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32 そもそも、逆ハー達成すれば日本へ帰れるなんて

そもそも、逆ハー達成すれば日本へ帰れるなんていうこと自体、マラヤちゃんの思い込みでしかない……のだと思う。


帰りたいと思い過ぎて、帰れると勝手に思い込んだのかなって、わたし考えていたんだけど。此処に来る前の馬車の中で、ふと気がついたようにアウィン先輩が言ってくれたんだよね。


『逆ハー王妃』のエンディング、スタッフロールとか流れた後の、本当に最後の最後。


綺麗な扉が出てきて。その扉が開かれて、その扉から光が溢れだしてくるっていう、そんなアニメーションが挿入されているんだって。


『1』が人気出れば『2』へ続きますよー的なモノなんだろうけど、それをマラヤちゃんは『異世界への扉』と受け取ったのかもしれないって。アウィン先輩が教えてくれました。


「普通に考えたら逆ハーして日本への扉が開かれるっておかしいでしょう?あの『1』のエンディングの扉が日本への帰還の扉と貴女は思いたかったのかもしれないけれど、それ、根拠なんて何にもない。帰りたいって願う貴女の願望でしかないんでしょう?帰りたい気持ちはわかるわ。だけど、『1』の最後の扉は単純に『2』への布石でしかないと思うの。実際に『2』が発売されたらしいし。それにね、『逆ハー王妃2』はねえ『悪役令嬢の逆ハーレム』らしいんだけど、わたし、逆ハーなんてしないでアウィン様とだけの、個別ルートを選んだの。それでもう結婚の届も出したから『2』もエンディング、ゲームは終わっているのよね」


すらっとさらっと説明終了!


いきなり『逆ハー』だの『日本』だのという言葉を使ったわたしに、アレクセル殿下は意味が分からず混乱しているよう。まあ、殿下はどうでもいいのです。わたしはマラヤちゃんに説明するために、ここに来たのだから。殿下は無視無視。


「日本って……『逆ハー王妃』を知っているのって……、ちょっと待ってよセレナレーゼ、アンタ何者なのよっ!」

「マラヤちゃ……さん、と、同じく日本人転生者ですわ」

「うそ……」


一言呟いたまま、マラヤちゃんは呆然としています。


「嘘じゃあないわ。わたくしが婚約破棄されるのも、国外追放されるのもシナリオ通りだってわかってたの。だから、わたし、別に抵抗もせずに、国外追放を受け入れたでしょ」


まあ、実際は違いますけどね。

本当はわたし、『逆ハーレムエンド』を達成した『乙女ゲーム』の『ヒロイン』は、複数の攻略対象たちに愛されたまま、一生涯幸せな人生を送れるのだろうか……っていうのをマラヤちゃんたちで実施に検証させてもらうために、とっとと平民になりましたし。


まあ、でも、そのあたりを説明すると面倒だから。

分かりやすく端折ることにしました。余計なことに時間を取っても仕方がないのでね。


「うそ……、じゃあ、なに?あたしがしたことは全部『2』の布石でしかなかったっていうこと……?」

「かもしれないわね」

「じゃあ……、じゃあ、あたし、日本に帰ることは……」

「出来ないんじゃない?それともマラヤちゃん、異世界移転とか転生とかの帰還のための大きな魔道とか知っているの?ちなみにわたくし、遠距離転移は出来ても、異世界になんて行くための魔道、なんて知らないわよ。わたくしが魔道を学んだ時、侯爵家の力をもってして、国内のありとあらゆる魔導書、取り寄せて研究したことがあったけれど、異世界に行くための魔道なんて全くなかったしね。そこそこ魔道の発達しているルーベライディン王国の魔法書にもそんな魔法はない。ちなみにゼシーヌ帝国にはありますか?」

「いや?多くの民族を併呑してきたゼシーヌにも、異世界に渡るための方法などありはしないな。ただ……」

「ただ、何ですの?」

「時折、何の運命の悪戯か、他の世界の者がこの我々の住んでいる国へと落ちてくるという記載はわずかながらあった」

「あら、そうなのですか?」


それは初めて聞きましたよアウィン先輩!


「うん……不確定な話だが。僕たちのように日本から神隠しのようにして色々な世界に転移なり転生なりすることは、そう珍しい話ではないような気がする……。なにせ、あちらにはその手のファンタシーが山のようにあるからね。想いというものが積み重なって、その結果道が出来る……というのも、まあありだろう」

「あるかもですが、無いかもですね……」

「まあ、その辺はごく普通の人間にはわからない。神様の気まぐれの通り、って感じかな?」

「うーん、神の気まぐれを待って、日本に帰還を望む……?寿命が尽きるのとどっちが早いのやら」


だから、この国で、生きていく術を見つけるとか、アレクセル王太子と仲良く生きていくとか、牢屋に入ったままの三人を何とか釈放させてそっちと生きていくとかしたら……って続けようとしたのに。


マラヤちゃんががっくりと崩れ落ちた。

床にぼたぼたと、マラヤちゃんの涙が落ちる。


それを見たアレクセル殿下が「マラヤっ!」って名を呼びながら、駆け寄って、肩を抱こうとしたけれど、マラヤちゃんはそれを拒否した。


アレクセル殿下の伸ばした手をパンッと叩く。


「日本に帰れない……。せっかく頑張って好きでもないアンタたちを攻略したのに……。あたしのしたことは、全部全部無駄ってこと……」


床に手をついて、その手をぎゅっと握るマラヤちゃん。その手に次から次へと涙が零れ落ちる。


「帰りたいのに……、こんな世界も、こんな国も、アレクセルもベリルもみんなみんな好きじゃないのに、媚び売って……。逆ハー出来れば扉が開かれて、日本に帰れるかもって思ったから、したくもない結婚式も挙げたのに……、なのに帰れない……」


ゆらりと、マラヤちゃんが顔を上げた。涙にぬれて、絶望って感じの表情を浮かべて。

そうして、マラヤちゃんは笑いだした。


「セレナレーゼを悪役令嬢に仕立て上げて、アレクセルに国外追放させて……。そんなひどいことまでしたのに、帰れない……なんて」




お読みいただきましてありがとうございました。


36話で完結しますので、あと少し、お付き合いいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたしますm(__)m

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