恩
魔物の王で魔王。
魔物と人間は仲良し。を期待して念のため確認してみたが、やはり。魔物は人間を襲うし、人間も魔物を狩る、そういうありふれた関係のようだった。
つまり、帰還する方法はあるようでない。という結論に至る。少なくとも今日明日中には間違いなく帰れない、という事だった。
「無断欠勤…会議…商談…締め切り…音信不通…」
「なあ、かーちゃん。聖女様落ち込んでるぞ?効果がないって言われてる雨乞いの踊りだったんだ。雨降らなくても聖女様のせいじゃねえのに…」
「ほんとさねぇ。伝承の大聖女様はほんとに神さまのような偉業ばかり伝えられるけど、きっと失敗したことのひとつやふたつあるはずなのよ。ウィスタル神だって、あったでしょ、ほら。赤いバラを咲かせようとして間違って白いバラを咲かせて、あわてて赤の染料をぶっかけたって話。」
「いや、それどこの国のアリスですか!?」
思わず突っ込んだ私に、聖女様元気出せよ!と励ましてくれる村人達に、図らずしもジーンと胸が熱くなる。
村は存亡の危機なのにも関わらず、自分は帰ることにしか考えていなかった。
そういえば、貧しいはずなのに昨日は、歓迎の宴といわれ用意された料理を食べた。ふつうに給食一食分だった。
恥ずかしながら、宴といわれたら溢れんばかりの料理、そうバイキングみたいな料理がイメージとして浮かんだため、給食が出てきたときに、貧しいって言ってたもんな、と流してしまった自分が恥ずかしい。
きっと、あの一食も村人達がかき集め絞り出した食料に違いない。でなければ、皆、こんなに骨の場所がわかるほど痩せてない。
恥ずかしさと申し訳なさで涙がにじむ。
それを見た村人達がまた慌てて慰めてくれようとしたり、笑いを取ろうと昔のドジ話を披露しだしたり、それにおばちゃんたちがツッコミを入れたり。
人って、衣食住が保証されて初めて人に優しくできるものだと思っていた。
食べるものがなければ奪うし、自分が生きることに精一杯で、他者に優しさをかけてあげられるのは余裕ができてからだと。なんて優しい人たちなんだろう。
でも、一方で思う私もいる。
それはきっと、"聖女"が来たからもう大丈夫だ、という希望が、余裕があるからではないのか。
"わたし"は一般人なのだから、皆が期待するような草木を蘇らせたり、雨降らせたりとか、そういうのはできない。
このまま何日も何も出来ないと、きっと皆絶望するんだろう。そして、羅生門みたいな人同士の奪い合いが始まるのかもしれない。
皆が優しくしてくれるのは今だけ。何もできない、つまりはただの穀潰しとの烙印を押されてしまったら、私、きっと元の世界にもどこにも帰れない。
村人のこの暖かさは一時的なもの。こんな事を思う私の心は汚いのだろうか。
一食一宿の恩がある。それも貴重な。恩を受けたら倍で返せ。(ちなみに怨みには倍で折り紙つけて返せ。)
ひとまず、水源を探しに行かなくては。
奇跡の力なんてない。
だって私、一般人だから。