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第二十八話 デート

 なんとか握手会を乗り越えた零聖だが、まだ一日は終わらない。一姫とのデートがあるからである。

 握手会で神経をすり減らし疲れたのでドタキャンしてやろうかとも思ったのだが、そうすればより面倒臭いことになるのは明白。

 やむなく諦めるとメイクを落とし、髪型を変え、着替えると一姫との待ち合わせ場所へ向かう。


 (しかし、何故だろうか?)


 零聖は首を捻った。向かっている道中で方々からの視線を感じるのだ。

 視線の主たちがイベント帰りのファンで自分がPhoinixだということがバレているのかと思ったのだが、イベント時とは服装も髪型も変えているため容易には気づかれないだろうと思うのだが……


 そんな心配をしていたのだが結局、最後まで誰にも声をかけられることなく、待ち合わせ場所であるシーズモール近くの公園に到着した。

 そこから更に少し歩くと中央に大きな木が植えられ、石畳で舗装された開けた広間に辿り着き、その木陰の下で日差しを避けるように先程会ったばかりの幼馴染が待ち人を待っていた。


 「おい、声かけようぜ」


 「いや、あれ確実に誰か待ってるだろ」


 周囲からそんな男の声が聞こえたが、そう思うのも仕方ない。

 一姫は暗めのチェックワンピースとフレアスカートに腰にはベルト、キャスケット帽で着飾っており、控えめだがその整った顔立ちを引き立てている化粧も相まってその姿は誰もが認める美少女だったからだ。

 そういうわけで周囲には声をかけるタイミングを伺っていた男達がいたのだが、そんな目論見はあっけなく崩れ去ることになる。


 「朱雀」


 待ち人――零聖がやって来たからだ。


 「えっ零聖くん?」


 そんな一姫の反応を見た男達はその目線の先に目を遣り、絶望する。

 そこには自分達では到底敵わないとサングラスをしていても尚分かるほど過不足なく整った顔を持つ銀髪の美青年がおり、あれが美少女の待ち人――彼氏に違いないと確信したからだ。実際は違うのだが。


 「オレに決まっているだろう。それ以外誰がいる?」


 「いや、学校の時と随分印象が違うからさ。ここに来るまでの間、ジロジロ見られなかった?」


 零聖は不思議そうにしているが、一姫が戸惑うのも無理はない。

 着替えた零聖は上げた前髪に白のカットソーとスキニーパンツ、サングラスという中々尖った格好をしており、普段の根暗な印象から一転して人気ホストのような雰囲気を漂わせていた。


 「視線は感じたが一緒に歩く奴に恥かかせるつもりはない以上、変な格好をしたつもりはないぞ」


 どうやら零聖=Phoinixとは気付いてないようが、発言から察するに一姫はこの格好を奇抜と思っているらしい。

 

 「へえ〜わたしのこと考えてオシャレしてきてくれたんだ。このこの〜」


 「止めろ。人を突くんじゃありません」


 そんな抗議の意を込めて零聖は一姫を睥睨したつもりだったのだが、逆に喜んだようにウザ絡みされる。


 「ところで〜……」


 次に一姫はニヤリと笑うとスカートの裾を持ち上げ、それを見せつけるように科を作ってくる。


 「どう、似合ってる?これ、今回のデートのために買った服なんだよ。何か感想は?」


 「ああ、似合ってる」


 「へ?」


 くるりと回りポーズを決めた一姫がその状態のまま固まる。そして、頬を紅潮させたかと思うとそれを隠すように手で覆った。


 「どうした?何か変なこと言ったか?」


 「いや……こんな素直に褒めてくれると思わなくて……」


 「オレをなんだと思ってるんだ、埋めるぞ?女性相手にこれくらいの気遣いは出来る」


 改めて不服そうに言う零聖を見て一姫は自分が転校してきてからの一週間を思い返すが脳裏に浮かぶのは先程まで一緒にお茶していた女の子を「バカ」と罵りまくる姿。あれを散々見せつけておいて「気遣いができる男」だと名乗るのは説得力に欠けるのではないだろうか。


 「……何だその顔は」


 そんな一姫の胸中に気付いたのか零聖が勘繰るような目を向けてくる。


 「何でもない。それより早く行こっ」


 そう言うと一姫は嬉しそうに零聖のカットソーを引っ張るとシーズモールへ駆け足で向かっていったのだった。


 ◇


 シーズモールは数多くの店舗が店を構えているとだけあって施設の規模は間違いなく大きいと言えるだろう。

 しかし、一姫の滞在していたアメリカでは日本のものが小さく見えるほどの巨大なショッピングモールがあると聞く。

 それ故に零聖は日本のショッピングモールを見た一姫ががっかりするのではないかと少し不安に思っていたのだが……


 「へえ〜、ここがシーズモールかあ〜」


 一姫は店に入ってから楽しげに周囲の店を眺めている。

 どうやら何処に行くかで退屈することはなさそうだ。


 「最初は何処に行くつもりなんだ?」


 「んー、服屋かな」


 「最初に行くのか?最近それ買ったばっかりなんだろ」


 「そうなんだけど、わたし日本(ここ)来たばっかりでアメリカの服しか持ってないからもっと日本の服欲しいなぁ〜って」


 「なるほどな。それで、お目当ての店はあるのか」


 「ん〜……そういうのは特にないけど零聖くんみたいな服が欲しいかな」


 「りょーかーい」


 一姫のリクエストに答え、零聖は行きつけのモード系ファッションの売っているアパレルへ案内する。


 しかし、そんな二人を少し離れたところから観察する人影がいた。


 「……見つけた」


 二人の移動に伴って人影は一定の距離を保ちつつもこそこそと身を隠しながら尾行していく。周囲には怪しまれることなくそれを熟す動きは素人のものではなかった。


 「あの女が……」


 零聖の隣にいる一姫に目を向けた。人影は手に持ったスマホを苛立ったように強く握りしめる。そこに映し出されていた画面には地図が表示されており、その上を点滅が二人の動きと一致する形で移動していた。

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