第16話 雷将軍バッファマン踊っちゃう
「さぁてと、わしのダンス披露しちゃうわい」
バッファマンは槍を構えて、ステップを刻む。
眼の前から津波のようにオオカミ人間みたいなモンスターが流れてくる。
人々は悲鳴をあげているが。バッファマンは愉快そうに、次から次へとモンスターの頭だけを狙って槍を翻す。
踊っていると形容して良いだろう。
1体のオオカミ人間型モンスターの頭が粉砕されると、次にまた別のモンスターの頭が粉砕される。
ステップだ。
バッファマンの動きは見える範囲だ。
だが槍の穂先が見えない。
体の動きと腕の動きがマッチしていない。
腕だけ高速で動いている。
モンスターの津波は収まる事がない。
バッファマンの踊りも終わる事がない。
老人はひたすらモンスターを手作業のように片づけ続けていた。
残り1体となった。
だがそれは別の雷の槍で粉砕されてしまった。
「よぉお、爺、生きていたか」
「ザディースよなぜ来た? わしらはお前等と住むつもりはないと言ったはずだが?」
「俺が用あるのはそこの女2人とそこの男だけだ。その男は配下にしてやろうと思っててな」
「そうか」
「うぉい、どうだ。腹決まったか」
「いえ、まだ決まってないのでもう少し考えさせてください」
勇者ラヴィは普通に答えると。
「そうかい、決まったら雷城にこいよ、力づくで奪ったって女は物にならねぇ、こういうのはギブアンドテイクだ。お前は面白そうだからな配下にしてえええ」
「そうですか、もう少しこの世界を旅してまわりますよ」
「そうしてくれよ、じゃあな爺と名前は」
「ラヴィです」
「ラヴィ、それに女2人、生きろよ」
そう言って、雷撃王ザディースは消え去った。
「では、バッファマンさん、この世界でのレベリング方法教えてください」
「良いじゃロウお主、ザディースを倒すつもりだな」
「面白そうじゃないですか、それに、フレイヤとガランドは渡すつもりないですから」
「ラヴィ様、ここで私の目がハートマークになりましたわ」
「フレイヤそういうのは言葉に出すなわざとらしいでしょうが」
「いえ、隣の方はハートマーク全開ですけどね」
「だから、ガランド抱き着くんじゃねえええ、死ぬぞぞおおおお」
全身鎧のガランドに抱き着かれたら。確実に前進の骨が粉砕される事を勇者ラヴィは直感していたのであった。
「の前に、皆を俺のダンジョン王国に招待したい」
「ほほう、異世界に行けと?」
「その通りだ。ここは安全じゃないし食料にも困るだろう」
「ふむ、良いじゃロウ、皆に報告してこよう」
「ただ。ゲートがある場所が、この大地の下のダンジョンの地上なんだが、ナナシ異界渡りでなんとかなるか」
「ゲートまで私が異界渡りで通しましょう」
「そうか、助かる」
この日、勇者ラヴィとナナシの力で人々は久しぶりの大地の亀裂の下のダンジョンの上にやってきていた。
彼等は日差しを受けて、眩しそうにしている。
謎のゲートは人々から見えないようになってるらしく。
勇者ラヴィが触れると見えるようになった。
順番に人々がゲートを通して、最下層ダンジョンのダンジョン王国へと渡る事となった。
勇者ラヴィも1度帰還すると。
そこには猫耳の軍王ゼーファが立っていた。
「ゼーファ、皆に衣食住を提供してやってくれ」
「良いけどにゃ、でも住む場所なんてないにゃ? あるとしたらーそうだなぁ、ギルド系列くらいですかにゃー」
「ギルドの建物でも何でもいいから住まわせてやってくれ、食料も提供してやってくれよ、仕事とかは何かガチャで当てられるかもしれない、今は俺達はまた雷撃世界に戻ってレベリングしてくっからよ」
「主様、頑張りたまえ!」
軍王ゼーファが1000人の雷撃世界の住民達を案内してくる。
彼等は見た事もない建物やら世界に勘当しているようだ。
それはこちらの地下ダンジョン、一応人口太陽がある。
そのおかげで地上と何ら変わりが無い。まぁ天上はあるけどね。
拡張機能でダイブは広くなったけど。
「ここに青空なんてあれば最高なんだろうけどな、じゃ、戻るか」
★ 100人の村人【ニーナ】
100人の村人のニーナは雷撃世界の調査に赴いていた。
それは、逃げ延びたとされるある人物1名の抹殺依頼だったのだが。
問題が発生する。ターゲットを確認したのはいいが、勇者ラヴィがまさかにやってきてしまった。
しかも彼等は1000人の避難民を自らのハゲスダンジョン、しかもよりにもよってのハゲスダンジョンの最下層にと皆を移動させた。
彼は自分がやっている恐ろしい事に気付いていない。
ハゲスダンジョンとは世界の終わりを担うダンジョン。
長老様は彼をそこに飛ばしたはいいが。どうせ死ぬだろうと鷹をくくっていたのだろう。
まさか、あそこまで強くなるとは。
「まさか、レベル9999になってるなんて、これじゃあ、うち1人で殺すのは無理かーしかも、帰還系の魔法ないからここから脱出出来ないし。カイルに連絡しようにもここからだと無理だし、絶対絶命ー」
カイルとは転送系スキルの持ち主。
雷撃世界にて1週間に1度カイルがやってきて達成具合を聞かれる。
抹殺に成功したら元の村に戻る約束だったのだ。
「ダンジョンから出るにはゲートを通って地上を目指せばいいのか、うちのレベルは9999、このダンジョンが世界の終わりなんて呼ばれてるけど、レベル1000くらいなら」
「そこのもの、ゲートを通るなよ」
それは全身が蒼い炎に包まれている女性だった。
ニーナはスキルを複数習得している。
元々地球に住んでいた女子高生で、こちらに来てから100年ほど経過した。
スキルを習得しまくった結果。さらにレベルをカンストさせた。
「うそでしょ、あなたレベル12000て」
「ほう、お主なかなかやるな、燃やすぞ」
「すみません、私これでも」
「お主擬態しておるな、雷のオーラ纏ってるが、それは見せかけだ」
「へぇ」
「だが安心しろ、うちはとても寛大な魔神だ」
「そうですか、ならゲートを通してください、一度戦ってみたく」
「止めはせぬが、そこにはレベル10000以上のモンスターがはびこっておる。2階層からは海の領域で、レベル99999万以上だ」
「はい?」
「だから言っておろう、勇者ラヴィ様がいない間。うちたちはモンスターを殺しすぎてしまい、ダンジョンそのものがレベルアップしてしまってな」
「うそでしょ」
「だから、ゲートは通るなよ、うちたちでもそろそろしんどくなってきた」
「うそだああああああああああああああ」
ニーナは絶叫しながら走った。
彼女はようやく気付いたのだ。
「と、とじこめられた」
まさかのハゲスダンジョンにて勇者ラヴィを追放した場所にて、閉じ込められるはめになったのだから。
ある意味勇者ラヴィの報復だろうと感じていると。
「3つのゲートがあって、3つとも異世界に繋がるとして、これはまた雷撃世界に渡れば」
「おい、そこのもの、ゲートを勝手に通ろうとするな、燃やすぞ」
「すみません」
ダメだった。レベル12000以上の化物が護っているのだから。
殺されかねない。
というか、なんで勇者ラヴィより強い化物が配下になっているのだと。
どうやって、先程の猫耳族だってレベル12000だったし。
「どうだ? 魔人の王国に着て見ぬか、最近1人と言うか一人しかいないから暇でな、歓迎するぞ」
「は、はいいいいい」
ニーナは案内されるがまま、魔人の王国へと旅立った。




