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瀬戸暁斗の短編集

友人の噂話

作者: 瀬戸 暁斗

 後悔先に立たず。

 このことわざは、まさに今この状況での私をよく表していた。


 話は数時間前に遡る。ある夏の日の放課後、私は友人からある噂話を聞かされた。

 それは、真夜中に時刻表に載っていない電車が走っているというものらしい。それも、毎日ではなく不定期に、何の前触れもなく。

 私は自分で見たものしか信じない性格で、その時は馬鹿にして笑っていた。そんな噂話誰が信じるのか、第一そんな電車が走っていたら、問題になっていると。


 だから私は、あの電車に乗った時までこの噂話を忘れてしまっていた。


 その日の夜、私は家にいた。普通の学生なら当たり前だ。

 そう、家にいたはずなのだ。

 しかし、気がついた時には謎の電車の中で座っていた。

 私が最後に記憶しているのは、テレビの音楽番組であまり私が興味のない昔の曲特集をやっていたことだ。

 どうやらテレビを見ながらソファーで座りながら眠ってしまったのか、そこからは覚えていない。

 ということは、今私は夢を見ているのか。でも、そういえば……。


「お嬢ちゃん、見ない顔だね」


「ひゃ!! 何!?」


 気づかない間に、横に座っていたお婆さんに声をかけられた。

 夢とはいえ、ここまで驚かさなくてもいいじゃない、そう思ったけれどお婆さんに失礼な感じがするので口に出すのはやめておいた。


「すまないねぇ、驚かせちまったかい?」


「いえ、大丈夫……ううん、ちょっとだけびっくりしました」


 私は軽く笑いながら答えた。幸いにも、お婆さんは気を悪くした様子はない。


「そうかい。なら一つお嬢ちゃん。この老婆の話を聞いてはくれんか?」


「いいですよ」


 お婆さんは語り出した。一人の女性の話を。

 その女性は美しく、優しい人だったそうだ。

 彼女の周囲には人が絶えず、笑顔が溢れていた。

 そんな彼女は周りから愛され、彼女も誰かの悪口を言うようなことは決してしなかった。

 だが、周りの全員が彼女の味方だったわけではなかった。仮に百人の人がいれば、一人はアンチがいる。彼女にとっても例外ではなかった。

 その後、彼女がどうなったかはわからないとのことだ。


「話を聞いてくれてありがとうね、お嬢ちゃん。代わりと言ったらなんだが、何か相談にでも乗ろうか?」


「そうですね……こんな話を聞いたんですけど……」


 私はお婆さんに、今日友人から聞いた電車にまつわる噂話を話した。


「そうかい……」


「で、お婆さん。この電車はどこに向かってるんですか?」


「……どこにも」


「え?」


「どこにも向かってやしないのさ。この電車はね、『呪い』なんだよ!」


 私は早くこの電車が夢なんかじゃないと、気づくべきだった。いや、気づかないフリをしていただけなのかもしれない。現実に目を背けて。周りの人の感情にも目を背けて。

 ここは『呪い』の電車。

 私もこのお婆さんも誰かに恨まれていたのだ。無意識のうちに誰かを傷つけていたのだ。

 だからここへと送られた。恨みは呪いとなって、私たちをここへ縛りつけるために。



 今日も人知れず、電車は進み続ける。憎悪を乗せて。

 皆さまも人間関係にはお気をつけください。

 あなたを恨む人物は、すぐ近くにいるかもしれません。

 この電車が、回送電車となることを祈って。

どうでしたか?

ホラーのつもりで書いたんですが……


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