第14話 レベルカンストを越えていこうぜ
ダンジョン最下層に帰還魔法で帰還した勇者ラヴィは2人の女性に迎えられた。
「とても満足そうですわね」
「主様、寂しかったですぞおおおお」
冷たい反応をする女神フレイヤに対して、熱い抱擁を交わそうとする剣帝ガランド。
2人に軽く挨拶しつつ。
「いやぁー満足満足、村人100人が戻ってくる前に逃げてきたよ、さすがの俺でも100人相手は無理だ」
「そうですか、こちらは準備が整いました。ゲートの1つに渡るのでしょう?」
「そそ」
「私とガランドがいれば十分かと、他のメンバーは勝手に生活をしています」
「そかそか」
「ただ」
「ただ?」
「キースがモンスターに魔法の種を植え付けまくっています。エレメンタルな作物が城の倉庫を圧迫しておりまして、ララドも鉱山と言う鉱山から鉱石を採掘しまくっています。それも城の倉庫を圧迫しております」
「はは」
「そのうち、倉庫から溢れて、城が大変な事になるかと」
「そうか、それはなんとかしたいな、アイテムボックスがあればなー」
「それについて情報は?」
「盗賊王ギャバンだな、あいつ王になったらしい、取り合えずそこに国王ガオスの息子と娘がいて。一度ギャバンと話を通した方がいいかもな」
「どちらを先にしますか? ゲートを渡ってレベリングか、それともギャバンとやらを探すか」
「そうだなー2つを同時にやる」
「え」
「俺にはスキル:分身魔法があるからな、どうやらこれは殺されない限り消滅しなくて、実態もあるらしい、ギャバンの方を分身に行かせる。そうだな、デス騎士と魔神ファイガを連れていく」
「そうしてください、私はちょっと疲れました準備で」
「はは、フレイヤありがとうな」
「いえ、ようやくラヴィ様が動かれるようになって私は嬉しいですよ」
女神フレイヤの笑顔はとても不思議だなーとか思ったりしていた。
「では参られようか」
勇者ラヴィは分身魔法を発動させる。
2人になった勇者ラヴィの記憶は共有されている。
さらには力もレベルも共有なので経験値が2倍となっている。
体を動かす意識みたいなものだけが分離されており、中間地点に1つの記憶があるという不思議な感覚だった。
★
ゲート。
謎のゲートと呼ばれていたが、そのゲートを通ると。
頭の中に情報が流れてくる。
【雷撃世界】
それがこの異世界の名前。
果てしなく続く荒野。
「物凄い雷の雲だなおい」
「あそこに巨大な黄金の城がありますが、雷で守られていますね」
「逆に場所以外はずっと荒野、だけど、空を船が飛んでいます主様」
「どうやら空にある雷から何かを吸収しているみたいだな」
「フレイヤ見てきてくれ」
「いやですよ、雷当たって落ちますから」
「そもそも雷がゴロゴロなってるのに雨が降らないのが謎だ」
そんな雑談を3人がしながら。
雷に守られている城へ向かっていたのだが。
荒野に裂け目が走った。
「なんか嫌な予感がするんだが」
「不潔な事言わないでくださいよ」
「あのー地面が割れます」
地面が割れるとそこから現れたのは巨大すぎるドラゴンだった。
ノコギリのように生えそろった顎。
砂色の鱗が泥で汚れている。
大きさは最下層ダンジョンにある城より巨大。
「お、ついにレベリングか!」
だが唐突に空から雷が落下してきた。
それは巨大な槍をもっていたいかめしい男性であり。
そいつはヌンとか言いながら、一撃でドラゴンを屠っていた。
その音に影響されたのか、さらに亀裂が生まれてドラゴンが10体程現れる。
「そこのバカ者ども、早く逃げろ」
「だぁれが逃げるかよ」
勇者ラヴィは魔剣を握りしめて、走り出す。
一瞬の間で、1体のドラゴンの頭がズシンと音を発して落下する。
次に女神フレイヤが右手と左手で魔法を発動させ。ドラゴンが灰と化す。
剣帝ガランドがグレイグソードを構える。
グレイグソードは大剣程ではないが巨大な剣。
「いっきますよー」
全身鎧なのに、可愛らしい声を発しながらのっそりと動く。
ドラゴンの頭上までのっそりとジャンプすると。
のっそりと落下しながら、グレイグソードを落とした瞬間。
クリティカルヒットみたいな音を発しながら、ドラゴンの頭が爆散してしまう。
全身を雷で纏った謎の男性があっという間に次から次へとドラゴンを巨大な槍で葬っていく。
全てのドラゴンを倒し終わると。
頭上から無数の船が降りてきて。
わらわらと兵士達がやってくる。
全員雷を纏っている。
「おお、いいね、そこの女2人気に入った。俺様は強い女性を妻にしたい、今すぐ妻だ」
「はい?」
「それは告白ですか?」
女神フレイヤと剣帝ガランドが謎の声を発する。
「それはダメだろ、俺のハーレム候補だぞ」
「ハーレム? 知らんがお前は俺の奴隷となってもらおう、強い配下が欲しかった」
「なにそれ、王様なのか」
「俺様は雷撃王ザディース。雷撃世界の王、この世界を統べる王だ。強い子供がいる。今すぐ子供を作るぞ」
「何気に早すぎんだろ、何この世界は野蛮な世界なの?」
「良いか強い男に強い女が付き従うのがこの世界のルールだ」
「ならやるか?」
勇者ラヴィがそう言うと。
「ふ、良いだろう」
「主様、彼のレベルは50000です」
女神フレイヤがとんでもない事を呟いて。
「よし、2人共逃げるぞ」
頭の回転スピードは意外と早かった。
「俺から逃げられるとでも? まぁ良い、女ども、雷城で待っているぞ、どうせあそこに来るしかないんだからな、がっはは」
3人が血相を抱えて逃げていると、その足音を聞いたのか亀裂が亀裂を生んで。
地面が割れて割れて。
あらゆるモンスターに追いかけられる現状だった。
「そこの人達、こっちだ」
全身を包帯で包み込んだ、女性が声をかけてくれた。
彼女は空間に穴を空けると、3人を入れてくれた。
「ふぅ、助かったぜ」
「君達もバカだな、この荒野の下はモンスターのダンジョンなんだよ」
「どういう原理だ? お前誰だ?」
「あたしの名前は忘れてしまったのさ、気付いたら全身が傷だらけで包帯で隠してる」
「記憶喪失という奴ではないでしょうか」
「たぶんそれだ鎧の女性」
「それがしはガランドですわ」
「じゃあナナシとでも呼んでくれ」
「私はフレイヤでそこの主が勇者ラヴィ様です」
「うーん、ラヴィか、どこかで聞いたことがあるんだよなぁ、思い出せない」
「俺もお前の声どこかで聞いたことあるんだよなぁ」
「意外と知り合いかもな」
「そうかもしれんけど、傷だらけの顔見てもしゃーないし、見ないどくよ」
「そうしてくれ、あたしの力は異界渡り。異世界を渡る事が出来るスキルなんだ。このスキルが元々あったのか、元々なかったのかは分からないがな」
「そうか、この世界について教えてくれ」
「もちろんだ」
ナナシと呼ばれた女性と出会い。
勇者ラヴィはこの雷撃世界について知ることなる。
それは果てしない地下ダンジョンで出来上がった世界だったのだから。




