ボウリング
やっと、みーちゃんと飛田くんがくっついた。二人ともこじらせていたから、本当に長かったし、大変だった。
一度邪魔をしようとしたわたしが、言うことではないのだろうけれど。
カラカラカラカラ——ガコン。
中央のピンに吸い込まれるように進んで行ったボールは、そのまま他のピンも薙ぎ倒した。
「涼太、すごい! 連続ストライク!」
みーちゃんの声が響く。振り返った飛田くんは、満足そうな顔で戻って来る。
「ナイス」
次の投手の寺坂くんが立ち上がり、片手を上げる。
「まあね」
そう言いながら、飛田くんは寺坂くんとハイタッチを交わす。その流れで、飛田くんは座っているみーちゃんにも同じようにハイタッチをし、わたしの前でも手を挙げた。
鼓動が速くなる。
「すごいね、飛田くん!」
わたしは何でもないようなフリをして、手を挙げる。そのとき、飛田くんの薬指に、きらりと光る指輪が見えた。
——……ガラス?
そう思っているうちに、一瞬、手が重なる。あまり音のならない、優しいハイタッチだった。
「ありがとう」
飛田くんは笑う。それから、みーちゃんの隣に腰掛けた。みーちゃんの手にも目をやってみる。飛田くんのと同じように、透き通った綺麗な指輪が見えた。
——いつのまに、お揃いなんて。
微笑ましいと思うのに、少し胸が苦しくなった。
「ねえ、どうやってるの? コツとかある?」
みーちゃんが飛田くんに尋ねる。
「真ん中のピンの少し右側を狙うといいよ。それと、力を抜くこと」
「なるほど」
二人は、仲良さげに会話をする。それはいつものことで、そこにわたしも入っていたはずだった。
でも今は、うまく声をかけることができない。
——いつも通りでいい。二人なら、きっとそう思ってる。
分かっている。二人が付き合ったって、四人の関係性は変わらない。そのはずなのに。
——もう、邪魔できない。
わたしは息を潜めるように、じっとしている。
「おい。いちゃついてないで、俺の投球も見てろよ。絶対スペア取るから」
一投目を投げ終えた寺坂くんが、ボールを取りに戻りながら、二人に声をかける。
「ちゃんと見てるって」
飛田くんが笑いながら言うと、寺坂くんは満足げに力こぶをつくる仕草をした。
——すごいな、寺坂くん。
みーちゃんとの関係をはっきりさせてから、寺坂くんは以前よりよく喋るようになった。みーちゃんとも飛田くんとも、本当に仲のいい友達という感じだ。だからこそ、二人が付き合った今でも、その会話に自然に入っていくことができる。
だけど、わたしは逆。前までは、みーちゃんと飛田くんを結ぶキューピットのような気持ちでいたからよかった。でも、今は。
カコンッ。
一本だけ残っていたピンが、ボールに弾かれる。
「よしっ」
宣言通りスペアを取った寺坂くんは、ガッツポーズをする。みーちゃんと飛田くんは、大きく拍手をした。
「次、紗月ちゃんだよ」
みーちゃんが、わたしに微笑む。
「うん。頑張る!」
わたしは笑顔を作り、ボールを取りに向かう。ちらりと、スコア表を見る。飛田くんは断トツだけれど、寺坂くんもなかなかすごい。みーちゃんは初めてのボウリングだと言っていたが、二ゲーム目にして慣れて来たのかスコアを伸ばしてきていた。
——わたしが、最下位。
当たり前だ。飛田くんはなんでも卒なくこなす要領のいいタイプで、寺坂くんは球技全般が得意。みーちゃんは真面目で頭がいいから、スポーツでも反省と改善を欠かさず記録を伸ばすことができる。
でも、わたしには何もない。なんの取柄もないわたしが、三人と張り合えるわけもない。
重いボールを両手で持ち上げ、三つの穴に指を入れる。
「頑張れ!」
飛田くんの声が聞こえる。
——頑張ったって、わたしは。
投げたボールは斜めに転がって行って、ピンに当たる手前で溝へと落ちた。




