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第9話 とある冒険者見習い9

 ローラとレイズが2人きりで森にいる。ラルドは同室なので寝ていることを確認済みだ。深い霧がたっており何をしているかは分からない。声と僅かな姿しか見えない。ロンは少しだけ近づく。


「…うちょっと休憩しましょう。私疲れちゃったわ。大体こんなところ誰も来ないわよ」


「そうかも……ませ…が…。ここは比較的街に近いです。聖国は犯罪…が低い……で警備…多いのかもしれません」


「でもさぁ、四年前まで抜けれなかった森よ!?

それまで挑んで帰って来れなかっ…人たちはこの森で…になっちゃってるわけでしょ?その人達が見つかってな…ってことは大丈夫よ!」


 …話の空気が不穏だ。見つからないように、人を警戒して、隠しているーー。


 何を?


(何をしてるのか分かんないけど、絶対に良いことじゃない。今日はこのまま戻って…。ラルドさんは多分知らない。伝えて指示を仰ごう)




「逃げるの?目を逸らすの?目の前に、真実はすぐそこにあるのに。人を殺していたらどうするの?このままほったらかしにしていたら被害者が増えちゃうかもしれないね。…あなたが全てを判断するけど、よく考えてって、私言ったよね」




 突如、鮮明な声が聞こえた。


「え?」


 慌ててあたりを見渡すが誰もいない。


「…今何か声がしませんでした?」


「えー、そう?」


(まずいっ!)


 ロンの声に反応してレイズがこちらへ近づいてきた。レイズのシルエットが見える。慌てて音を立てないように木の影に隠れる。


(まずい、もうこの距離じゃ霧があってもーーー)


「誰かが呼んでいるー、どこかで呼んでいたー

何も知らーなーいー、全てを知っているー、哀れな少ー女はもがき続ーけーる、その背に翼なーんて有りはしなーいーのーにーー♪……」


  歌が、聞こえた。少女の声だ。透き通るような、よく響く心地よい声だ。ロンはその声の主に心当たりがあった。


(シャルちゃん…?)


 自分が隠れている木の上、太い枝にシャルはいた。こんな夜、霧もあるのにシャルは袖のないワンピースでいた。白いワンピース以外には何も身に付けていない。靴さえも。


 スッと殆ど音を立てずロンの前に彼女は降り立った。マリアの姿ではなくシャルロットの姿だ。


「えーと、初めましてお兄さん、お姉さん、ここで何してるの?」


 二人の注意は完全にシャルロットに行った。夜中に突然の乱入者。それも銀髪の少女である。


 暗にロンを逃がそうとしてくれているのだろう。

シャルが話しかけている僅かな隙にロンはもう少し下がり、会話は聞けるが姿は見えないほどの距離まで行った。


「……お嬢さんこそこんな夜更けに森で1人ですか?お家まで送りますよ?」


 ラルドがいる位置は、最初にいた何かを隠しているかもしれない場所から少し離れている。シャルロットをこのまま返せば穏便に済むのだ。


「別に私はダイジョーブ!時々今みたいに出歩いているから慣れてるの。それより私は他国のお方がこそこそ何かをしている方がどうかと思うわ」


 サァっと風が吹き、シャルロットの髪が揺れる。

長い前髪から覗いた真紅の瞳は真っ直ぐにラルドを捉えている。


 キラリ、とラルドとローラの視界で何かが弾けた。キラ、キラキラ。銀の光が舞っている。それはとても美しく、幻想的でーー


「ローラっ!この小娘、幻術魔法を使っているっ!」


「あら、気づかれちゃった…」


 シャルロットが使用したのは弱い幻術魔法だ。ロンは先日かかってしまったが、今回は対象外だったのでシャルロットが使ったと言うのを会話で聞いただけだった。


 幻術魔法には色々な使い方がある。単に相手の警戒心を薄めたり、幻影を見せたり。弱い幻術魔法では対象が魔法を認識しただけで解けてしまう。


 ヒタ、ヒタ、とシャルロットはローラの方へ近づく。


「…ローラ、この小娘只者ではないようですし、隠し通せない。ーーーここで、殺そう」


(ーーあぁ、嫌だ。こんな予感当たって欲しくなんかなかった。ラルドさん…)


 確実にレイズとローラはやり慣れている。おそらく隠すだなんだ言っていたのも死体だろう。ロンは、複雑な気持ちで会話を聞き続ける。


「…そこにある男性は誰?顔に見覚えがあるし聖国の人よね?貴方たちが殺したの?ねぇ、彼何か悪いことした?彼、言ってたのよ、パン屋のあの子に告白するんだ、とかほんの3日前にほざいていたのよ。ねぇ、なんで殺したの?ねぇ、ねぇ、なんでーー」


「うるさいわねぇ、このガキ!」


 ローラがシャルロットの言葉を遮り一歩彼女に近寄る。ローラは伊達にBランクパーティーのメンバーではない。Bランクパーティーに正式なメンバーとして在籍している、と言うことは最低でも上位ランクであるCランクはあるのだ。


 Cランクといえば大抵の者は敵わない。一見G〜Sランクの中では中堅のようにも感じるが、上位ランクは人数が少ない。Sランクに至っては誰も認められていない、すなわち0人の時すらある。


 Gランクは登録だけして身分証として取っておく、すなわち冒険者活動をしていない者が多い。Fランクは駆け出しの冒険者、まだ魔物との戦いはできないランクだ。Eランクからようやく一人前として認められる強さだ、ある程度の戦闘や魔法などが出来なければいけない。そしてDランクは普通より少し強い冒険者だ。


 よく会えるのはここら辺まで。Dランクまでで実に冒険者の9割以上、いや、95%以上を占めていると言っても過言ではない。


 Cランクはかなり強い。魔法使いであれば上級魔法を扱える強さだ。そして依頼主が貴族であることも珍しくないので、ある程度の態度や経歴が求められる。


 Bランクからは個人であれば二つ名がつく。あったらサインを求められたり、囲まれたり、ファンが付くレベルだ。一人で上位ランクの魔物の討伐などができ、国からの依頼を受けることも少なくない。


 そしてAランク冒険者。一つの国に何人いるか、と言うレベルだ。ここいらまで来ると神出鬼没で滅多に会えない。貴族ですら会うためにはギルドに伝達をお願いしなければいけない。それも冒険者の気まぐれで断られる可能性が大いにある。


 Sランク冒険者は圧倒的な強さを持ち、偉大な功績や、Aランク冒険者が全員認めるような器量がなくてはいけない。ギルドの会議で誰々はSランクで良いのでは、といった議題になると可能性が見えてくるレベルなのでいても数人、いないことが数年続くこともある。


 GFランクが低ランク冒険者、EDランクが中ランク冒険者、Cランク以上が高位ランク冒険者と言われている。ASに至っては殆どいないため、呼ばれること自体少ないが、最上位ランクや高位冒険者などで呼ばれることもある。


 冒険者はパーティーを組んでいる場合が多いがそれは個人ランクとは別にランクが付き、パーティーリーダーのランクになることが殆どだ。パーティーを組めるのはリーダーと一つ違いまで。Bランクパーティーには上位ランクの冒険者しかメンバーになれない、ということだ。


 そんな強さを持った彼女が、素早く詠唱をしてシャルロットに狙いを定める。


 ロンは思わず身を乗り出して見ていた。ギリギリ見える距離だ。ここではレイズからも見えてしまうだろうが、自分を庇ってシャルロットが傷つくのは嫌だった。


 ーー自分には庇うことすらできないかもしれない。でも、何もしないで見ているのはーー


 ローラが生み出した上級魔法が、シャルロットを襲った。

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