第33話 自腹でGO
「ネウレアちゃん、危ないから降りて!」
ゴーレムを前に全く怯まず、ネウレアは呆然と仁王立ち。
それを見た冒険者達は、当然ざわめき出した。
「み、見ろよ、ネウレアだぞ」
「おい大丈夫か? あんなところ登って……」
大聖堂に登ったネウレアを心配する声も多い。
しかし、ネウレアは気にも留めない。
そして、ゴーレムはまた、パンチを繰り出す。
「運命の出会いだね」
何を思ったのか、ネウレアはゴーレムに飛び乗りった。
そして……
◇
魔族の兵士が突撃をしてから、一時間くらいになる。
互いに消耗しているが、魔族兵は今のところ、一匹たりとも街の中へは通していない。
問題は、ゴーレムからの被害だ。
もしかしたら、内部は破壊の限りを尽くされ、既にボロボロかもしれない。
「グワァ!」
俺も少しだけ、戦闘に慣れてきた。
何度か他の冒険者に助けられたが、自力で四体くらい撃破。
こちらは、負傷者はいるが、今のところ死者はほとんどいない。
負傷者が出た場合、すぐに近くの人が助けを出し、退却させているからだ。
「覚悟!」
後ろから声がし、振り替えると、魔族兵が剣を振りかぶっている。
すかさず盾を構えて防ぎ、斜めに一閃。
五体目だ。
ズシーン
聞き慣れた音がする。
冒険者からは「何だ!?」「さっきのヤツか!」といった声が上がる。
振り替えると、大理石ゴーレムが、街から外へ歩いている。
「え! ネウレア!?」
そして、その肩には、なんとネウレアが。
更に、ゴーレムの体のあちらこちらが、ひび割れを起こし、今にも崩れてしまいそうだ。
「な、なぜ我々の兵器に、ヒビが!?」
それには魔族も驚いている。
大理石でできているのだ。謎の信頼ではあるが、丈夫な素材のはず。
しかも、ひび割れは、まるで何か尖った硬いもをぶつけられたような感じの入り方をしている。
「ハァハァ、ミカミとパリス! どこ?」
「ここだ!ここにいる。……しかし、あのゴーレムはどうしたんだ?」
エリトリナは遠くで息切れをして立ち止まる。
息を整えて、こう一言。
「ネウレアちゃんがやったの!」
ネウレアが!?
ネウレアは確か、包丁と手錠以外は装備ができなかったはず。
それに、街中の冒険者が総出で攻撃したのに、全く効果が無かった相手だ。
いったいどうやったのだ?
「こう! ネウレアちゃんが包丁で刺したら、そこからパキパキってなったの!」
包丁でだと?
何度も言うが、包丁は調理器具だ。
大理石を砕く道具ではない。(せめてピッケルとかならわかるが……)
いや待てよ、何か思い出してきたぞ。
あれは確か、俺がベルの店に行った時のことだ。
『なんせ、ネウレアの大理石を貫通させる最強の包丁はここで作っているからね』byベル
アイツの仕業かぁぁぁぁ!!
大理石を貫通させる包丁で、大理石を貫通させたってことかよ!
「な、どういうことだ!? ネウレアにゴーレムが刺されて、崩壊寸前だと! あれはネウレア対策で、私が金出して作ったものでもあるのに!」
ネウレア対策であれほどするのは、一緒に生活している俺からすれば、やり過ぎ感があるが、事実、ネウレアを倒すことができてないんだよなぁ。
てか、ブライバスの自腹かよ。
「なんと言うことだ! 我々の軍神がぁ!」
魔族兵の士気が一気に下がる。
てか、ブライバスの自腹兵器が軍神って、魔族兵は大丈夫なのか?
「よっしゃぁ! お前ら、散々やってくれたお礼に、あのゴーレムをぶっ潰すぞ!」
冒険者達は、落ち込む魔族とは裏腹に、テンションアップ。
腰の引けた魔族兵を次々と倒していく。
「ハハ、まさかこんなになるとはなぁ! 俺達もやるぞ!」
魔法使いも加勢し、形成逆転。
骸骨兵は、十分の一にまで、減ってしまった。
「ハァ、マジか。アーバル、ラサット、ダムド。私達もやるよ――上部には何か言われるけど、このままじゃあ顔が立たない。殺さずにね!」
見かねた魔族が、いよいよ武器を手に取り、飛んで来る。
次回もよろしく!
評価欄と感想欄は各部分の下にあるのでお気軽にどうぞ。




