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29 「いいえ、陛下」

「いいえ、陛下。わたくしの元婚約者であるアレクセル王太子殿下のお心を、わたくしが掴むことができずにいた上に、彼には愛する女性ができた……。その咎故、わたくしは国外追放を言い渡され、侯爵家からも除籍となったのですが」


と、まあ、そんなふうに一応言っておく。『逆ハー王妃』のシナリオ通りに悪役令嬢のわたしが国外追放されましたって言っても意味不明だろうから。

そうシナリオなんですよ。ですので当然そこにアウィン先輩の策略はない。

だって、アウィン先輩って『2』の攻略対象で『1』には無関係ですからね!

その疑いはないですよ!『1』のゲームのシナリオ通りでございます!


だけど、陛下のみならず、アウィン先輩のご家族皆様「本当かなー?」というような顔です。ええと?


戸惑っていたら、笑いながらアウィン先輩が説明してくれました。


「僕の家族はですね、僕が策略をもってセレナレーゼを国外追放にさせた上で、親切面してセレナレーゼに近づいて、親密になったのでは……と懸念しているんですよ」

「え、え、え!?それはあり得ません!わたくしが婚約破棄をされ、更に国外追放の身となったのは完全にシナリオ……えっと、わたくしの元婚約者であるアレクセル王太子のせいです。それに……その、わたくしが、アウィン先輩……えっと、アウィン様を好きになったのは、ちゃんと、自分の意志によるものですからっ!」


真っ赤になりながらもう主張すれば、陛下一同皆々様、ほっとされたようです。

そして「こんな愚息だが、選んでくれてありがとう」とまで言ってくださいました。


話が早いのは帝国人の気質によるものなのか、あっという間に結婚は承諾されました。


わたしの身分に関しては、流石に他国の平民のまま王家に嫁ぐことはできないので、ゼシーヌ帝国のアドヴェンタという伯爵家の養女となり、そしてアウィン先輩と結婚する……という段階を踏むとのことなのですが。


……その、養子縁組書類も用意されていたのでした。しかもその書類にわたしの名を記入するだけという状態で。


更に、アドヴェンタ伯爵家の皆様の既に別室にて待機されているというナニこの用意の周到さ。


……後で確認したところ、わたしがゼシーヌ帝国に着く前に既に、全部アウィン先輩が既に手配済みだったそうで……。


アドヴェンタ伯爵家の皆様と即座に顔合わせ、そして「よろしくお願いいたします」とご挨拶。しばらく娘として交流でもするのかなーと思いきや……即座にアウィン先輩との婚姻届けを渡されました!!


養子縁組だっていうのに、わたしが「レイナ・ホリー・アドヴェンタ」だったのはほんの数分だけですよ!良いんですかそれで!


でもさっさと婚姻届けも目の前に出され、それに名を書き込んで……、あっさりとわたしは「レイナ・ホリー・ゼシーヌ」となり、……つまり、第四王子妃となってしまったのです!


あまりの早さに眩暈がしそう……。が、頑張れわたし!


ちょっと呆然と遠くを見ていたら、ゼシーヌの王太子殿下が疲れたように「あの、すまないが、アウィンからは最早逃れられないと思うので……すまないが、末永く弟のことを頼む」と言われてしまいましたよ……。


どうやら退路を断たれたネズミ、という感じに、わたしは思われていたようです。

もしくはアウィン先輩という名の蜘蛛の糸にからめとられた哀れな蝶……とか。


だけど、わたしも自分で望んでアウィン先輩の側におりますのでっ!何度も何度も主張する羽目になりました。



さて怒涛の一日が終わり、とりあえず今日はゼシーヌ王城の、アウィン先輩のお部屋に泊まることになりました。


もう結婚しているから同室でもオッケーということですね!ドキドキしていましたが「初夜は結婚式を終えてから!」とアウィン先輩が改めて言ってくださったので、ちょっとほっと致しました。


でも、一緒の部屋で一緒のベッドで寝るというのはデフォルトなんだそうです……。


夕食を終えて、湯あみもさせてもらって、夜着に着替えて……それでもってベッドの端っこにちょこんと座って……どきどき。


湯上りのアウィン先輩がわたしの横に座り……そして、そっとわたしの手を取ってくれました。

うわあ!

も、なんていうか、このままこのベッドに押し倒されても……っていう感じですが、アウィン先輩はわたしに向かってこう言ったのです。


「さて、レイナ。ようやくこれで、レイナは公式に僕のお嫁さんになりました」

「は、はい……。不束者ですが、末永くその、よ、よろし……」


赤面して、ごにょごにょとした口調になってしまいましたよ!どくどくと心臓も脈打っています!


「もちろん末永く、死ぬまで……というか死んでも転生して、来世でも夫婦になりましょう!でもその前に……あちらの国に戻ってすることがありますよね。それ、さっさと済ませて、心おきなく夫婦生活を始めましょうね」


にっこにっこと笑うアウィン先輩。


も、もしかして……わたしがマラヤちゃんのこと、気にしているのに気がついていたの!?


「あ……その、わたし、マラヤちゃんに……」


アウィン先輩は分かっているというふうに頷かれました。


「ええ、もちろん!乙女ゲームで悪役令嬢が婚約破棄をされ、国外追放の憂き目にあったのですからっ!『ざまぁ』してから幸せになるというお約束を踏襲しませんと!これから忙しくなりますね!まずはルーベライディン王国に戻って、文官を辞して、タウロ室長たちに別れを告げて。それからアレクセル王子とマラヤ嬢に『ざまぁ』ですよ!そうして悪役令嬢の高笑いを是非!この僕に聞かせてくださいっ!ああ楽しみだなあ!」


ざ、ざまぁって……。アウィン先輩、ネット小説とかの悪役令嬢物も、お読みなのですか……。


わたし、ちょっとひっくり返りそうになりました……。



お読みいただきましてありがとうございます。


誤字報告、本当に助かっております感謝ですm(__)m

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