピンの少し右側を狙うといいよ。それと、力を抜くこと」

「なるほど」


 二人は、仲良さげに会話をする。それはいつものことで、そこにわたしも入っていたはずだった。

 でも今は、うまく声をかけることができない。


——いつも通りでいい。二人なら、きっとそう思ってる。


 分かっている。二人が付き合ったって、四人の関係性は変わらない。そのはずなのに。


——もう、邪魔できない。


 わたしは息を潜めるように、じっとしている。


「おい。いちゃついてないで、俺の投球も見てろよ。絶対スペア取るから」


 一投目を投げ終えた寺坂くんが、ボールを取りに戻りながら、二人に声をかける。


「ちゃんと見てるって」


 飛田くんが笑いながら言うと、寺坂くんは満足げに力こぶをつくる仕草をした。


——すごいな、寺坂くん。


 みーちゃんとの関係をはっきりさせてから、寺坂くんは以前よりよく喋るようになった。みーちゃんとも飛田くんとも、本当に仲のいい友達という感じだ。だからこそ、二人が付き合った今でも、その会話に自然に入っていくことができる。

 だけど、わたしは逆。前までは、みーちゃんと飛田くんを結ぶキューピットのような気持ちでいたからよかった。でも、今は。


 カコンッ。


 一本だけ残っていたピンが、ボールに弾かれる。


「よしっ」


 宣言通りスペアを取った寺坂くんは、ガッツポーズをする。みーちゃんと飛田くんは、大きく拍手をした。


「次、紗月ちゃんだよ」


 みーちゃんが、わたしに微笑む。


「うん。頑張る!」


 わたしは笑顔を作り、ボールを取りに向かう。ちらりと、スコア表を見る。飛田くんは断トツだけれど、寺坂くんもなかなかすごい。みーちゃんは初めてのボウリングだと言っていたが、二ゲーム目にして慣れて来たのかスコアを伸ばしてきていた。


——わたしが、最下位。


 当たり前だ。飛田くんはなんでも卒なくこなす要領のいいタイプで、寺坂くんは球技全般が得意。みーちゃんは真面目で頭がいいから、スポーツでも反省と改善を欠かさず記録を伸ばすことができる。

 でも、わたしには何もない。なんの取柄もないわたしが、三人と張り合えるわけもない。


 重いボールを両手で持ち上げ、三つの穴に指を入れる。


「頑張れ!」


 飛田くんの声が聞こえる。


——頑張ったって、わたしは。


 投げたボールは斜めに転がって行って、ピンに当たる手前で溝へと落ちた。

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