第4話 とある冒険者見習い4
同日、午前。ラルド、レイズ、ローラの3名はロード地区の入り口まで来ていた。ここからは主に貴族などの上流階級のものしか入れない地区だ。いくら依頼の関係と言えど、Bランクパーティーでは検査なしで入ることは出来なかった。
今は門番に依頼書の確認をしてもらっているようだ。
「問題ありません。どうぞ通ってください。道ですが、ロード地区の地図を渡しておきますね。まぁ迷わないとは思いますが…」
これから3人は城へ行くのだ。迷うはずはないが、色々役に立つしせっかくだから、と、地図を受け取り城に向かう。ウォート地区とは違い、白を基調とした美しい屋敷が広がっている。歩いている人はほとんどが使用人のような格好をしていたり、警備の者のようだった。
とにかく、3人の服装は大変浮いていた。ラルドとローラは何も考えていなかったが、レイズが一応正装を用意してくれていた。と言っても、着替えるタイミングが見つからず、結局城に入って着替えたいと申し出ることになったが。
王城、の前の門でもう一度さらに厳しい検査を受け、入城した。
「初めまして。ここからは私がご案内させていただきます」
金髪の眼鏡をかけたメイドがどこからともなく現れ3人を案内し始めた。ついていくと1つのドアを開け、「どうぞお入りください」と言った。
その部屋には窓もなく、椅子やテーブルといった家具もない上にとても狭いので3人は驚いたが、突然高い所から落ちているような、浮遊感に似た感覚に襲われ、何も言うことができなかった。不思議な感覚が終わり、再びドアを開けると先ほどとは場所が違うところにいるらしかった。
「えっと…そこのメイドさん?何この部屋?部屋自体に魔法をかけたのかしら?」
「いえ、そういうわけではございません。こちらの箱の周辺の重力を一部操っただけです。それから、あなた方のご案内は私が担当させていただきますので、自己紹介をしておいた方が良いかもしれませんね。私のことははリチェとお呼びください。しがいないメイドですが、これからもよろしくお願いいたします」
リチェはペコリと頭を下げてから再び歩き出した。
「正装はお持ちですか?」
「一応、というレベルですが持っています」
このような正式な場での対応は大体レイズが行う。ラルドは正式な口調などとてもできたものではないし、ローラは発言が軽すぎるのだ。
その後リチェが案内してくれた部屋で各々着替え、依頼の関係者が来るまで別室にて待機となった。
今回、3人が受けた依頼は「手紙を届けること」だ。ただの手紙ではなく、王国の聖職者で最も位の高い人物から聖国の政策などを担当している人物へだ。すなわちこれから3人はかなり高位の貴族に会うのである。
しばし待つこと数分。
コンコン
「失礼しますわ。こちらは私にお手紙を届けてくださったBランクパーティーの方々のお部屋で合ってるでしょうか?」
「はい、その通りでございます。どうぞお入りください」
レイズはそう答えるが、ラルドとローラは必死に頭を下げることくらいしか出来ない。
足が見える。女性だ。それほど背は高くなさそうだ。
「私どもは卑しい冒険者ですので、そのような態度を取られなくても…」
「ふふ、それでも私は普段からこんな感じの口調なのよ。まぁこれくらいかしら。手紙、届けてくれてありがとう」
貴族の女性は、この国ですら違和感を感じるような見た目だった。肩ほどの髪を後ろで束ねているが、その髪色は主に白だが毛先に近づくほど紺というグラデーションをしていた。着ている服装の所々に同じ紋章のようなものがあり、おそらく彼女の家を表すのだろう。
「…」
彼女が手紙を読んでいる間、3人は固まりながら次の言葉が発せられるのを待っていた。
「ありがとう。それで、返事の手紙を書くから持って帰って届けて欲しいんだけど、良いかしら?もちろん報酬は出すわ」
それはおかしい話だった。普通このような任務では返事の手紙を持って帰ってくるまでが全てである。特に記載などはないが、多くの冒険者が常識として知っていることだった。
レイズがそのことを指摘すると、
「あぁ、それもあるかもしれないけど、おそらく返事に少し時間がかかるわ。マリア…えっと、この国の女王といえば分かるかしら?その人に相談してから書きたいのだけれども、今いないのよ。公務でいない訳でもないし、困ったものだわ。だから、迷惑料とでも思ってちょうだい」
これ以上断っては失礼に値するとレイズは考えたのか、結局受け取ることになった。とりあえず3日後に再びくることを約束し、3人は宿に戻った。
正装から着替えるタイミングを失い、これまたウォート地区で浮くことになった3人だった。




