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第5話 とある冒険者見習い5

 シャルロットは夕日を背に道を歩いていた。ロンと別れてから彼女はずっと歩き続きており、もうすぐロード地区というところまで来ていた。そしてあのBランクパーティーが通過した門で足を止めた。


「あら、ちょうど良いわヤグ、城にもうすぐ戻るって連絡してもらえないかしら?」


 どうやら門番の青年はヤグというらしい。


「分かりましたよ。あ、中へどうぞ。そのままだと困るでしょう?」


 シャルロットはヤグに連れ立って門に併設されている建物に入っていった。ヤグは机の上に置いてある平たいものを取りそれに向かって話しかけ始めた。


「えぇ、もうすぐ戻ると仰っています。……スカイ様が?…分かりました。それも伝えておきますね」


「あら、私何か用事があったかしら…?まぁ、恒例のお茶会で聞いておけば大丈夫でしょう」


「ははっ、お二方に怒られますよ」


 ヤグが振り返ると、そこにはもうシャルロットはいなかった。いや、シャルロットではなくなっていた。立っていたのは1人の大人の女性だった。


 シャルロット同じ銀色の美しい髪をしているが、長かった前髪はもう無く、美しいルビーのような緋色の瞳が見えていた。髪型もシャルロットのものと違い三つ編みや高級そうな髪飾りが付いており、複雑なものになっている。


 服装も全く違った。フード付きローブは跡形もなく消え去っており代わりに白いシンプルなドレスを着ている。


「…相変わらず神々しくて目が潰れそうですよ、

マリア様。またシャルロットになって出かけていたんですね?」


「ふふ…冗談言わないで、あなたこの光景見慣れているでしょ?それにあなたは私が何をしに行ってたか聞かない方がいいわ」


「…そうですか、では自分は警備に戻りますんで。お気をつけてお帰り下さい」


「えぇ、またね、ヤグ」


 そう言ってマリアは部屋をあとにした。残ったヤグはしばらくの間椅子に座りながらボーっとしていたが小さく「なるべく出歩かないで欲しいがねぇ」と呟いた。



 再び彼女は歩き出した。先ほどとは違ってロード地区ではあるが。夕暮れの貴族街は人が少なく、歩く音だけが響き渡っていた。


 マリアが歩いているとどこからともなくあの金髪のメイドが現れ、一歩後ろを歩き始めた。


「マリア様、出かける時は連絡してくださったら良いのに…。それから、スカイ様が怒っていらっしゃいましたよ。明日のお茶会の時にでもお話しくださいませ」


「あらリチェ。私ちゃーんと自分の部屋に手紙を置いたわよ。スカイの件に関しては謝るけど…」


「マリア様の部屋に入れる者など少ないので気が付きにくいです。私は入れますが他の方となるとそれこそスカイ様達しかいらっしゃいません。あの方々はマリア様と違ってずーっと仕事をしていらっしゃるんですよ?」


「…分かったわ、じゃあそこら辺にいるメイドにでも言っておくわ」


「…普通のメイドには荷が重い気もしますが、まぁそれなら…」


 2人は少しだが会話をしながらまっすぐ城へと向かっていった。


 城の前にいる警備兵が「マリア様、おかえりなさいませ!」と言った。


 マリアも「いつもありがとう。お疲れ様」と軽く応えて一国の城に入っていくとは思えないほど、軽い足取りで城へと帰った。


 リチェも何も言わずにマリアについて行った。



 マリアは城に入ると真っ直ぐに自分の部屋を目指した。あの不思議な部屋で一気に最上階まで登る。おおよそ城とは思えないほど簡素な廊下に小さい扉があった。


 ほんのひと握りの人にしか入室を許可していないマリアの完全な私室である。国の主人としては随分と小さい気もするが、マリアはこの部屋を気に入っていた。


 メイドも掃除に入らない。小さいが物が多く、壁にぶら下がっていたり床に散らばっている。さらには天井に貼り付けているものもある。ごちゃごちゃとした部屋だ。そして机の上にある分厚い本を取り出した。それを天蓋付きのベッドに寝転びながら開いた。


 どうやらそれは日記のような物らしく、マリアはペンでサラサラと日付と簡単にあったことを書いていく。


 そして、ノートの終わりの方、後ろの方から別の内容を書いているらしく、そちらも続きのページから書いた。


「ロン…あの子は危険ね。英雄になるかもしれない、けれどとてつもない悪党になるかも…」


 そう言ってマリアは静かに日記を閉じた。そしてそのまま一緒に瞼も閉じた。

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