第53話 ついにタイトルでもパロディするようになってしまったよ
「キャァァァァ!」
上から覗き込む金髪が、どんどん遠くなる。
もうダメとネウレアが思ったその時、たまたま下に生えていた木の葉っぱがクッションとなって、致命傷は免れた。
「キシシシ、なんだ、死んでないんだぁ」
だが、金髪が登山道を降り始める。
たどり着くのも時間の問題だろう。
地面に仰向けになり絶望していると、白い物が体を跨ぐ。
「やぁネウレア。昨日ぶりだね」
それは湖で契約を持ち掛けた、あのキュ○ベエだ。
木の前にある、一段高い岩にお座りし、無表情のままに眺める。
「契約はしないって言ったのに」
「それはそうだったね。でも、それでいいのかい? 君がそのまま寝ていても何も変わらない。ただ、アイツが来て自分を○すのをただ待つだけなんじゃないかな?」
「それは……」
「君が願えば、助かることもできるんだよ」
(いやらしいことを言う獣。
でも、願いを一つ叶えることができる、ということは、私が契約すれば……)
「契約をすれば、彼らを蘇らせることもできるし、逆にあの金髪を……」
「……」
話の途中に、無言で、小さく頷いた。
◇
「キシシシシシ、この辺りに落ちたはずなんだけどぉ」
氷の刀をそのままに、金髪が少女を探す。
すると、草むらが突然、ガサ! と音を立てて動く。
「そこにいるのぉ?」
金髪が、草むらを横凪ぎに斬り倒す。
が、そこにいたのは、なんの変哲もない白いウサギが真っ二つになっていただけだった。
「はずれぇ」
女性は、先ほど来た道の方へ向く。
「キシシ、まぁどうせ逃げたりするよねぇ。また今度にしようかなぁ」
そして、街へ戻ろうと歩き出した。
その時、上から大きめの石を持った少女が落ちてきて、頭に石を振り下ろす。
「ぐはぁ!」
金髪の女性はそのまま前に倒れ、その背中にネウレアが跨がり、石で何度も頭部を殴る。
「キャハハハ、よくも、よくもよくもよくもぉぉぉぉ!」
石の先端は、だんだん紅くなる。
そして、金髪のうめき声がだんだん小さくなり、やがて、声が消えて無くなった。
「そろそろやめなよ。彼女、死んでしまうよ」
「でも、コイツは……!」
「言いたいことはわかるよ。でも、人○しを憎むのに、君が人○しをするのは、どうなのだろうね」
「……」
ネウレアの手が止まる。
そして、石を地面に置いた。
「君はさっき、何を願ったんだっけ?」
「うぅ……」
「泣くなよネウレア。君はついさっき、願いを叶えたばかりじゃないか」
◆
「このように、私はアイツと契約したの」
夕焼けが沈み、窓を締め切った仲間の寝ている馬車の中。
ネウレアの話はそこで終わった。
「ネウレア……」
「これが、私がこうなった理由。今では後悔もしているけど」
ネウレアは、カーテンを閉めた窓の横から外を覗き、毛布を自分に掛けて仰向けになる。
「外がもう暗いから、先に寝るね」
そのまま、ネウレアは寝てしまった。
「お客さん、まだ寝ないのかい?」
寝ている馬よ手綱を持ったまま、座っている車掌が声を掛ける。
「もうちょっとだけ、起きていようと思います」
「フフ、夜更かしは体に悪いですよ。まぁ、こんなに囲まれたら、興奮して寝られないのも当然ですけどもねぇ」
「ちょっ、そんなんじゃないですよ」
車掌は手綱を置き、席の上で横になるような体勢になる。
「まぁ別に、お客さん方がそうなってもいいけど。ただし、もしもそうなったら、わたくしが寝られないので、声を抑えて頂きたいですね」
「だからそんな関係では、ありませんから」
「ハハハ、それではお先におやすみなさい」
車掌は、帽子を顔に被せ、就寝した。
◇
それから、数日。
とんぼ返りで乗り込んだ馬車が、俺たちの街に到着した。
「ふぅ、やっとついたぁ」
エリトリナが、背中を伸ばす。
俺達は荷物を取り出し、馬車を出る。
「やっぱり、我が家が一番だよ」
「ブライバス、まだ街だしお前の家じゃない」
まぁ、住み慣れた街が一番良いのかもしれないな。
しかし、その理論だとブライバスはもうこの街に住み慣れたのかよ。
俺も含めて長く住んでないだろ。
「さてさて、家帰ったら何する?」
「今日1日はゆっくりしたいなぁ~」
他愛もないお喋りをしながら、ネウレアの家に帰っていく。
「帰ったら、アメスが待ってたりして」
「開けた瞬間に、我が物顔でいたら、どうひてやろうか」
なんてフラグ立てるのはいけない。
本当にいたりするからな。
とか思いつつも、ネウレアの家が見えるところまで来る。
「やぁミカミ、お帰り」
本当にいるし。
アメスは玄関の前で、手を振りながら待っていた。
「あぁもう、嫌な顔に会った」
「そう言わずに。ほら、ネウレアもお帰り――と、ゴメンよ。今は、遊んでる暇ないからね」
ネウレアが反応するのをパリスが止める。
ん? 普段なら、喜んで刺されるのに。なぜなのだろう?
「そうそうミカミ、キミに会わせたい人がいる」
「えぇ、お前みたいなヤツだったら嫌なんだけど」
「そんなんじゃないって」
はぁ~どうしたものか、とため息混じりに頭を抱える。
どっちにしろ、自業自得なのだが。
「まぁ、正確にはだね」
アメスが顔を上げる、とさっきまでとは違い、真剣や表情になった。
「ミカミ、ご主人様がお呼びだ」
次回もよろしく!




