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5 さてさて。卒業パーティでの婚約破棄から

誤字報告ありがとうございました!

さてさて。卒業パーティでの婚約破棄から早くも三週間。

この間わたしが何をしていたのかと言えば……気楽な王都暮らしを満喫しておりました!


宿は二・三日ごとに転々と変えた。一応ね、大丈夫だとは思うんだけど、追手とかが来たら面倒だから。

髪の色変えたし、見た目が違うから、まあ、見つかっても大丈夫でしょ……とは思ってはいるのだけれど念のため。


で、毎日毎日朝起きて、宿でご飯食べて、それから適当に王都城下町をふらつく。屋台を冷やかして、なるべくハイカロリーそうなケーキとかクレープとか串焼き肉とかを食べまくる。新聞を買って、それを公園で読む。夕方になる前に泊まっている宿に戻るか、もしくは次の宿を探してそこに泊まる……の繰り返し。


完全に王都観光旅行モードです。


遊んでいるのかって?

違わなくはないけど、一番の目的は太陽の日差しを浴びること。そして太ること。


何せねえ……これまで王太子の婚約者で侯爵令嬢だったでしょ?わたしの肌はね、透けるような白さなのよ。美しいわよ?だけど、これじゃあ平民に見えない。


真夏ならすぐにでも日焼け出来るんだろうけど、今は春先。

地道に日光浴びて、少しでも肌の色を濃くしておりますよ。頑張れ紫外線、頑張れメラニン!って念じながらね(笑)


体型もねえ。完璧なナイスバディってあり得ないでしょ平民で。

だから、ちょっと太ると良いと思うんだよね。主にお腹辺りをね。

あ、食べて太るのには限界があるので……下着の腹部辺りにさりげなく綿とか入れて、ふくらみを持たせてはいるのです。ボンキュッボンの体から、胸からお尻までストーンと一直線って感じに変化させてみた。顔だけじゃなくて体型もね、変装、変装っと!


そんなふうに、文官として王城でのお仕事が開始するまでの間、のんびりと過ごしていたわけです。


追手も気をつけてはいたけれど、大丈夫そう。うん、多分、きっと。


……というより、新聞からの情報だけど、王太子殿下に婚約破棄されたセレナレーゼ・フォン・オブシディアンは、オブシディアン侯爵から絶縁されたようですよ。もう娘ではない、帰ってくるな的な感じなのね。


そんでもってマラヤちゃんは平民だと王太子殿下の新たなる婚約者になれないから、どっかの高位貴族の養子にならないといけないんだけど……。なんと、わたしの元お父様、オブシディアン侯爵がマラヤちゃんの養い親として名乗りを上げているの!


「セレナレーゼがマラヤ嬢に対して行った酷い仕打ちを償うために、マラヤ嬢の養い親となり、今後を支えましょう」


なーんて良いこと言っているようだけどあれよね。

セレナレーゼが王太子妃、そして後の王妃になれなくなったものだから、代わりに王太子殿下に愛されている平民・マラヤを引き取って、恩を売ることで権威を得たいってことよね。


ついでに言えば、セレナレーゼのことは放置っていうか、どこぞで野垂れ死ぬがいいってことなのね。深窓の令嬢が、貴族社会からはみ出して生きて行けるなんて思ってはいないんだろうし。探し出してまで殺そうとか、どこかに放逐しようとか迄は考えていないようだけど。……別に親子の情とか感じたこともないからどうでもいいわ。追手が来ないことの方が大事。


……まあこれでわたしもセレナレーゼ・フォン・オブシディアンだったことは忘れて、平民のレイナ・ホリーとして生きていけるわね。やっぱりしばらく警戒は続けるけどさ。


少しばかり、心が痛まないわけではないけれど、いいの。元々親子関係希薄だったしね。


それにわたしが知りたいのは乙女ゲームのその後のヒロインのこと。そのために、文官採用試験に合格したんだから!


あー、そうそう、その文官のお仕事のほうだけど、王城で就任式というものがもう少ししたら行われるのです。それに参加して、その後各部署に配属されてからお仕事スタートとなるので、今は暇。


あ、学園卒業からお仕事就任まで期間があるのは訳がある。このルーベライディン王国が広いからです。


文官採用試験とか、騎士採用テストって王都だけじゃなくて地方都市でも行われる。その地方都市からの合格者が王都にまでやって来るのには準備含めて二~三週間程度はかかるんだって。

だから、わたしみたいに王都での合格者は地方合格者が王都にやって来るまでの間は暇なのよ。あー……貴族の息子と娘とかだったら、上司になるような相手に賄賂送って、花形部署に配属されるようにとか、そういう水面下の工作とかもしているんだけどね。平民に賄賂は無理。元々わたしはそんなことするつもりもないけどね。

閑職上等!

寧ろウエルカム!


で、合格者は合格通知と共に渡された書類に記載されている必要備品を購入したり、文官専用宿舎に入居手続きしたりとか、そんなことしかすることはない。


あ、手続きは結構早めに締め切りが来るけれど、文官専用の宿舎に入ることが出来るのは就任式の三日前からなのよ。部屋は個室。朝と夜は食事が出るとのこと。


だけど就任式まではまだもう少し日数がある。


それまで何をしていようかな……。とりあえず、自分で切った髪がそのままだから、美容院で整えて……それからカフェにでも行きますかっ!食べるぞ美味しいスイーツを!!




……庶民に美容院は無かったですね。というか、王都城下には美容院自体が存在しませんでした!


あー、そりゃそうか。


貴族のお嬢様方は侍女たちに髪を整えてもらっているし、平民の皆さんは髪を切るのにお金なんてかけないわよねえ……。


自分で切るしかないのか?と思いつつ、屋台通りをぶらぶらしていたら……なんと!屋台通りの木の下で、髪を切っているおじさんがいたぁっ!あー、そっかそっか。日本では見ないけど、インドとかネパールとかアジア周辺とかの国々にはよくいるよねえ。道端の髪切り人が!正式名称なんて言うのか知らないけれど、青空床屋さん、とでもいうのかなあ。男性の髭剃りとか、髪切りとか、チャッチャッとしてくれるのをテレビとかで見たことがある!


そのおじさんに「あと五日くらいでお仕事開始なんだ。髪を揃えてくれる?」って聞いたら「銅貨一枚」って返事が返ってきた。安っ!


で、レンガブロックの上に座り、風で揺らぐ木の下で、ゆるりと髪を整えてもらいました!


うんっ!前髪短い!オンザ眉のぱっつん前髪となりました!ははははは。いやいや、ちょっと可愛らしいとは思うのよ!視界良好だしこれはこれでアリ。

後ろの髪もね、肩につくくらいで揃えてもらったんだけど、悪役令嬢の時の縦ロールの名残か、ゆるふわボブな感じになった!

うわー、なんか幼く見えるわーわたし。


これだけでもセレナレーゼ・フォン・オブシディアンとレイナ・ホリーを同一人物って見破れる人、いないんじゃない?


文官として登城するときは、更に眼鏡もかけるし、化粧でそばかすも描こうかと思っているのよね!ひょほほーい!完っ璧に!別人よっ!


髪も軽く、気分も軽くなって、わたしはスキップしながらカフェに向かった。



お読みいただきありがとうございました。続きままた明日!

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