第61話 氷を破壊すると氷に閉じ込められた人が復活するのはファンタジー七不思議に入れるべき
家を出ると、とても寒かった。
街のあちらこちらに霜が降りている。
「さっむ! もう冬!?」
「ちがう、アイツが魔法使ってるからだ」
エリトリナがこっち、とギルドと街の正門あるの方向に指を指す。
街の中心に向かうほど気温が下がっていき、中心部には所々に氷柱ができていた。
「これは、酷い……」
進むごとに氷柱が増え、そのなかには人が閉じ込められたものもある。
「私がいない間に、こんなことに……!」
エリトリナは、凍った人を見て絶句する。
そして、意を決したように魔法の詠唱を始めた。
「手荒だけど、早く解凍しないと死んじゃう。"フレア"!」
エリトリナの杖から炎が走り、氷の集団を包み込む。
氷が外側から溶けていき、次々閉じ込められた人が中から出て、倒れていく。
「本当なら病院とかに運ばないといけないけど、そんな余裕なんて……」
エリトリナが困っていると、周りの建物のドアが続々と開いた。
それから、30代くらいの男性が近寄って来て
「よろしければ、我々が安全な場所まで運びます。ここは私たちに任せて、ギルドに向かってください」
と言い、他の人々に声を掛け、解凍したての住人達を手分けして運び始めた。
「街の人々が協力してくれてる。早く行こう」
再び、俺達はギルドの方向へ進み始めた。
進めば進むほど、やはり気温が下がる。
アイツに近づいているのだろう。
寒さで体が震え出す頃には、雪が降っていた。
「うぅ、寒い!もうすぐギルドだが、寒すぎるんじゃないのか!?」
「エリトリナ、さっきの魔法で温めてくれ。このままじゃあ戦えない」
「そんな理由で魔力を消費したくないって!」
「もしかしたら、たどり着く前に凍って動けなく……」
パリスが、道の右側を見て固まった。
何人もの冒険者が、大きな氷の塊の中に入っている。
剣を構えた者、頭をかかえ地面に座り込んだもの。
凍りつかされたその瞬間を、まるで写真のごとく切り取ったように凍結されていた。
「冗談、言ってる場合じゃないね」
巨大な氷の塊の上から、真っ白な霧が降りてくる。
俺たちは、剣や杖をそれぞれに構えた。
「キシシシ、遅かったねぇぇ。そんなことより、ネウレアは居ないのぉ?」
俺たちを散々苦しめたあの金髪が、ゆっくりと奥から出てきた。
両腕から氷の刃を出し、背中からは大量に氷のトゲが生えている。
そして女が地面に飛び降りると、着地した地点に大きな氷の結晶ができる。
「キシシシ、やっぱり氷は綺麗だよねぇ。人間も、こんな風に変わることなく留めてくれる。みんな死んじゃったかもしれないけどさぁ」
「ずいぶんとお喋りな舌だな、脂がのっていてよく燃えそうだ」
パリスは、表情を変えることなくそう吐き捨て、突撃した。
最低でも50メートルはあっただろう。
だが、パリスは一瞬で距離を詰めて一太刀を浴びせる。
しかし、女がけだるげに顔の前で交差させた両腕の氷に阻まれ、甲高い音だけを響かせる。
パリスの剣と女の氷刃が交わったままに、鍔迫り合いになる。
「私がミカミやエリトリナみたいに温厚と思うなよ。氷塊ごと、貴様を斬り捨ててやる」
「何怒ってるの~? 暴力系ヒロインはモテないよぉ?」
「余計なお世話だ!」
パリスは氷刃を蹴る。
女が後ろに後退ったのを見計らい、目にも止まらぬ連続斬撃を繰り出した。
女は大きく後退し、息切れを起こしている。
「キシシシ、こんな所にこんなヤツがいたんだぁ」
「距離をとれば逃げられると思うな! "ブレイド・ブラスト"!」
左足を引き、パリスが横凪ぎに剣を一閃させる。
剣から白い斬撃が飛び、金髪の腹をを氷の刃ごとあっけなく切断した。
……凄い。
正直言って、俺はパリスをなめていた。
「ハァハァ……復活とかしてくるなよ。エリトリナ、まだ助かるかもしれない。あの氷、今すぐ解凍してくれ」
「あっ、うん。炎と灰の精霊よ、汝らに……」
呆然としていたエリトリナは、気を取り直して詠唱を始める。
パリスは顔を紅潮させたまま、息を吐いて納刀した。
「人を呼んでくる。俺たちだけだと運べないからさ」
一言、声をかけて来た道へ振り替えろうとした、その時だった。
「その心配、いらないよぉ」
上半身だけになった金髪が笑う。
胴体から氷の足の四本作り、倒れている下半身と合体した。
「な、まだ生きていたのか!?」
「こんなので死ぬわけないでしょぉぉ?そんなことより、もっと遊ぼうよぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
体を繋ぎ合わせた女の全身が、氷で覆われていく。
そして、両腕からは氷の大剣を出し、全身を分厚い氷の装甲で覆った、巨大な怪物になった。
作者のじょーかーOtukaです。
活動報告で既に発表しておりましたが、明日11/1をもちまして、わたくしじょーかーOtukaは活動休止とさせていただきます。
活動再開につきまして今のところ未定ですが、再開する際には活動報告とSNSにてご報告させて頂きます。




