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電脳魔法少女 サイバズウィザーズ!  作者: マキザキ


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第6話 A 使い魔今北産業!




「なんか最近変な事件が続くねぇ」


「ですねぇ」


「どうだい? 旨いかい?」


「旨いっすよ。梅肉とちくわってよく合うんスねぇ」



 週末、いなか蕎麦“風車”で恒例の週替わりそばを楽しむ希海。

 今週のトッピングはちくわの梅しそ天ぷらだ。

 ふっくら柔らかな白いちくわに、塩ょっぱめ、酸っぱめの自家製梅干しが青じそと共に詰められて揚げられている。


 このちくわも自家製で、今まさに店のカウンターに据えられた炭火焼き機で細い竹に巻かれた魚のすり身が炙られている。

 サメとタイの合わせすり身らしいが、なんと、これまた店主が自分で調達してきたものらしい。



「しかしサメなんて釣れるもんなんですね……」


「そうそう! ボクも知らなかったんだよ。ただ、SNSのトレンドでサメを釣れる釣り船の話題が流れて来てね、それで一念発起して、ひと釣りしてきたってわけさ。ちなみにサメと合わせてるタイの身は、その外道で釣れたマトウダイのものなんだ」


「あはは……と……トレンドっすか……。ちょっと急ぎで蕎麦湯お願いします」



 希海は嫌な予感に駆られつつ、蕎麦湯を飲み、店を後にした。




////////////////////




「ふむ……何か異様なバズリは見えないな……」



 美来の家に向かいながら、サイバーグラスで町の情報流を観察する希海。

 このトレンドだが、希海が最近習得したタグの遡上をしてみると、どうやら、数年前にDVD発売されたクソサメ映画をサメ映画紹介ニコチューバーが紹介し、そのサメ映画の主役となったサメ、「シロワニ」が神城水族館にいて、そのことを水族館がSNSにて呟いたことが事の発端らしい。


 それによってサメ愛好家たちがこぞってサメ関係の呟きをし、それが巡りに巡ってサメ釣りの話題となって、店主の目に触れたというわけだ。

 世の中、何が原因で物事が動くか分からないものである。


 ただ、以前見たような激しい情報流は見られず、バズラスの起こす異常な現象も見られない。

 実際、全てのトレンドがバズラスと化すわけではないのだ。

 まあそれ故に、対策が難しいのだが……。



「ガンバレ! ガンバレ!」


「うわ!! 何だ!?」



 突然、耳元で叫ばれ、ビクリと身を跳ねさせる希海。

 振り返ると、あの黄色いハリネズミ型生物が、ちょうど彼の顔の位置くらいの空中でピョンピョン跳ねていた。



「おお! 無事だったのか! 良かった良かった!」


「ブジダッタ! ヨカッタ!」



 黄色い生物が、ニッコリと笑いながら両手をピョコピョコと動かしてる。

 (か……可愛い……)と、希海はその生物に手を伸ばしたが、触れることはできなかった。



「ヨカッタ! ブジ!ブジ!」



 黄色い生き物は、希海の伸ばした手を引くような仕草をし、まるで彼をどこかへ案内しようとしている様子だ。

 希海は少し戸惑ったが、ひとまずその案内に従うことにした。



「ガンバレ! ガンバレ!」



 その生き物が希海を導いた先、そこは漏洩騒動の時、彼がモバイルバッテリーを置いていった場所であった。

 誰かが避けてくれたのか、モバイルバッテリーは道の隅の地蔵の傍に転がっている。

 若干埃っぽいが、特に損傷はない。



「ああ、これ返すって言いたいのか。いや、君が元気になったみたいで何よりだよ」


「ゲンキ! ゲンキ!」


「ははは。なんか言葉覚えたての赤ちゃんみたいだな君は。あいつもこんな時期あったなぁ……」



 希海の言葉をオウム返しながら、言語でのコミュニケーションをとろうとしている黄色い生物に、彼はどこか懐かしさを覚える。

 少し寂しげな目線で、一瞬遠い目をした希海。

 その視線の先で、激しい光の激流が迸った。



「!! バズってる!」



 希海は黄色い生物に「ごめん、また会おうな!」と言い残し、そのバズりの元へ向かおうとした。

 しかし次の瞬間、その黄色い生物が口を大きく開け、スゥゥゥゥゥ!という音と共に、息を吸い始めた。

 途端に、情報流の方向が変わり、その生物の口内へと勢いよく吸い込まれていく。

 まるでその生き物が情報を、データを食っているかのようだ。



「へ!? き……君は一体……!?」


「ケプウ……。サメ。タベル。ミンナ……ケプウ……」



 黄色い生物は可愛らしいゲップをすると、そのままスヤスヤと眠ってしまった。

 心なしか体は大きくなっていて、腹が時折ピクピクと痙攣している。



「もしかして君は……」



 希海はその姿に、ある可能性を見出し、美来の元へと急いだ。




////////////////////




「はぁ!? 私の使い魔的な奴!?」


「いや、だってさ、魔法少女ってそういうちっこいマスコット的なのいるじゃん。俺が見た黄色いのがそれなんじゃねぇの? なんかバズラスの元っぽいのを食いまくってたし」


「いや、私から見えない、コミュニケーションも取れない使い魔って意味ないでしょそれ!」


「だからさ、お前も外に出てサイバーグラス使ってコミュニケーション取ってみたら?」


「いや出ないけど!? ていうかノックしろって言ってるでしょ! バカ!!」



 希海が駆け込んで来るなり訳の分からないことを言い出したので、美来は不愉快そうな顔をする。

 心なしか頬は紅潮し、息が荒い。



「たぶん、本来はお前のパートナーはあの子なんだよ。あの子はきっと、バズラスの脅威を取り除くためにどこかからやって来た妖精的な存在なんだ、それこそ、お前の元に届いたメールの送り主辺りの命令を受けてさ」


「だから何? 今更私の相棒を降りようっていうわけ? 言っとくけど私、希海と一緒じゃないと戦わないから」


「いやそうは言っても……俺みたいな機械音痴より適材適所ってもんがあるんじゃないか?」


「嫌だから」



 そう言って、PCモニターに向き直る美来。

 これは彼女が不機嫌になった証だ。

 希海は笑っているような、呆れているような、歯を食いしばったような複雑な表情を浮かべる。



「ねえ」



 少しの間が開いた後、美来が呆れたような声で呟き、振り返った。



「バズラス出てるっぽいけど……。水族館あたりで」



 美来が差し出してきたスマホの画面。

 「神城水族館前で暴動発生 サメの殺処分を要求」という臨時ニュースが大きくポップアップしていた。


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