第42話 旅行とか最近行って無いなぁ、と言うと大抵の人は実は俺もってなるのでは?
「ただいまー」
ネウレアの家に帰宅。
リビングに入ると、ネウレアがトコトコと歩いて来る。
「お帰り。もう帰ってきたの?」
「予定より早く終わってさ。エリトリナは?」
「まだだけど……」
すると、先に帰ったはずのエリトリナが遅れて帰って来た。
「ただいまぁ。あ、みんな早いね」
「『みんな早いね』って、なんで先に帰って行ったのに遅いんだ?」
「ちょっと寄り道してたの。ここらへんに入れたはず……」
エリトリナはバッグをゴソゴソと探り、一冊の薄い本を取り出した。
旅行のガイドブックのようだ。
「これ! ネウレアちゃん、火山って見たことある?」
本をパラパラと捲り、お目当てのページを見つけると、広げて見せてきた。
火山が噴火している、迫力の絵が載っていて、それを見たネウレアは目を輝かせる。
「予想通り、気に入ってもらえたね。ネウレアちゃんも行きたいでしょ」
「うんうん、うんうん」
いっぽうのパリスは、頭を押さえながらため息をついている。
「はー、金はどうするのだエリトリナ。特別報酬と言っても、一人分ではみんなで旅行するほどはもらえないぞ」
「何言ってるのパリス。ミカミと私達、あとネウレアちゃんのはした金をを足せば、ちょっとくらいなら大丈夫」
特別報酬を、はした金呼ばわりしてる。
というか、俺の金も使われるのかよ。
「エリトリナ、俺も出すのか?」
「当たり前でしょ。今、ミカミは誰の家に住んでいるの?」
「ここ、というかネウレアの家だが……」
「家賃、払ってる?」
「……払ってないです」
「じゃあせめて、こういう時のために使わないとねぇ」
はい、正論ですね。
特別報酬が、観光に飛ぶことが決定した。
「じゃあ、明日から準備始めようね」
勝手だなぁ。
まぁ、たまにはこういうのも良いか、と割りきろう。
まだこの世界に来て1ヶ月すら経っていないが、問題は無いだろう。
◇
「よし、みんな準備は良いね」
エリトリナが先導し、街の馬車乗り場へ来ていた。
周りには商隊の人達をよく見かけ、この街の特産品などを積んでいる。
俺達は、金はそこまで無いのだが、護衛がしっかりといる乗合馬車を取り、なるべく平和につけるようにした。
目的地まで旅は、四泊五日。まぁまぁな距離だ。
荷物を預けて馬車に乗り込む。
「じゃあ、出発しますね」
カラカラと軽快な音を立てつつ、発進していく。
馬車用の出入口から街を出て、魔族が来た森と反対方向へ。
そういえば、ブライバス達との戦いの後に知ったのだが、この街の真正面を除いて森が無いらしいのだ。
だから律儀に、魔族は正々堂々と正面から来たのか。
と思うと同時に、なぜブライバスの部下が迷子になったのか、という謎が更に深まった。
本当、真っ直ぐ直進なら地図要らないよな。
方位磁石が壊れてるのか?
いっぽうのネウレアやパリスは、城壁に囲まれた街を窓から身を乗り出して見ていた。
ずっと住んでいたいたからか、名残惜しそうだ。
で、一番乗り気のエリトリナは……
「Zzzz」
既に寝てやがる。
このやろう、イタズラしてやろうか。
「ミカミ、どうした?」
寝てもいないし、かといって外を見たりもしていないのは、なぜか強制参加となったブライバス。
そういえば昨日、報酬無いのに今回の金を出すことになって涙目だったな。
「いや、あれだけハイテンションだったのに、もう寝てやがってさ」
「確かに切り替えが凄い。てか、私も参加なんだね」
「みんなで行きたかったんだろ。いちおうこの世界では魔族に対する何かはあんまりなんだろ?」
「『この世界では』って、ミカミは異世界なのかよ。ま、そういうのが無いのはありがたい話かな」
そして、昼頃には街が見えなくなった。
あるのは、ずっと広がっている草原と遠くに見える山という景色だけ。
ネウレアもパリスも飽きてしまい、カーテンを閉めてしまった。
「なんか暇だね。もう少しでお昼だけど、何する?」
「暇だなぁ。そういえば、ネウレアって何でヤンデレみたいになったんだ?」
そういえば聞きたいこと。
家族のことを聞こうとも思ったが、いきなりそれに触れるのは気が引けたので、とりあえず。
これからの俺に関わるかもしれないことであるので、それなりに重要ではあるけど。
「私がヤンデレになった理由? きっかけなら教えられるけど」
「それでも良い。いちおうこれからの俺達に関わるかもだし」
うーん、とネウレアは唸る。
そして、言いづらそうに切り出した。
「……あれは確か十二歳くらいの頃だったなぁ」
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