第38話 防衛戦は守れば勝ちだけど、圧勝しないと何となく物足りない気がする
ダムドと入れ違いに、疲れた顔のブライバスが帰ってきた。
「はぁ、待たせたな。ダムドが走って行ったが、何かあったのか?」
「何かは無かったけど」
「そうか」
ブライバスは倒れ込むように椅子に座る。
「とりあえず、兵は退く。ダムドが既に指示していたらしいしな。それで、なのだが」
机に両肘を置き、手をあわせ握る。
そんな、大統領みたいなポーズを取り、こう切り出した。
「和解には、2つほど、追加の条件がある」
ブライバスは一枚の紙を取り出した。
「一つは、今回の戦いについて両者それぞれの罪を不問にすること。要は、互いに今回の戦犯を捕らえて刑に処さないことだ」
俺にそのまま紙を渡す。契約書だ。
てか、契約書持ってるってことは、まさかここから村まで戻ったのかよ。
「そしてもう一つ。ゴーレムの破片は我々が貰う。というか、私の自腹だからな」
ブライバスは涙目だ。
そもそも、自腹兵器を投入すんなよ。自腹で兵器作ることも、だが。
「わかった。ギルドに報告するが、できるだけ最善を尽くそう」
「そう言って貰って嬉しいぞ。はぁ……帰ったら何と言われるんだろう……」
傀儡魔族は、安心と不安が入り交じったような表情になった。
安心と不安が入り交じったってなんだよ。
それとブライバス、ため息をつくと、幸せが逃げるらしいぞ。
俺は紙を片手に持ったまま席を立ち、その場を後にしようとした。
すると、ブライバスは思い出したかのように口を開く。
「そうだミカミ、今度アイス送ってくれ」
仕方ない。
アイス送ってくれてやるか。
◇
その後、ギルドは正式に和解を決定した。
アメスには早速(強制的に)呪いの解除を開始させた。
また、和解条件に伴い、今目の前でゴーレムの破片が魔族の兵士によって集められている。
朝になる前にやらなければ、魔族は弱体化する。
そのために大急ぎで行われているのを、俺を含む冒険者30名が見守っている状況だ。
目を離すと何をされるのかわからない。
それと、今回の戦いで、魔族に恨みを抱いた冒険者がいるかもしれないからである。
有志で集められたので、そういった者が混ざっているかもしれないが、その時は全員で止めることになっている。
「あ、ミカミさん。お疲れ様」
ネウレアを連れ街から出てきたのは、エリトリナだ。
「街はどうだ? アイツに随分やられただろ?」
「しばらくかかりそう。私達、もしかしたら徹夜になるかもね」
それじゃあ、頑張ってね。と言い残し、ネウレアの手を引いて街に戻って行った。
エリトリナは、ネウレアを家に連れてった後、そのまま街の復興作業に戻る気なのだろう。
俺も再び、魔族の監視にもどる。
怠け者というイメージは全く無いが、魔族は結構働き者だな。
すると、その中から見覚えのあるヤツに呼び止められた。
「お? お前、ブライバス様と話してたヤツじゃねえか」
ゴーレム破片の回収をしていた、青年のような魔族。
確か、ラサットと言ったか。
「俺としてはお前達と和解なんて不満があるけど、まぁ決まったことなら仕方ない」
「そいつはどうも。そういえば、ブライバスはどうしたんだ?」
ラサットは、一瞬ムッとした顔になる。
だが、何も言わずに辺りを見渡しただけだった。
「たぶん、先に村へ帰っているんじゃねぇかな? 後始末が待ってるから、俺達もさっさと切り上げたいところだ。ってこんなことを話している場合じゃないな。さっさとクソして寝ろよ」
ラサットも再び破片集めに戻った。
朝焼けが見える頃、ゴーレムを片付けた魔族は帰って行った。
まぁ、こんなしんみりとした結末もあるだろう。
次回もよろしく!
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