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2/10

小説を書き始めた少年の話

 私は東北の片田舎で生まれ育ちました。


 幼い頃から活発な少年ではなく、そもそも近所に子供や友達も数人しかいないので、庭で土いじりをしたり、家の中でプラモデル(ゾイド)を作って遊んでばかりでした。



 小学生になったものの家から学校までは遠く、しかも『4年生になるまでは、自転車で登校してはいけない』という謎ルールがあったため、低学年の頃は30~40分かけて徒歩で通学していました。

 周囲に水田や畑しかない田舎道を、一人で歩いて登下校するとなると、できることはほとんどありません。

 石を蹴ってもつまらないし、ハリー・ポッター(あんな分厚く重い本)を読みながら歩くのは危険です。


 なので自然と、頭の中で物語を空想しながら通学するようになりました。

 それが、今の自分の発想力やストーリーを構築する原点になっていると思います。



 やがて4年生や5年生になると、友達が増えていきました。

 サッカーやドッヂボールをして遊ぶようにもなりましたが、自転車通学になっても空想は止めませんでした。


 そのうち、空想を誰かに話したくなって、リメイク(プレイステーション)版ドラクエ4がきっかけで仲良くなった友達に、オリジナルのストーリーを言って聞かせるようになりました。

 コロコロコミックで読んだ漫画のifの続きや、ドラえもん達がファンタジーの世界で活躍する話など、今で言う二次創作ストーリーですね。

 するとその友達はゲラゲラ笑って楽しんでくれて、それが嬉しくて、また口頭で伝えるために、空想話を毎日のように考えて披露していました。



 小学6年生になると、既存作品の改変では満足できなくなりました。

 新しく考えたオリジナルの話を、父親のパソコンを借りてWordに打ち込み始めました。人生初の短編小説を書いた瞬間です。



 周囲がオレンジレンジやバンプオブチキン、モンハンやハガレン、BLEACHなどを好む中学生になっても、私が一番熱中するのは小説でした。

 ファンタジーやホラーやSFっぽい小説をワープロで書き連ね、ついには印刷してクラスの皆に読ませました。

 今にして思うと、中学生のクオリティですので、黒歴史になるのは間違いないです。

 しかしクラスメイト達は馬鹿にすることもなく、興味深そうに読んでくれたのです。


 すると先生に見つかって、『小説を書いていること』がバレてしまいました。

 私は学校では真面目な生徒だったので、「授業と関係ないものを持ってくるな」と怒られると思い、心底怯えたのを覚えています。

 ですが「及川君は男の子なのに、女の子が主人公の話を書くなんて凄いね。良いアイデアだと思う」と褒められました。


 あの何気ない一言は、今でも忘れられません。

 大人に認めてもらい、否定されなかった。

 一番最初の、作家としての大きな成功体験だったと思います。

 あの時の言葉がなかったら、小説を書くのなんて黒歴史になって、今頃は執筆とは無縁の人生だったことでしょう。



 2ちゃんねるやニコニコ動画が盛り上がっている、高校生の頃。

 当時は個人のホームページというものも流行していましたので、ガラケーを使って自分もホームページを開設しました。

 とあるゲームの二次創作小説サイトを運営し、そこそこに好評で、サイトランキングでは上位に入ったこともあります。


 しかし東日本大震災に見舞われ、サイトの運営どころではなくなりました。

 被災中は執筆から離れ、ただ生きることに必死でした。


 落ち着いた頃、自分は二次創作サイトの運営をやめ、本格的にオリジナル小説投稿サイトでの連載を始めました。

 丁度その頃、『小説家になろう』や『異世界モノ』も大きく盛り上がり始めた時期だったと記憶しています。

 その時に私が執筆した『勇者と魔王モノ』の作品が、後にサイト内コンテストで受賞し、書籍化されるデビュー作です。



 大学生になってもWeb小説の連載を続けました。

 そして投稿サイト内で行われたコンテスト企画に、前述の作品を応募したところ、まさかのファンタジー部門で受賞しました。

 この時19歳。信じられないといった気持ちでした。ですがとにかく嬉しくて嬉しくて、東京で行われた授賞式の、帰りの新幹線の中ではずっと夢見心地でした。




 ただ、あまりもアッサリと、夢から覚めることになります。


 数か月後に、人生で初めて、現実の厳しさを突き付けられました。

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