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電脳魔法少女 サイバズウィザーズ!  作者: マキザキ


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第11話 B ミライ消失




「なにこれ!? 街中の通信が消滅してる!」


「バズラスか!?」


「ううん……。データの流れがないからよく分かる、バズラスの気配は全くないよ」


「となると……」


「黄色いヤツのせいだろうね」



 希海のスマホのカメラを通し、電脳世界を見通す美来。

 インターネット通信が消え去った街の電脳世界に、美来は降り立つことが出来ない。

 PCから出る時も、USBでの有線接続でスマホに移動することしか出来なかったのだ。


 未だ夜明けの見えない夜の街を駆ける希海。

 流石に3時となると、人通りは殆ど無いが、所々でスマホを振り回し、電波を捉えようとする人々の姿が見える。



「このまま夜が明けたら大混乱になりかねない! 早く解決しないと……」


「だね!」



 2人は大通りを抜け、駅前へ向かう。

 始発もまだの神城駅には、駅前コンビニ数店を除いて明かりはない。

 長時間戦を見据え、希海が飲み物を買って店から出ると、丁度、コンビニに納品のトラックが走ってきたところだった。


 ふと、その背中から興味深い会話が聞こえてくる。

 「なんか今日電波悪くないですか?」という、コンビニ夜勤店員の話に「え? 特にそんなことは無いですけど……? 今も電波フルで立ってますよ?」と、トラック運転手が応えていた。


 希海が違和感を覚え、振り返ると、その視界に、巨大な黄色い物体が入ってきた。

 ビルの隙間から、ウニョウニョと這いだしたそれは、優に全高10mを超えている。

 あの黄色い生き物は、この数日で、驚くべき巨大化を遂げていたのだ。


 その形相は、苦悶とも、必死とも、激怒ともとれる、少なくとも、友好的な表情では決してない。

 驚嘆する希海を尻目に、その生き物は口を開けると、運転手の持つスマホや携帯端末から、何かキラキラしたものを吸い上げていく。

 同時に、「あれ? なんかボクのも電波悪くなりましたね……。あちゃー……納品システムもオフラインになってる……」

 と、困った声を上げる運転手。



「やっぱりお前だったのか! 馬鹿なことは止めるんだ!!」



 希海はその生き物の真下に走り、説得を試みる。

 というか、それくらいしか出来ることがない。

 そして、明らかにそれを聞き入れてくれるような表情ではない。



「ヒトヲキズツケル……イラナイ! ノゾミ……ミンナキズツケアウ!!」


「ネットのこと言ってるのか!? いや、そりゃ人を傷つけることもあるかもしれないけど……」


「ナイホウガ……ミンナシアワセ!!」


「極論過ぎ……痛ってぇ!!」


「希海!!」



 突如黄色い生物から放たれた電撃が、希海の体を貫いた。

 数万ボルトのエネルギーを食らい、怯む希海。

 その隙に、ゆっくりとビルの隙間へと逃げ込んでいく黄色い生物。



「待て! 待ってくれ! 馬鹿な真似はっ……痛ったぁ!!」



 今度は数十倍に拡大された電撃を食らい、よろける希海。

 黄色い生物は「プラズノイド……アラソイ……キライ……アラソイノモト……ナクス。ジャマスルノ……タオス!」と叫ぶと、その身を大きく乗り出し、両手を広げると、怪しげな光を電脳世界へ放つ。


 直後、そこら中の電気が激しく明滅し、地下を這う電気、通信ケーブル線が希海に襲い掛かり、拘束する。

 同時に強烈な電流が希海を襲った。



「くっ!」



 苦悶の表情を浮かべる希海。

 その横を美来が走り抜けた。


「サイバーインパルス!!」


「ウワアアアアアア!!」



 希海に流れこむ電撃を遡上した美来の光線が、プラズノイドと名乗った黄色い生き物に直撃した。

 その口からデータが噴き出し、今しがた奪われたばかりのトラック運転手の通信が回復する。

 拘束が緩んだ隙を狙い、脱出する希海。



「希海! 当たった? 見えないから教えて!」


「でかした! 命中だ! あいつ、電脳世界からの攻撃なら効くみたいだ! しかも、奪った通信を吐き出してる!」


「だったら希海! そいつに狙いを定めて! 私、希海に合わせて攻撃撃つから!」


「了解した! 美来! 俺のスマホのカメラの焦点を狙って撃ってくれ!」


「任せて! サイバーインパルス!!」



 2発、3発と放たれた光線が、プラズノイドに直撃し、体内に封じられた通信を次々と吐き出させる。



「いいぞ美来! この調子で全部吐き出させるぞ!」


「オッケー! 私の力見せてあげるんだから!!」



 2人は勝機を見出し、攻勢に入る。

 だが、プラズノイドもそのままやられるほどヤワではなかったのだ。



「ソノデータ……ウバウ!!」


「へっ……嘘……!?」



 美来が浮遊感を覚えた時には、時既に遅し。

 気付いた時には、希海のスマホから引きずり出されて電脳世界へと放り出され、そのままプラズノイドの大口へと吸い込まれるところであった。



「!? 美来!?」



「ノゾミ……モウ……ジャマデキナイ」



 プラズノイドは苦し気な、悲し気な表情を浮かべると、ビルの谷間の暗闇へと消えて行った。



「美来……おい……美来―――!!」



 希海はその後を追ったが、既にその黄色い姿は掻き消えていた。

 支援アプリの彼女の存在を示すアイコンがグレーに変わり、彼女のロストを告げていた。


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