1 『逆ハーレム』ってご存じですか?
新連載です。よろしくお願いいたします!
現在23話まで書いてありますので、文章に推敲入れながら、順次掲載していきます。
年末年始の読み物として、楽しんでいただければ幸いです。
『逆ハーレム』ってご存じですか?
一人の女性が多数の男性に囲まれ、その全員から好意を向けられたり、寵愛を受けたりするものを指しまして、乙女ゲームや少女漫画のある意味定番なんですが。
わたしの姉がこれにハマってまして。
今も『逆ハーエンドで幸せ王妃!!』という乙女ゲームをプレイしながら「きたー☆婚約破棄からの、悪役令嬢断罪!逆ハーエンドまでまっしぐらっ!」などと叫んでいたりするのです。アオイねーちゃん、ちょっとうるさいよ!テンション下げて!
……コホン、失礼いたしました。
えーと、それで、ですね。姉がハマっている乙女ゲームというものを横目で見ながら、ふと、わたしは思ったのです。
『逆ハーレムエンド』を達成し、『悪役令嬢』を『断罪』した『乙女ゲーム』の『ヒロイン』は、複数の攻略対象たちに愛されたまま、本当に幸せな一生を送れるのだろうか……と。
・
・
・
「セレナレーゼ・フォン・オブシディアンっ!可憐なマラヤを虐める悪女めっ!国母に相応しくないその醜悪さ!私の婚約者として失格だ!お前との婚約など破棄してやる!」
わたしの婚約者にしてこのルーベライディン王国の王太子、アレクセル・フォン・ルーベライディンの、無駄によく通る声が会場内に響き渡った。
卒業パーティが始まったばかりのその時に発せられた婚約破棄の声。
王太子アレクセルにべったりとくっついている桃色髪の平民娘。
そして、彼女を守るように、左右背後に立つ四人の男たち……。
はい、こんな状況、もう予測のつく方も多いかと思います。
そう、ネット小説や『乙女ゲーム』でおなじみのアレです。
『卒業パーティでの悪役令嬢の断罪』とか『真実の愛』とかいう茶番劇でございますね。
ふふふ、お待ちしておりました!卒業パーティで婚約破棄なんてテンプレ、どうもありがと乙ですわーいパチパチパチ拍手ー……なーんてね!
あ、そうそう、わたし、乙女ゲーム『逆ハーエンドで幸せ王妃!!』の『悪役令嬢』セレナレーゼ・フォン・オブシディアンに転生した元日本人です。
だから、今日のこの卒業パーティの場で、婚約者のアレクセル殿下から婚約破棄を告げられるということはわかっていたのです。
だってゲームのシナリオがそうなっているのだもの!
よくある『悪役令嬢転生物』のお約束でもありますね!
で、例にもれず、わたしの婚約者である攻略対象者筆頭のアレクセル王太子殿下も、桃色髪ヒロインであるマラヤ・コラーラルちゃんに恋をしたと。
二人が結ばれるために、邪魔なわたしを悪役令嬢として断罪するんですね。まあね、そうしないとストーリー進まないもんなー。それが『乙女ゲーム』の仕様ってもんだよねー。
あ、そうそう。仕様と言えば、このわたし、悪役令嬢とあってもの凄い美女よ。
金色の長い巻き毛に翡翠の瞳。透けるような白い肌。出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるというナイスバディ。前世の日本でも人気ありましたよ!セレナレーゼってキャラは!
ええと、どのくらい人気かというと……。例えばですね、ショーヤ・アダチ氏というフィギュア原型師の方がいらっしゃいまして。
その方、『悪役令嬢』セレナレーゼのフィギュアを、ものすごい多数、作られているのですよ!
乙女ゲームでの衣装、そのままそっくりの真っ赤なドレス姿も凄い麗しいんだけど、わたしのイチオシはゲームでは登場するはずもない水着着用バージョンのセレナレーゼです!美しいというかエロカッコ良いというかなんというか!
柔らかそうな胸がボーン!腰がきゅっ!ぷりっとした桃尻!すらりとした長い脚!いっそ神々しいほどです!
そのセレナレーゼのフィギュアの制作過程をショーヤ・アダチ氏が動画で撮って、それを動画サイトにアップもしております。再生回数ハンパなかったわー。わたしも何度も繰り返し再生させていただきました。あの方は最早神。尊敬の念を持って『アダチ神』とか『フィギュア神』と呼ばせていただいております。あ、男の人だけではなく、わたしみたいに女の子のファンも多いの。アダチ様のフィギュア作品集、コミケで売っていたのを前世の兄が買ってきたから、奪い取って貪るように見たわ……って、ああ、話が脱線。
ええと、ね。とにもかくにもフィギュア化されるくらいの人気の美女キャラとわたしは言いたかったのよ!
ああ、セレナレーゼは外見だけが完璧なのではございません!
侯爵令嬢であるので経済的にも豊かで毎日が優雅な生活。
学力だとか魔力だとか、そういうものも標準装備でハイスペック。
数か国語は話せるし、転移魔法に空間魔法、そんなものまで使えちゃう!
さすが乙女ゲームの悪役令嬢!ホント我ながら素晴らしい!才色兼備!
こんなハイスペックな美女を捨てて、可愛いだけのヒロインちゃんを選ぶ王太子殿下って馬鹿か?目が悪いの?ってわたしなんかは思うけどねえ。
馬鹿と言えば、今世のわたしのお父様もお母様もお兄様も、わたしのことを「王太子殿下と婚約し、後の王妃とならせるための駒」としか考えていないような人たちです。贅沢することと権威を得ることにしか興味がない、領民のことなど何一つ考えない馬鹿侯爵。
はい、これもお約束!
愛情なんてございません!
だけど乙女ゲームなのだから、セレナレーゼの家族不和なのも婚約者を取られるのも冤罪をかけられるのも、仕方が無いのよね。
だってそういう設定なのだもの。
別にいいけどね!前世の家族とは仲良かったし!!父さんも母さんも、タクマ兄ちゃんもアオイ姉ちゃんも大好きさ!今世の家族から顧みられなくたって、寂しくなんてない。
ま、原作の、乙女ゲームのセレナレーゼは、家族から蔑ろにされているから、認めて欲しいって色々がんばってハイスペック令嬢になって、婚約者であるアレクセル殿下にも執着するんだけどさ。
前世の記憶がある今のわたしは、侯爵家の家族も他人みたいなものだし、婚約者のアレクセルにも別に執着なんてしていない。
え?アレクセル?そんなもの、熨斗つけてヒロインちゃんに贈呈するわよ!どーぞ、持っていって。わたし、あんな男要りません。ヒロインちゃん、どうぞ、王太子を攻略してくださいねー。寧ろ、そうなるように協力いたしますから!そんな感じよ。
まあ、ね。乙女ゲームでヒロインが攻略対象を攻略できずに、王太子と悪役令嬢が結ばれたら乙女ゲーム的には失敗だろうとかも思っていたしねぇ。
まあ、ネット小説とかではそうやってヒロインを返り討ちにする物語もたくさんあるけれど……。
うん、やろうと思えば、わたしも婚約破棄回避だの、家族との関係を改善して味方につけるだのなんだの、出来たかもしれない。
何せこっちは乙女ゲームのストーリーを知っている転生者だ。チート上等なんでもござれ。
でも、わたしはその手段は取らなかった。
何故かって?
それはね……。
お読みいただきまして、ありがとうございました!
今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m