相変わらずの毎日
相変わらず二人とも、何もないままで済んでいる。
学校も再開して、感染におびえつつもマスクをつけうがいや手洗いに気を付けることでしのいでいる。オンライン授業を導入したり分散登校をしたり、やることは一緒だ。
そして、閉塞感があふれる学校生活。イベントは何もなし。浮いた話一つなし。占いは外れた。
相変わらずナオミは恋の相手を探している。いや無理だろうお前、このご時世でどうするってんだ?
出会いなんて求めていたら、別の物に出会っちまうだろう。
私の忠告に耳も貸さず、ナオミは彼女なりに積極的に出かけているようだ。そんな友達を持つ人の身にもなって欲しい。こちらはなるべく無菌室に居ようとしてるのに、彼女は積極的に外に出かけるんだから。ロシアンルーレットの誤爆でも来そうな生活態度だった。
あ、一人忘れてた。底なし沼けんじの事。相変わらず売れない芸人のまんまだ。売れるとは思っていない。うちの家族はもちろん、ナオミにしろ、担任の小笠原にしろ誰一人として売れるとの予想は立ててない。そもそも、うちの担任がなぜ彼の事を知っているかというと……行ったんだよネタ見せに。
「担任にネタ見せてどうすんだよ」と突っ込んでやったら「顔を売るのも仕事の一部」だと語っていたが。特にコネクションのなさそうな生物教師に見せてもねぇ。別に小笠原お笑い好きでもなんでもないし。
テレビだってモニターで配信してるぐらいだからお笑い芸人としてもやりづらいだろうって思って見てる。そりゃ彼なりに努力はしてるだろうけど方向性が迷っているというか。新ネタとしてモニター配信あるあるネタとか始めてはいるが需要あるのかって言いたいぐらい。あとは、マスクをしてると美人に見えるネタとか。いやみんな思っているだろうそれぐらい。
娯楽がすべてなくなった世界で、何故か元気なナオミはおいておいて、私自身はただ日々の勉強をこなし、適度に散歩に行き後はひたすら読書するしかなかった。
とかやっていたら、散歩友達ができてしまった。芸人ではないよ。たまたま行き先が一緒でよく合う同年代の男性で、マスク越しに対話をしている。だいたいたわいのない事を言う。お互いマスクの下は知らないでいる。ただそれだけの仲。だけど、こんな風に知らない人と話すなんてことは今までなかったような気がする。だいたい声かけたのは私だ。
棚橋くんは歩きが遅いので、細い道だと詰まってしまうので、「ちょっと」と声をかけてゆずってもらった。別に後ろが男性でも気にならないのでそのまま歩き続けていたら、何かつけている感があったので思い切って聞いてみた。
「そこの角で曲がりますから」
「じゃあ僕はまっすぐ行くね」
どうやらストーカーじゃなかったようだ。セーフ。
何故か、その安心感からか話を続けるようになった。
ふと思って脳内会議をしてみる。
「棚橋のこと好き?」
「まだよくわからない」
自分としてもいつもと反応が違うことが分かった。新鮮だった。