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4 悪役令嬢のハイスペックさを利用して

悪役令嬢のハイスペックさを利用して、ちょーっと冒険者ギルドとかでお金を稼いで、そのお金で王都に一軒の小さなお家を買いました。即金一括支払いならば、身分証なんて無くてもお家買えちゃうのです☆


そこにね、服とか下着とか生活用品とか揃えていって、いつでも暮らせるようにしていたのよ。というかそのお家はわたしの憩いの場&勉強部屋&隠れ家として、既に活用しているけどね。


え?王太子殿下の婚約者だったくせにそんな暇が何処にあるのかって?王妃教育とか王太子妃教育とかどうしたのって?


ふふふ、悪役令嬢のハイスペックさ、舐めてはいけないのですよ。


貴族子弟の通う学園に入学する前に、そーんな后教育など完璧に終了しております!

学園では王太子殿下との交流を主にしたいのでってことを言い訳に、もんのすごい勢いでクリアしましたよお后教育っ!

言い訳だけどね!

実際には学園で王太子殿下とまともな交流なんてしていなかったけどねっ!

だいたいにして王太子殿下もわたしと交流するよりは、ヒロインちゃんとイチャコラしている毎日だし。ゲームの仕様なのか元から嫌われているし。

こちらから歩み寄る努力も放棄!王太子殿下のことなんか早い時点で見切りをつけましたとも。


そう、わたしはわたしで勝手にやらせていただきます。


殿下がヒロインちゃんと仲良くしたいのなら、それでいいよ別に。

わたしだって、逆ハーレムエンド後のヒロインちゃんがどうなるかって、そっちの方にしか興味はないし。


だからまず、わたしは学園に入学して一年目の時に、まず卒業までに受けるべきテストや提出するべき課題を全てクリアしておきました!ふふふ。だから休みたい放題っていうか、まあ、すぐさま卒業も出来たんだけど……、可能な限り授業なんかは参加していましたよ。ヒロインちゃんと攻略対象たちの動向観察のためにね。でも一週間に一・二度は学園を休んで、王都のあるわたしの家に行って自由を満喫……というか、そこでこっそり勉強をしていたの。


何の勉強かって?

よくぞ聞いてくれました!

わたし、王城で働く文官の、採用試験の勉強を、こっそりと作ったこの隠れ家でしていたのでした!!

そしてすでに合格を勝ち取っているのです!


もちろん侯爵令嬢セレナレーゼ・フォン・オブシディアンの名で合格したのではなく、平民であるレイナ・ホリーの名での合格です。


現代日本みたいに、職場に住民票とかマイナンバーカードのコピーを提出とか、しないからいいよね異世界!

身分証なんて無くてもちゃーんと正式採用されましたよ、王城で働く文官として!さすが乙女ゲームの世界。設定ゆるふわ☆


あ、もちろん平民ですから、文官と言っても出世の見込みのない使い走り部署にでも回されることでしょう。


だけど、それこそわたしが望んだお仕事なのよ!


給料がもらえて、ある程度自由に王城を歩き回れればそれだけでいいのよ。王太子の動向やヒロインちゃんのその後とかを知るチャンスがあれば御の字よ!噂に詳しい侍女のオネエサマ方とも仲良くなって、それでいろんなゴシップを聞きまくるんだ!


あ、侍女とか女官にならなかったのは、流石にヒロインちゃん直属の侍女とかになったら、わたしのことがバレるかもしれないからです。 


ふっふっふ。

ああ、楽しみだなあ。


……って、明るい未来を妄想していたら。


「セレナレーゼっ!貴様っ!聞いているのかっ!この悪女め。国外追放にさせられたくなくば、マラヤに謝罪をしろっ!」


と、王太子殿下が怒鳴ってきた。


あ、ヤバい。今わたし、婚約破棄を叫ばれていた所だった。

えーと?今どこまで来たのかな?

ヒロインちゃんに謝罪?

ああ、じゃあ、やってもいない虐めを謝れっていうあのテンプレ的なところですか。あー、はいはい、状況は理解した。国外追放?はいりょーかーい!

わたしはお嬢様モード全開の表情を顔に浮かべた。


「……失礼いたしましたアレクセル様。ああ、婚約破棄とあればお名前をお呼びするのは不敬ですわね。王太子殿下、聞いておりますわ。謝罪?マラヤ嬢に?ほほほ、ご冗談はさておき婚約破棄の件は喜んで承諾させていただきます」


一息に言って、わたしは出口扉へとすたすたと歩く。


「ま、待てっ!マラヤに謝罪を……」


わたしが婚約破棄を嫌がってゴネるとか、王太子にすがり付くとか、そういうことを王太子殿下は考えていたんだろうけどね。わたしとしては、婚約破棄を宣言して貰えば王太子殿下になんかもう用はないのよ。


だから、一切無視。


……まあ、だけど、捨て台詞くらいは残していってやろうかな。ヒロイン・マラヤちゃんに苛めなんて、全くしていないわたしに冤罪掛けて、悪役令嬢に仕立てて、貶めようとしているんだから。

それに元々前世でも、この『逆ハー王妃』のアレクセル殿下、嫌いなキャラ筆頭だったしねー。アオイねーちゃんは「乙女ゲームのヒーローなんだもん。顔が良ければそれで良し!」って言ってたけどね。わたしは嫌だわー、顔だけの無能って。姉とは男の趣味が合わん。


扉の前で、わたしは王太子殿下のほうにくるりと向き直った。


「婚約破棄に国外追放ですわね。承りました。王太子殿下のことはまったくお慕いしておりませんでした。寧ろ嫌いで嫌いで、虫唾が走るほど。ですから婚約破棄も追放も、心より感謝いたします。マラヤさんもありがとう。不良債権を受け取ってくれて。いつまでも皆様と仲良くお幸せに。陰ながら応援させていただきますわ!」


王太子殿下に何かを言われる前に、わたしはさっさと会場を後にする。


カツンカツンとわざと足音を響かせながら廊下を歩く。外へではなく、人気のない一郭へ。


辺りをキョロキョロと見回す。足音に反応を見せる者はいない。


「じゃ、サヨーナラー」


転移魔法を発動する。


うーん、さすが悪役令嬢。この程度の魔道はお手のもの。


一瞬後にはわたしの隠れ家へ到着。


だけど、安心はしていられない。この隠れ家だって、もしかしたらお父様だとか王家の影とかにバレてるかもしれない。まあ、多分大丈夫だとは思うんだけど。此処に来るときにはいつも転移魔法で飛んで来てたしね。でも、明るく楽しい自由な未来のためには、警戒に警戒を重ねることが大事です。


わたしはドレスを手早く脱いで、簡素なワンピースに着替える。靴も踵の高いヒールではなく、ぺったんこの靴に履き替えた。目線の高さがだいぶ違う。

ヒールの高い靴を履けば、多分身長160センチくらいの長身美女に見えていたことでしょう。ぺったんこの靴だと見た目155センチくらいになるかしら。


机の引き出しからハサミを取り出す。自分の長い髪を肩の辺りで躊躇なくバッサリと切る。髪の色も魔道で黒に変える。ハンカチを細長く折って、それで首の後ろ辺りでテキトウに髪を結ぶ。眉墨で、眉毛を太めに描いておく。更に眼鏡をかける。貴重品とかお金とかを入れている小ぶりなショルダーバッグを肩から斜め掛けにして、クローゼットからフードつきのコートを取り出して、それを羽織る。


「戸締りは元々してあるし、しばらくここには来ない。もうやり残しはない、はず」


おっと忘れちゃいけない、トランクだ。着替えとか身の回りのものを入れたトランクを左手で持つ。


「よーし。じゃあ王都の外れまで、転移!」


本日二度目の転移魔法。さすがにちょっと疲れたかな……。今日は早めに休もう。


王都郊外にある宿屋を目指す。


「すみませーん、一泊お願いします!あ、あと食事もお願いっ!」


あらかじめアタリをつけていた、小さめだけど落ち着きのある宿屋に入り、わたしはほっと一息を吐いたのでありました。




およみいただきまして、ありがとうございます。

続きは明日。

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