第10話 とある冒険者見習い10
シャルロットにローラの魔法が当たった。その瞬間、光がバチッと音を立てて、一瞬壁のようなものが現れた。
「なっ…!?上級魔法を防いだ…?」
ローラとレイズの顔が驚きに染まる。シャルロットは穏やかな顔でロンを見た。
「…私は何もしてないわ、ね?ロンさん」
「…ロンっ!?」
ローラとレイズはロンに気が付いた。ロンは異様な疲労感に突然襲われていたが、何故だか気がついた。
魔法は殆どの人が使えるものである。とは言っても万人が使えるものは軽く物を浮かしたり、小さな火を灯す日常魔法だが。
人は自分の持つ魔力を使って魔法を生み出す。自分の中の魔力が減れば減るほど疲労感が増すのだがーーこれは、その感覚だ。幼い時に魔法を使える以上に使ってしまった時以来の、あの感覚だ。
「ロン…魔法が使えたんですか?それとも今火事場の馬鹿力で使えただけか…どちらにせよ、貴方の口を黙らせるだけです。ローラはあの小娘を」
そう言ってレイズはロンに向けて攻撃魔法を放った。が、再びその魔法は消滅する。
「お兄さん、私が何も対策せずに立っているわけないじゃない」
「くっどうせ同時に魔法を使うことは出来ないだろう!!ローラ!!ロンは魔力の使いすぎでまともに戦えないので小娘が先です!!同時にいつもの攻撃でいきましょう!!」
「もちろん!もーっ!ガキのくせに手間取らせないでよっ!!」
今度はローラの炎の魔法とレイズの鋭い風の魔法が異なる方向からシャルロットを同時に襲う。
ひらり、とシャルロットの手が左右に伸ばされる。バチバチッとまたあの音が鳴り響く。
「残念、私攻撃は得意じゃないけれど防御は得意なのよ。…貴方達よりもね!」
「えっ」
ドンッ!!
レイズの体がゆっくりと前に傾き、地面に伏せ落ちる。レイズの後ろから現れたのは鞘のついた剣を振り下ろしたロンだった。荒く息を立てながらもしっかりと剣を握っている。
「僕だって…一端の剣士なんだっ!!まだGランクだからって舐めるなよっ!!」
「剣士、という戦い方ではなかったけれどね。ありがとうロンさん」
シャルロットはいつも通り穏やかに微笑む。レイズが倒れ、ロンが動ける状態にあることに焦ったローラは憎々しげに口を開く。
「こんのガキがぁっ!!」
乱暴に発動させられた攻撃魔法は四方八方に炎を散らばせる。
「ロンさん!私が魔法でなんとかするからその間にーーローラさんを殺して!!」
「えっ」
「殺すのを躊躇ってる場合じゃないわ!この人は人を殺してるのよ!貴方と違って殺すことにはなんの抵抗もない。このままじゃ私たちがやられる!炎を抑えておけるのは私の魔法だし、私は攻撃魔法が上手く使えないし、それほど拘束も長く持たないわ!貴方の剣の方が有効よ!」
ロンは硬く剣を握る。ロンは獣を殺したことはあるけれど、人なぞ殺したことがなかった。ましてやこの剣は彼の母親がロンが夢に少しでも近づけるようにと買ってくれたものである。人の殺しに使いたくなかった。が、シャルロットの言うこともまた正論に聞こえた。彼女が人を殺していることは明白である。そもそもCランク冒険者までいくと野盗などを殺したことがあるだろう。
ロンが頭の中で考えているうちにシャルロットの光のような縄が炎を貫通してローラの体に纏わりつく。
「くっこの…!」
「今よ!!早く!」
ロンは剣を握り直し、鞘を外す。そして弱まった炎を恐れながらも確かに一歩を踏み出しーー。
ザンっと音が響き渡った。炎に照らされ赤が散った。
「え…」




