第34話 噛ませキャラって意外と重要
「ヤケクソで魔族連中が降りて来たぞ! 仕留めろ!」
冒険者達は、地面に降り立つ魔族へ攻撃を開始する。
「どうせ魔法だけだ! あんな、もやしみたいな体で俺達に勝てるわけが……ゴフゥ!」
近くにいた冒険者が、青年魔族に斬撃を放つが、難なく避けられ顔面パンチを受ける。
我こそはと、冒険者が次々と四方八方から仕掛けるものの、魔族は致命傷にならない程度の攻撃であしらい、退ける。
兵士を見て、そこそこ舐めていたが、幹部級の魔族は強いようだ。
一方、魔法使いはその様子を見守るだけ。
なぜ援護しないのだろうか?
「エリトリナ、援護しないのか?」
「仲間まで巻き込んじゃうよ。それに、あの大理石の塊も、ネウレアちゃんがいるから、うかつには手を出せないし……」
魔法使い的にも、歯痒いのだろう。
「わかった、任せろ」
盾を前に構えつつ、右方向にいるブライバスを目掛けて走る。
実力は無いが、俺にだって、できることはある。
走り込んだ後、冒険者に囲まれたブライバスの背後に周り込み、様子を伺う。
そして、囲んでいる内の一人の冒険者が、飛び出す。
ブライバスに攻撃を避けられ、鎌の柄で吹き飛ばされた。
これだ。
そして、勇敢な冒険者が一人飛び出すのをブライバスは、それを軽くいなしつつ、冒険者を掴み投げ飛ばす。
ブライバスは、手柄主義という冒険者の性質を知っており、一斉に斬りかかって来ないのを知っている。
ということはだ。
他の誰かが倒された瞬間に、後ろから不意を突けば良い。
卑怯にも見えるが、俺がアイツを倒すにはそうする他無いだろう。
また一人の冒険者が、囲んでいる円陣を抜け、ブライバスに仕掛ける。
ブライバスは右を向いた。
よって、左に回って背後を取る。
願いも込め、剣を振りかぶる。
「隙アリ!」
冒険者を蹴り飛ばしていたため、ブライバスは一瞬だけ、反応が遅れた。
剣先が届く!
ブライバス!悪いが、ここで撃ち取らせ……
しかしながら、俺の攻撃はブライバスには当たらなかった。
気付けば、俺はなぜか地面に横たわっている。
そして、腕の中に全体的に黒い何かが。
「うぅん。アレ、ミカミ? 何で私を抱いているの?」
真っ黒なゴスロリ衣装と、手には包丁。
ネウレアでした。
記憶を戻そう。
俺はブライバスに渾身の一撃を振り下ろす。
ブライバスを両断すると思われたその瞬間、ネウレアが横から飛んで来て、俺に衝突。
で、地面に俺とネウレアが、仲良く寝転んでいるという、現在の状況になった。
わぁ、あったかい。
「……離してよ」
ネウレアが不機嫌そうにして、腕を振り払う。
ま、まぁ俺もロリコンでは無いからね。
ネウレアは何事も無かったかのように、立ちあがり、男の冒険者の方へ駆けて行った。
……っておい!
アイツ、無駄に速いが、その方向にはパリスがいる。
「パリス! ネウレアを止めろ!」
「ミカミ、ネウレアがいるのか? わかった、任せろ!」
嬉々として、パリスはネウレアを追いかけ、捕まえた。
「よーしよーし。落ち着け、ネウレア」
興奮するネウレアを、パリスがなだめている。
面白いから少しだけ、これを見ていたいけど、そんな余裕は無い。
起き上がって剣を拾い、ブライバスの元へ戻る。
月が浮かぶ中、魔族と人間が争い続け、もう何時間になるだろう。
空が少しだけ明るい。
魔族は太陽に弱かったはず。
ということは、もう少しで、今日は退却するはずなのだ。
「朝が近いぞ!」
誰かが、仲間を鼓舞するためなのか、そう叫んだ。
「な、もうこんな時間か。アーバル、ダムド、ラサット! もうここはアレで行こう!」
「良いのですか!?」
ブライバスの提案に、マッチョ魔族が驚く。
「かまわん、もう時間が無い!」
「……了解しました!」
マッチョは、体に対して小さい羽を広げ、空に舞う。
そして、詠唱をして、冒険者ごと結界で仲間を包む。
「まさか、今回の遠征で、これを使う時が来るとはな。ラサット、手伝え!」
「ハハッ、わかってるよ!」
ブライバスと青年魔族は、マッチョと同じく、結界の中で浮遊し、詠唱をする。
その詠唱は、確か街の中でブライバスが、俺達に撃とうとしていたヤツと同じだ。
まさか、魔力不足で失敗した、アレを……!
「撃たせるな! 打ち落とせ!」
冒険者は、斬撃や槍を飛ばして対抗するが、兵を率いていた魔族が、ブライバスに届く前に全てを弾く。
そして、紫色の魔方陣が二つ。
街に向けられ並んでいた。
次回もよろしく!




