第49話 主人公は最終回まで基本的に死なないか、復活する生き物
「……うぅ、ここは……」
光が眩しい。
ゆっくりと目を開けると、俺は白い部屋にいた。
それはちょうど、異世界に送られる前、俺が現世で死んだ時の……
「やぁ三上君。元気だったかい?」
久しぶりに聞く、ムカつく声。
自称神のじいさんが、屈んで俺の顔を覗き込む。
「悪いな、死ぬほど元気だよ」
「それはよかった。じゃなくて、死んでいるではないか。元気など関係ないのではないか?」
聞いたのはアンタだけどな。
というか、さらっと俺死んでない?
「当たり前じゃろう。ちなみに死因は失血死じゃぞ」
初めての時もあったよな、現世での処理だけど。
毎回死因を知らせてくるのかよ。
死にゲーの仕様みたいだ。
「安心しろ、君はどうせ生き返る――主人公なのだからな。物語の途中なのに主人公死亡で完結とか、マジであり得ないからな」
それを主人公本人に言うのもあり得ない。
あと、主人公死亡での強制エンドが無いってことは、老衰や栄養失調で死亡の場合はどうなるんだ?
「まぁまぁ考えてないで、ゆっくりしていきなさい。君たちと違って、私は短編の範囲でしか出番が無かったんだ。少しでも長く出させてもらいたいからな」
一番いらないキャラだから、出番が無いんじゃないのかよ。
「それよりも三上君、君は今の今まで、何か忘れているのではないのか?」
何をだよ。
序盤にある伏線の確認とか、要らないからな。
「いや伏線ではなくて、せっかくあげたのになぁ」
コイツに何かもらったっけ? 捨てなければ。
「いや、君にステータス・オープンをあげたのに、まるっきり使ってないではないか」
あぁ、ごめん。
使い所が見つからん。
俺に期待するなら、少なくとも魔剣くらいのブツを持って出直して来い。
「はぁ、異世界転生した者は、もらった能力を上手く活用することが重要なのに……第3話以降は話にすら出てこないではないか」
ステータスをどう使えと。
「ほら、君を殺害したあの相手、これでは正体がわからないままではないか。能力を使えば、あのように死ななかったのかもしれぬのに」
殺意メガもりな相手の前で「ステータス・オープン!」なんてできねぇよ。
「というか、なんでワシは君のモノローグに回答せねばならん!普通に言葉にせい!」
そんなことしたら、今回の本文から地の文がほとんど消えるぞ。
「もう、神に逆らう民なぞ復活させなければ良かったのう」
まだしてない。あと、お前の扱いは『自称神』だから。
それよりも、時間があるなら聞くべきことがあった。
コイツの話は、ストーリー上で何個かの矛盾を生んでいる。
「そういえばよぉ、ネウレアのことを『この世界のバグ』みたいに言ってたよな。アイツの話によると、バグってよりパロディでなってるんだけど」
神は一段高い所に豪華な椅子を作り、こちらを見下ろすように座る。ムカァ。
「はて、君はパロディを正常だと思うのか? 健全な異世界には、キュ○ベエなど出ないぞ」
俺が来たのは健全な異世界じゃなかったぞ。
魔族が夜中に街へ侵入して、アイスをこっそり食べる世界なんだぜ。
「そんな屁理屈が聞きたいのではない。いや、そんな屁理屈モノローグを読みたいのではない」
キャラの癖にモノローグを読むな。
「だいたい、ネウレアは凄く苦戦していたけど、本当に最強なのか?」
「誰がネウレアを最強と呼んだ?」
第一話を見直してこい。
ネウレアはあのおっちゃんのお墨付きだぞ。
あのおっちゃんが何者かは知らないけど。
てか、そうじゃないし、ネウレア最強ではないと、あらすじ詐欺になってしまう。
「まぁ半分冗談じゃよ」
半分は本当なんだな。
「半分冗談というのは、ネウレアは常に最強ではないということ。お主以外の男には、凄く反応していたじゃろ?」
言い方に悪意があるが、確かにドラゴンやゴーレム(雄か?)の時は特に凄かった。
しかし、女性相手になると、ネウレアは途端に弱くなった。
現に、ヒメアントの時はビビっていたし、先ほどの金髪には、傷一つつけることができてない。
「ワシの研究からするに、ネウレアは男相手には最強だが、女性を相手取ると別に最強ではなくなる。これはたぶん、ヤンデレが発動するか否かの違いじゃ」
「条件付きの最強って、なんだかパチモン掴まされた気分なんどけど」
「これが叙述トリックじゃよ。いつ、どこで、だれが、どのように最強なのかを意図的に言っておらんかったからの」
言ってないだけ詐欺だろうが。
というか、下手したら今思い付いたその場しのぎかもだ。
最強は普通、恒常で最も強いことを表す言葉ってイメージあるじゃん。
てか、意味がほぼそうじゃん。
「話を戻そう。ネウレアがそれになったのは、あの魔法少女アニメのパロディネタという、世界のバグからじゃ」
「ネウレアは害獣と契約してないって言ってたぞ」
「三上君は『その時に』という前置きをして聞いていただろ?」
あーも、なろー。
いきなり死んで、その後に適当などんでん返しするなよぉ。
「ま、そんなもんじゃ。ちゃんと能力を使い、世界を救うのじゃぞ」
話をまとめるな!
てか、忘れていたことがあった。
世界救う前だが、一発殴らせろ。
「おっと怖い怖い。それではまた、武運を祈る!」
「ちょっ卑怯者!」
あの時のように、意識がボヤける。
あぁもう、自称神を殴り損ねた!
次こそは……必ず……一発ドギツイのを喰らわせてやる!
次回もよろしく!




