お茶会(1)
バタン、とドアの閉まる音がした。マリアはカーテンの隙間から部屋の様子を伺った。先程まで3人の人影があった場所にはもう誰も居ない。
「スカイ、こっちに来ないの?」
「…今、行くわ」
一段高い所にある椅子に座っていたスカイは降りてマリアとメアリーのいるバルコニーにやってきた。そこには立派なテーブルにお菓子やお茶が並べられていた。
マリアとメアリーがそれぞれの席につき、スカイも余っている最後の一席に着いた。
「それで…今回はどういうことなのよ?マリア」
メアリーがマリアに聞く。
「…うーん…危険人物の排除と、可能性を見たかった、かな?」
「相変わらずマリアは抽象的なことを言うのねぇ。あの子は?ラドリーに関してはどうなの?」
今度はスカイが質問する。それに対してマリアは微笑みながら小首を傾げ、
「誰だっけ」
と答えた。
「…ほら、今回被害者になっちゃったパン屋の子だよぉ」
スカイがそういうとマリアは合点が言ったようで「ああ…あの人」と呟いた。
「あの人はちょっと“運命”を変えただけ。大したことしてないわ」
「ふーん…」
スカイはぱくぱくとお菓子を食べていく。
「スカイ、太るわよ」
「太りませーん!人間と違って簡単に太りませーん!」
メアリーがスカイに指摘する。マリアはその様子を紅茶を飲みながら眺めていた。暫くの間、穏やかな時間が続く。軽く談笑し、お茶菓子を食べる。
ガチャン
ガラス製のバルコニーのドアが開く音がした。顔を覗かせたのは明るい橙色の髪をした男性だ。
「ああ、やっぱりここに居たんだね、メアリー」
「どうしたの。普段はここに来ないじゃない。何の用事?」
「冷たいなぁ。妻に会いに来て何が悪いんだい?」
「ヴェラスト、女園に入る方がいけないのよ」
ヴェラスト、と呼ばれた男性はメアリーの夫だ。この国で屈指の権力を誇るトルッシェ家の当主。彼はマリアに軽く会釈し、メアリーのそばまでやって来た。
「またあいつらが来たんだ。それであの子らが今度は自分達だけで対処したいって。僕はいいと思うんだけど、君の考えも聞きたいんだ。返事は後でもいいから」
「いえ、今行くわ。あの子達と直接話す」
メアリーは席を立つとヴェラストとともにバルコニーを去った。
「メアリー冷たぁい、すぐに行っちゃうなんて。最近ただでさえお茶会の回数が減ってるのに」
「忙しんでしょうね、彼女、真面目だから。私がシャルロットになって街に行くことにもうるさくて…最後にロンさんに会いにいこっと」
「あの子、結局何?愚かで無知で可愛げがあって危険には見えないけど」
「将来変わるのよ。まだ分からないから…」
「ふーん…よく分からないわ」
「別に分からなくていいのよ。私が自分の理想を求めて行動してるだけだから。あ、それでスカイ私のことを探してたわよね。用事はなぁに?」
「あの…ロン?だっけ。彼とパーティーの人たちが持ってきた依頼に関することよ」
そう言ってスカイはマリアにひらり、と書類を渡した。
「返事をいつ出す、とか出す方法とかはもう書いちゃったから。もうパーティーリーダーの大男に渡しちゃった」
「はぁー、とうとう宗教問題が来ちゃったのね…」
「それで、どうするの?」
「受け入れるしかないわ。穏便にいきましょう」
スカイがマリアに渡した書類には、「聖国内の教会設立について」と記されていた。ジェンガル王国側は聖職者を聖国に送り込み視察をしたのち教会をこちらにも建てたいらしい。
「指名を出すわ。聖職者が来る方は私の方で揉めない程度に片しておくから。こういうのはスカイの分野でしょ。教会設立の方は頑張って」
「え〜?」
スカイとマリアはその後も話をしながらお茶会を楽しんだ。
「あれ、もうこんな時間なのね」
「あーじゃあ私は屋敷に戻るわ」
「それでは、また明日…」
スカイと違いマリアは城に住んでいる。上へと続く階段をカツン、カツン、とゆっくり登っていく。
(さてと…ロンさんは数日後にこの国を出る。その直前に会いにいこ。どんな表情がいいかなぁ)
自室にたどり着くと真っ直ぐにベッドへ行きダイブする。
「はぁ…」
ため息を漏らし、マリアは眠りについた。




