第43話 ライトノベルは残念系ヒロインの宝庫
「家族で温泉旅行に行った時のことだった。その夜、私だけ寝られなくて、こっそり外に出たの」
◆
少女が、こっそりと宿を出る。
そして、並べられた石の上を歩いて行くと、蒼い湖に出た。
それから階段を上がり、湖を見渡せる高台に上がると、何やら白いウサギのような生き物が柵の上にいる。
「やぁ、ネウレア。ボクはキュ○ベエ」
その生き物はが振りかえると、『ω』のような口をしており、
著作権の問題からだろうか、目に黒のりがついている。
その生き物は、軽快な足取りでネウレアの正面にある木製の机に来た。
そして、
「ボクと契約して、ヤンデレに……
◆
「いやダメだろぉぉぉぉ!」
パッアンと、思わず馬車の中央にある机を叩いてしまった。
「ちょ、どうしたのだミカミ!ネウレア、それでキュウ○エとやらとは契約したのか!?」
なんだこの唐突なパロディは!
色々な方面から怒られる!
「ミカミ、本当にどーしたの? まさかそのキュウベ○ってのを知ってるの?」
知ってるも何も、有名だ。
それより、こっちの世界でなぜそんな話が出てきたのかが、まったくの謎ではある。
「ネウレア、本当にその○ュウベエってヤツが出たのか?」
「あやふやだから、はっきりとは覚えてない」
なんだよそれ。
まぁしかし、何か白いのが出てきて、ネウレアをヤンデレにしたのは確かだが……
「ねぇミカミ。そんなことより、ミカミの話を聞かせてよ。ミカミってあまり聞かない名前だし、出身とかはどこなの?」
おっと、俺について突っ込まれてしまった。
「俺? 日本っていう東の国なんだけど……ここから行くのは、かなり難しいんだよねぇ」
すると、なぜかブライバスが、ガバッといった感じにこちらに顔を向ける。
「ニホン? 今、ニホンって言った?」
「そうだが、お前知ってたりするのか?」
ヘッドバンのような激しさで頷き、思い出すような表情をする。
「あれは、昔から村に伝わる伝承なんだけど……なんだっけ?」
忘れたのかよ。
こんな大事な場面で「記憶にございません」とか、どうなってんだよ。
「ごめん、聞いたのが子供の頃だったし、私そういうのにスレててさ。なんかの昔話の中で、ニホンってのが出てきたの」
「ほぅ、魔族の伝承にそのような所が出てくるのか。だが、私はニホンという場所を聞いたことがないな……」
べつに、今となっては簡単には帰れないし(そもそも、どっかの自称神が俺を死んだこととして、処理してやがるからな)、特別関係あるわけでもない。
よって、俺の話は終わり!
「まてまてミカミ、まだ話は終わっていないぞ」
「お客さん、そろそろ飯なんで馬車止まりますよ」
「あ、はい了解です」
ここで飯タイムの合図。
話はいったん(強制的)に中断する。
「……パリス、あれだけ騒いだのに、まだエリトリナが寝ているぞ」
「エリトリナを甘く見るなよ。夜は眠りが浅いが、昼寝は最強と言えるほど深いからな」
昼ご飯を食べるので、エリトリナを起こさないといけない。
「パリス、後よろしく」
「あ、私もパスね」
「よろしくねパリス」
「えぇ! なぜ私なのだ、エリトリナは起こすと機嫌が悪くなるのだ。というか、みんなで起こせば良いだろう」
悪いなパリス。
犠牲は一人で良いんだよ。
◇
「うっ……うぅ……!」
犠牲者一名。
大丈夫、本人はそこまで悪くはない。
「カレー、おいしいね」
起こされてガチ切れしていたエリトリナだが、カレーを食べられてご満悦だ。
「エリトリナ、俺達けっこううるさくしてたのに、よく寝られたよな」
「うーん、寝ている時のことはわからないなぁ。とりあえず、ごめんねパリス」
ごめんねで済むようなことじゃなかったよな。
あれだ、エリトリナは暴力系ヒロインだ。
エリトリナをやったので、いちおうここのメンバーをキャラを分けすると、ネウレアはロリヤンデレでパリスは単細胞。
ブライバスはボイン愚痴魔族あたりが妥当かな。
よく考えたら、俺ハーレムかよ。
しかしながら、狭い馬車の中で、たくさんの女性と同席という夢のようなシチュエーションだが、不思議と良い気がしない。
「ミカミ、今度はなんだ? 微妙な顔しているが」
「いや、普通に考えたら最高なはずなのになぁって。なんでだろ」
「確かに、ミカミさんって欲が無いっていうか、普通ならこのメンバーにもう少し喜んでも良いんじゃないの?」
「そうそう、ミカミってサゲサゲだよね」
理由がわかった。
残念系ヒロインしかいないからだ。
そういうのは、自分で言うものではないぞ。
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