第5話 勇者ラヴィ命がけの修行開始
勇者ラヴィは、現在進行形でレア鉱山の採掘事業を始めていたのだが、最近運動不足がたかり、体重が増加してしまったようだ。
筋肉が落ちて、たぷついたお腹、たぷついた太もも、たぷついた腕肉。
少しぽっちゃり系になってしまった。
「これは、勇者ラヴィ様、死活問題ですわね、これ以上太ったら、太った勇者様と呼んでもいいですか?」
「いやーそれは勘弁してくれよ」
「それなら、美味しく頂いてあげませんわね」
「マミンさん? それ色々危ない発言だから」
「そうですかねぇ、それが妥当ではないですかね」
「女神フレイヤさん、何ナイフとフォークを用意してるのかな?」
「いえ、これから馬鈴薯を食べようかと」
「せめて王城の調理室で調理してからにしてー」
「いえ、これでも馬鈴薯はやはり、自然のままが」
「それもはや食べられないから自然のままだと」
「女神フレイヤを舐めないでください」
勇者ラヴィは今日も体重を減量する為に。せっせとレア鉱山でツルハシを握って振り落とす。
その行程を何度も何度も繰り返していった気がする。
一行に体重は減らない。
「何度も何度も繰り返すと言いますが、あなたが採掘した時間は4時間44分44秒ですわ」
「とても不潔な数字だろうがあああ」
「狙ってました?」
「狙ってねーから」
勇者ラヴィ、今日もツルハシを握り採掘を繰り返す。
「今日もと言いますが、今日からでしょ」
「女神フレイヤさん? あなたは姑か何かですか……」
「残念ながらそういう立場の女神ではございません、主に忠実な女神でございますわ」
「それって、全然違うと思うんだけど!」
寝ないで勇者ラヴィは働き続ける。
「それは昼寝の事でしょ」
「昼寝はれっきとした睡眠時間だぞ、失礼な」
勇者ラヴィは取り合えず、威張り散らしてみた。
「今日の仕事はここまで! きっと体重が減ったはず!」
「0.5キログラム減ったようです」
「見ないでええええええ」
女神フレイヤの鑑定スキルで現実は唐突に悲しいものであった。
「それにしても、頑張りましたね、鉱石を金貨に変えてくれるようなURを当ててくださいよ」
「それが出来れば苦労しねーんだよ」
「えーと、ゴーレム作るんでしょ」
「タンクにぶちこんでくるけどねー」
ゴーレム製造機。
巨大なタンクの先には四角い箱が設置されている。
わくわくとレア鉱石を投入しまくると。
自動で製造機が動き出す。
煙を出して、音を出して、まるで怒ってるみたいだ。
「いえ、怒ってないですよ」
「おめーの事じゃないいいい」
ゴーレムが1体、2体、3体、4体、5体、6体、7体、8体、9体、10体出てくるではないか。
「これいつになったら止まるの?」
「さぁ?」
女神フレイヤは両手を分からないというポーズで示してくれたんだけど。
ゴーレムが11体、ゴーレムが21体、ゴーレムが101体。
「ちょ、えええええええええええ」
ゴーレムが1000体でようやく止まった。
「どうやら、あのレア鉱石の中に超級の鉱石があったようですわね」
「それ使わないほうが良かった?」
「もちろん、あなた様はとてつもないもったいない事をしました」
「そうかーそうだよねーうわああああああああ」
勇者ラヴィ絶叫。
かくして、勇者ラヴィは世界最古と呼ばれる超級鉱石を無駄遣いしてしまったのであった。
「ちゃんちゃん」
「物語おわらねええ、このゴーレム達どうすんだよ」
「知りませんわ」
「そもそも、この広間もはや世界そのものだから、国民=ゴーレムで良いんじゃ」
「ちょっと悲しい国民ですね」
「それ、棘あるからやめなさい」
「さてと、馬鈴薯畑はゴーレム1体入れば良いし、魚釣りもゴーレム5体いればいいし。雑用もゴーレム4体でいいし、990体余りましたわね、働かない勇者候補が出来ました」
「それって嬉しい事だね」
「嬉しくないと思いますわ、何この働かない王国知りませんわ」
「悲しすぎるだろおおおおお」
勇者ラヴィまたもや絶叫。
この日、ラヴィは夜遅くまで筋肉痛に悩まされる事になり、ゆっくりと眠る事にしたのであった。