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第1話 とある冒険者見習い1

 彼は想像した。


 目の前に広がる広大な大地を。不思議に包まれた世界を。


 自らの出身地であるジェンガル王国。はるか彼方にある皇国。さまざまな文化が共存し、融合した連合。そしてこれからの目的地である謎に包まれた神秘の国、聖国。


 ジェンガル王国の辺境の小さな村で生まれ育った若者、ロンにはいつか立派な冒険者になり世界中を冒険するという夢があった。


 しかし今はは霧に覆われた不薄暗く気味の悪い森を多くの重い荷物を持ちながら歩いている。彼は今、冒険者見習いとしてBランクパーティーの荷物持ちをしている。


 パーティーメンバーはリーダーである大剣を背負った大男ラルド、眼鏡をかけた泣きぼくろのある魔術師の男レイズ、そしてローブを頭からすっぽりと被っている魔術師の女ローラだ。


 ロンは数ヶ月前に冒険者に憧れギルドに入るために王都にやってきたが、冒険者ランクの一番下であるGランクから早くFランクに上がりたくて手っ取り早く上がれる荷物持ちをすることになっていた。


 現在4人はとある依頼で聖国という近年王国や他の国々と国交を結んだばかりの国へと向かっていた。すでに何時間も歩いていたので、4人は休憩することになった。


「レイズ、聖国まであとどれくらいかかりそうだ?」


「あと数時間というところです。まぁ最後の休憩といきますか」


 そう言って4人は休憩を始めた。ラルド達は敷物に座ったが、ロンだけが何も敷かれていない地面に座った。


「おい、ロン。そこの飯とってくれよ」


「あっはい!」


「ロン〜そこのタオル取って〜」


「はいっ!ただいま!」


 このパーティーの扱いがひどいのではなく、荷物運びはこのような扱いを受ける。しかしロンは冒険に出たかった。だから、ランクを上げるために我慢し続けていた。


 4人は休憩を終え再び歩き出すことにした。森は霧の包まれており、大木が陽の光を遮っている。鳥の声もほとんどせず、肌寒い。しかし聖国まであと少しだと思うことで、ロンは再び一歩を踏み出したのだった。



 数時間後、大きな白い石でできた門の前に4人の姿があった。ここで聖国へ入国する人に一時的な身分証を発行したりするのだが、何しろこの門はあの不気味でろくに舗装もされていない森を通過してくるものしかいないので、冒険者がほとんどだった。


 並んでいるものがいなかったので、4人は暇そうにしている若い門番に話しかけた。


「すまん、俺たちはジェンガル王国所属のBランクパーティーで、依頼の関係で聖国に入りたいのだが…」


「はい、わかりました。それでは500メルお払いください」


「500メル⁉︎そりゃまた随分たけぇな!」


「大丈夫ですよ。お帰りいただくときに今からお渡しする仮身分証をお返しいただければ300メルお返しいたします」


「なんだぁ!じゃあ安いくれぇだな!ほいよ!3人分だぜ!」


 そう言ってラルドは1500メル払った。ロンも、当然とばかりに500メル自分の分を払った。


 門番は少しの空白の時間のあと、2000メルを受け取り、4人の名前と簡単な情報を聞き、仮身分証を発行した。


「あ、それから簡単なものですが地図をお渡ししますよ!ギルドの場所などが記されています。さらに詳しいものをお求めな場合はギルドや役所などで貰えますからね!そちらも無料です!」


 そう言って若い門番は地図を渡し、「ようこそ、聖国へ!」と言って4人を笑顔で送り出した。


 ロンはドキドキしていた。実はこれが初めての外国なのだ。しかも、だ。王都のギルドでGランク冒険者として迷い猫探しなど低ランク任務をやっているときに聖国の噂を聞いていたのだ。


 商人曰く、「王国とかなり文化の差があって、治安も良く素晴らしい国だった」


 先輩冒険者曰く、「争いが少ないのにあそこの冒険者は実力もあって頭が回る奴が多かった」


 騎士曰く、「あの国は女王がめちゃくちゃ美人だった。メイドも美人揃いだし、最高だった」


 ロンはその噂を鵜呑みにして、聖国のイメージを良い方に膨らませていた。


 一方少し前を行く3人は、ヒソヒソと小声で話し合っていた。


「ラルド、あの門番どう思いましたか?」


「めっちゃイケメン!かっこかわいい感じだったわ!もう食べちゃいたい!」


「そうだなぁ。やっぱ噂は聞いてたけど初っ端からこうだとは思わなかった。あいつの髪の色…焦げ茶だったな」


 レイズは「ローラには聞いていませんよ」とこづいてから真面目な表情を見せた。


「ジェンガル王国、いや、皇国や連合、その他の国も共通して95%が同じ色の茶髪です。残り5%もほとんどが焦げ茶や赤茶ですが、聖国はむしろ一般的な茶髪が少ないとまで言われていますからね。我らが国王は遥か昔の祖先が金髪だった名残で明るい茶髪ですが聖国の女王、聖女と呼ばれている方は美しい銀髪だと伺っています」


「あぁ、女王も銀髪だが副女王も黒髪らしいな。さっきの門番も焦げ茶だったし、噂は真実らしい。ってことでローラ」


 不貞腐れて自身の髪を弄んでいたローラは名前を呼ばれて「何よ」と言った。


「この国じゃ髪の色による奴隷狩りはもちろん、奴隷もいないらしい。フードを外して良いが、若い男の奴隷が欲しいとか言うんじゃねぇよ」


 ローラがローブのフードを外すと、現れたのは赤茶の髪だった。


 ローラは嬉しそうに「分かった!奴隷じゃなくて普通の男は逆ナンして良いんだよね⁉︎」と言い、ラルドは呆れてため息をついて「勝手にしろ」と言った。


 そんな会話を知らず、ロンは鼻歌を歌いながら聖国に足を踏み入れた。



ロンの人生を左右することになる大きな一歩だった。

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