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電脳魔法少女 サイバズウィザーズ!  作者: マキザキ


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エピローグ いつまでもネットリテラシー!




「うう……やっぱり緊張する……」


「大丈夫だって、俺がずっと傍に居るから」



 夏休み明けの正門前。

 門に入る手前で二の足を踏む美来の手を握り、そっとエスコートする希海。



「あー! 来た来た!!」


「おいおいおい! 朝っぱらから熱い限りじゃないか!」


「よっ! ヒーローカップル!!」


「いや~んっス! 他人の恋愛事情は蜜の味っス~!」



 その姿を見た生徒たちが、次々に熱烈な声を投げかけた。

 2人は美来のリハビリという名目で夏休みの間に外出を重ねたのだが、その先々で狙いすましたように起きる事件を解決して回る羽目となり、結果、夏休み明けから高校一の名物カップルの肩書を獲得してしまったのだ。



「う~……行きづらいよぉ……」


「いいじゃないか! いっそみんなに見せつけてやろう! ん!」


「ん―――!!」



 突然公開キスを披露した2人に、皆の歓声は最高潮に達する。

 同時に、「こらー! 不純性交友は許しませんよ―――!」という叫び声と共に、担任教師が全力疾走してくるのが見えた。



「やれやれ……これからの学校生活、先が思いやられるな」


「私のセリフだー!」



 美来の叫びが校舎中にこだました。




////////////////////




『はいどーも、探偵! ファクトチェッカーズでーす! 今日はなんかバズってるこのニュースの真相を……』


「へー。これコラ画像らしいぞ」


「そんなん見れば分かるじゃん……」



 放課後、ソウマが最近流行っているニコチューバーの動画を希海に見せてくる。

 内容は、多少常識なり、コラージュ技術なり、もしくは電脳魔法少女を抱えていれば分かりそうなバズり画像の嘘を看破するというものだが、希海はフフっと口元を緩ませる。

 画面にはあの、風車の騒動の時に頭を下げに来た配信者コンビが映っていたのだ。

風車騒動の時の嫌な連中感は消え去り、スーツを着て真面目な裏打ち検証を行う姿には、随分好感が持てる。



 視線を移せば、ユキがチームのユニフォームを着て、校舎周りのランニングに精を出していた。

 あの一件を乗り越えた彼女は奮起し、夏休みの強化合宿を経て秋大会のレギュラーの座を勝ち取ったらしい。

 自殺バズラスに狂わされるほどに追い詰められていた彼女が、再び立ち上がることが出来たことに、希海は心から安堵する。

 一方の美来は、やけに爽やかかつ、情熱的な目で「私も負けないからね!」と言われてしまい、戦々恐々だそうだ。



 手元のスマホを見れば、あの、赤子の霊に憑かれていた女が、ネットニュースの取材に対し、初公判に臨むに際しての心持ちを語っていた。

 全面的に罪を認め、十字架を背負って生きていく旨を裁判で伝えるそうだ。

 彼女の罪は、決して許される類のものではないが、あまりにも醜い言い訳を配信し、挙句自らの命を絶とうとしていた姿に比べれば、彼女の姿は幾分マシに見える。


 あの事件がきっかけで、乳幼児をもつ母子家庭支援のNPO法人が設立され、似たような状況にある母子を救った事案が早々に発生したことも、記憶に新しい。

 怪我の功名と言うにはあまりに惨いが、プラズノイドをも感化させた心優しい赤子の魂も、これで浮かばれるというものだろう。

 希海はあの赤子の冥福を、そっと祈った。



「希海お待たせ! ちょっと先生と話し込んじゃって」



 不登校期間に関するメンタルケアと、生徒指導を受けてきた美来が教室に戻ってきた。

 ソウマは「おっと、水を指したら申し訳ないぜ」と言って一足先に下校していく。



「あれ、私避けられてる?」


「いや、朝から熱烈キスを交わす2人の間に挟まるヤツは馬に蹴られて死んじまうんだってさ」


「希海のせいじゃん!」


「まあまあ、いいじゃないか、そういう学校生活も。誰もお前に手出ししないぞ?」


「それはそれでいいけど……」



 2人は鞄を背負い、下校していく。

 ふと、希海の腹からグゥという音が鳴った。


「なあ美来、学校生活と言えばさ、下校中の買い食いだと思わないか」


「えぇ……。希海あれだけお弁当食べてまだ入るわけ?」


「夏はお腹が減るんだよ」


「はいはい……。んで? どこに連れて行ってくれるわけ?」


「もちろん! 風車だよ!」



 希海のスマホには、「ただいま神城市! 本日より風車リニューアルオープンです!」という、いなか蕎麦屋の呟きの画面が映っていた。

 美来は「女の子との下校デートにいなか蕎麦屋って~」などとぼやきながらも、軽快な足取りで希海の左側に陣取る。


 人は傷つきながらも、過ちを犯しながらも、立ち上がり、前へと進む。

 自分の歩みが、美来が前へ進む一助になればいい。

希海はそんなことを考えながら、美来の手を引いて歩き始めた。

 2人の歩みは、まだ始まったばかりだ。


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