表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/61

第53話 ついにタイトルでもパロディするようになってしまったよ

「キャァァァァ!」


 上から覗き込む金髪が、どんどん遠くなる。

 もうダメとネウレアが思ったその時、たまたま下に生えていた木の葉っぱがクッションとなって、致命傷は免れた。


「キシシシ、なんだ、死んでないんだぁ」


 だが、金髪が登山道を降り始める。

 たどり着くのも時間の問題だろう。


 地面に仰向けになり絶望していると、白い物が体を跨ぐ。


「やぁネウレア。昨日ぶりだね」


 それは湖で契約を持ち掛けた、あのキュ○ベエだ。

 木の前にある、一段高い岩にお座りし、無表情のままに眺める。


「契約はしないって言ったのに」


「それはそうだったね。でも、それでいいのかい? 君がそのまま寝ていても何も変わらない。ただ、アイツが来て自分を(ころ)すのをただ待つだけなんじゃないかな?」


「それは……」


「君が願えば、助かることもできるんだよ」


(いやらしいことを言う獣。

 でも、願いを一つ叶えることができる、ということは、私が契約すれば……)


「契約をすれば、彼らを蘇らせることもできるし、逆にあの金髪を……」


「……」


 話の途中に、無言で、小さく頷いた。


 ◇


「キシシシシシ、この辺りに落ちたはずなんだけどぉ」


 氷の刀をそのままに、金髪が少女を探す。


 すると、草むらが突然、ガサ! と音を立てて動く。


「そこにいるのぉ?」


 金髪が、草むらを横凪ぎに斬り倒す。


 が、そこにいたのは、なんの変哲もない白いウサギが真っ二つになっていただけだった。


「はずれぇ」


 女性は、先ほど来た道の方へ向く。


「キシシ、まぁどうせ逃げたりするよねぇ。また今度にしようかなぁ」


 そして、街へ戻ろうと歩き出した。


 その時、上から大きめの石を持った少女が落ちてきて、頭に石を振り下ろす。


「ぐはぁ!」


 金髪の女性はそのまま前に倒れ、その背中にネウレアが跨がり、石で何度も頭部を殴る。


「キャハハハ、よくも、よくもよくもよくもぉぉぉぉ!」


 石の先端は、だんだん紅くなる。

 そして、金髪のうめき声がだんだん小さくなり、やがて、声が消えて無くなった。


「そろそろやめなよ。彼女、死んでしまうよ」


「でも、コイツは……!」


「言いたいことはわかるよ。でも、人(ころ)しを憎むのに、君が人(ころ)しをするのは、どうなのだろうね」


「……」


 ネウレアの手が止まる。

 そして、石を地面に置いた。


「君はさっき、何を願ったんだっけ?」


「うぅ……」


「泣くなよネウレア。君はついさっき、願いを叶えたばかりじゃないか」


 ◆


「このように、私はアイツと契約したの」


 夕焼けが沈み、窓を締め切った仲間の寝ている馬車の中。

 ネウレアの話はそこで終わった。


「ネウレア……」


「これが、私がこうなった理由。今では後悔もしているけど」


 ネウレアは、カーテンを閉めた窓の横から外を覗き、毛布を自分に掛けて仰向けになる。


「外がもう暗いから、先に寝るね」


 そのまま、ネウレアは寝てしまった。


「お客さん、まだ寝ないのかい?」


 寝ている馬よ手綱を持ったまま、座っている車掌が声を掛ける。


「もうちょっとだけ、起きていようと思います」


「フフ、夜更かしは体に悪いですよ。まぁ、こんなに囲まれたら、興奮して寝られないのも当然ですけどもねぇ」


「ちょっ、そんなんじゃないですよ」


 車掌は手綱を置き、席の上で横になるような体勢になる。


「まぁ別に、お客さん方がそうなってもいいけど。ただし、もしもそうなったら、わたくしが寝られないので、声を抑えて頂きたいですね」


「だからそんな関係では、ありませんから」


「ハハハ、それではお先におやすみなさい」


 車掌は、帽子を顔に被せ、就寝した。


 ◇


 それから、数日。

 とんぼ返りで乗り込んだ馬車が、俺たちの街に到着した。


「ふぅ、やっとついたぁ」


 エリトリナが、背中を伸ばす。

 俺達は荷物を取り出し、馬車を出る。


「やっぱり、我が家が一番だよ」


「ブライバス、まだ街だしお前の家じゃない」


 まぁ、住み慣れた街が一番良いのかもしれないな。

 しかし、その理論だとブライバスはもうこの街に住み慣れたのかよ。

 俺も含めて長く住んでないだろ。


「さてさて、家帰ったら何する?」


「今日1日はゆっくりしたいなぁ~」


 他愛もないお喋りをしながら、ネウレアの家に帰っていく。


「帰ったら、アメスが待ってたりして」


「開けた瞬間に、我が物顔でいたら、どうひてやろうか」


 なんてフラグ立てるのはいけない。

 本当にいたりするからな。


 とか思いつつも、ネウレアの家が見えるところまで来る。


「やぁミカミ、お帰り」


 本当にいるし。

 アメスは玄関の前で、手を振りながら待っていた。


「あぁもう、嫌な顔に会った」


「そう言わずに。ほら、ネウレアもお帰り――と、ゴメンよ。今は、遊んでる暇ないからね」


 ネウレアが反応するのをパリスが止める。

 ん? 普段なら、喜んで刺されるのに。なぜなのだろう?


「そうそうミカミ、キミに会わせたい人がいる」


「えぇ、お前みたいなヤツだったら嫌なんだけど」


「そんなんじゃないって」


 はぁ~どうしたものか、とため息混じりに頭を抱える。

 どっちにしろ、自業自得なのだが。


「まぁ、正確にはだね」


 アメスが顔を上げる、とさっきまでとは違い、真剣や表情になった。


「ミカミ、ご主人様がお呼びだ」

次回もよろしく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ