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9 微妙に罪悪感を持ったまま

微妙に罪悪感を持ったまま、それでも時間は進んでいく。

ベリルのことは気になるけれど、彼にばかり関わっているわけにもいかない。

お仕事、始まるからね。


あ、王城での就任式はさくっと終わり、わたしは資料室というところに配属になりました。


資料室って、つまりは閑職よね。よしよし。


申請済み、決裁済みの書類とか、いろんな資料作成のために取り寄せた書籍とか、そういうものを保管してあるだけの部署。

主に資料の整理整頓がお仕事です。で、たまに「外交に関する書類を作成するための、コレとかアレとか色々な資料が欲しいから、探してウチの部署まで届けてね」なんて指示がやって来るのよ。膨大な書類と書籍を探して、それを見つけたら、王城の中、歩いて相手の部署までお届けしますってね。


現代日本なら参考資料なんてパソコンで検索すれば一発で出るようなもんだけど、この世界にはパソコンなんてないしね。人力で探すしかないのです。


そんなこんなで、今日も今日とて依頼を受けた資料を片手に、王城を歩き回る。




で……見てしまいました。マラヤちゃんと公爵家令息カルセドニー・フォン・ヴェースヴィードの逢瀬をっ!


ベリルのことがあったから「ベリル・スーフォンの次は、公爵家令息カルセドニー・フォン・ヴェースヴィード!彼とヒロインの間にはどんな展開が待っているでしょうかっ!請うご期待!」なんて野次馬の実況中継みたいなコト、もう思えない。


でも……やっぱり気になるから、こっそりと柱の影から二人の様子を見てしまう。だってねえ、マラヤちゃんが王太子と結婚しても、愛し続けられるのかってのが気になって、わたし、マラヤちゃんが逆ハールートに向かえるように、個別ルートのフラグを折りまくって来たんだもの。


今更、罪悪感おぼえそうだから、見ないし聞かないなんて殊勝に考えたところで意味はない。


わたしが折ったフラグによる結果がここにあるんだから、ベリルの時みたいに重たい気持ちになっても……ちゃんとどんな結末になるのかを見て知らないと。それがわたしの責任の取り方……なのかもしれない。


だから、カルセドニー・フォン・ヴェースヴィードがこれからどんな人生を送るのか、きちんと知ってみよう。


そう思った。




とりあえず、二人に見つからないように、かなりの距離を開けた上に魔道でわたしの存在感をものすごおおおおく薄くする。で、柱の陰に隠れる。


これだけ距離を空ければ、普通は話し声なんて聞こえないんだけど、そこはそれ、やっぱり魔道で視力と聴力強化!わたしが本気出せば、五・六百メートルくらい離れても、音は拾える。表情とかも伺える。


二人はどんな話をしているのかな。



「やあマラヤ。すっかり侯爵家のご令嬢だね。ずいぶんと綺麗になった」

「カルセドニー……」


カルセドニー・フォン・ヴェースヴィードは王太子アレクセルの従弟ではあるけれど、外見はそれほど酷似していない。


アレクセルのほうは正統派俺様王子様っていうか、漫画なら背景に薔薇の花でも背負って登場するタイプ。


カルセドニーはなんて言ったらいいのかな。えーと、メガネ枠?

んー……清潔感があって穏やかな、図書委員の副委員長、って感じ。公爵家のご子息だっていうのに実に地味。いやいやよく見ると美形だけど……なんか外見の印象が全体的に地味。


だけど、やっぱり乙女ゲームの攻略対象であるからして、外見地味でもイケボって特性持ちだ。誠実さのにじみ出る、温かくも包み込むようなイケメンボイス。

で、声フェチのお嬢さんたちからそれはもう大人気だった。


「聞いたよ、アレクセルとの結婚式、半年後になったんだってね」

「うん!そうなの。もうねえ、アレクセルが結婚式挙げるの急がせるから、準備たいへんなのー」

「あまり無理して体壊さないようにね。……アレクセルは……早くマラヤを独り占めしたいんだろうね」

「ええええー?独り占め?うーん、それ困っちゃうなあ……」

「困るの?」

「うん!だって逆ハーじゃないと駄目なのよ。そうじゃないとあたし……」

「ぎゃ、ぎゃくはー……?」

「うん、知らない?ヒロインがね、攻略対象たちから愛されるの。で、『逆ハー王妃』はね、

ヒロインが王太子のアレクセルと結婚するところでエンディングなのよ。他の攻略対象は『ヒロインが結婚しても、ずっと貴女だけを守って愛し続ける』って言ってくれるんだ。王太子もね、攻略対象たちだけは特別に、ヒロインを愛することを許そうって言ってくれて、みんなで幸せになるの、そういうエンディングでゲームが終わるのよ」

「マラヤの言っていることはよくわからないのだが……。我がルーベライディン王国は一夫一婦制だ。近隣諸国もおおむねそうだし。普通は愛する人は一人、だよね?」

「だけど、あたしはみんなに愛されないと困るのよ!そうしてエンディングを迎えないとじゃないと、わたし、帰れない……」


う、ううう?ちょっと待ってマラヤちゃん、今なんておっしゃいました?


攻略対象?

『逆ハー王妃』?


それって、もしや……。


柱を背にしたまま、わたしはずるずるとしゃがみこむ。


わ、わたしだけでなく、マラヤちゃん転生者だったの?

ここが乙女ゲームの世界って知ってて、逆ハーエンド目指してたの!?


わ……わたしが、マラヤちゃんに逆ハールート選んでもらえるようにって、個別ルートに向かうフラグ、潰しまくらなくても、マラヤちゃん勝手に自分で逆ハー目指してたってわけ?


えええええええっ!


じゃ、じゃあ……、ベリル・ルートに行かないように、文化祭とか無くしてダンス交流会とか提案しなくても良かったってこと?アレコレ手を尽くさなくても、わたしが何もしなくてもよかったっての!?


でもって、ベリルが「マラヤは恋人」って思い込んでいたのって、ストーカーチックな思い込みじゃなくて、ベリルも攻略対象だから、逆ハー要員としてゲットしてキープしておいたってこと?


ちょっと待ってよ。なら自分はアレクセルとの結婚式の準備に忙しいとか言い訳しないで、ちゃんとベリルのこともフォローしとけよっ!釣った魚にエサやれ!!


というか、わたしがベリルに対して責任感、感じることもなかったんじゃない!?


それにわたしがマラヤちゃんに意地悪とかしていないのに、悪役令嬢にさせられたのって……もしかしてマラヤちゃんのせい?他の高位貴族のご令嬢たちからされていた虐めも、ぜーんぶわたしのせいにされたのは、誤解とかじゃなくて、マラヤちゃんが王太子にそう訴えたとかなのか!?


ちょっと唖然。


いやいやいやいや。

悪役令嬢もヒロインも共に転生者なんて展開、そりゃあネット小説ではふつーにメジャーだけど、わたし、自分の身にそんなことが起こるなんて想定してなかったよ!


あー……。



ありがとうございます!

12月29日21時現在 ブクマして下さった方が546名様!!PV数16484!わー!!

昨日・一昨日と比較して急激な増加数!

たくさんの皆様におよみいただきましたこと、感謝いたします!ありがとう!嬉しいです!

感想欄、閉じてますので、いいねやブクマ、評価の数で一喜一憂しております。


ありがとう。

感謝です☆



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