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第25話 魔族だって遊びたい時もある

 スプーンで金属製のコップに入ったソフトクリームを美味しそうに頬張る魔族。

 うん、シリアスは無いな。


「え! あぁ見つかっちゃったぁ。どーしよ」


 こちらを見て「ヤベ!」っと、イタズラがバレた時のような顔をする魔族は、アイスを食べるのをやめずにそう呟く。


「パリス、行くぞ」


「もちろんだ。見た目で何か負けた気がするし、あんな痴女を放っておくわけにもいかない」


「待って、痴女って言った!? これ好きで着てるわけじゃないの! 大老達が勝手に『女子の制服はこれだ』とか言って決めちゃったの! 私いちおう幹部以上なのに意見通されなくってさぁ!」


 青色の顔を紅潮させ、アイスを置き、全力で弁明する。

 とりあえず、魔族の大老達が良い仕事をしたらしいことはわかった。


「てか、何で当たり前のように店入ってアイス食ってんだよ。お前腐っても魔族だろ」


「なんでアンタ達のイメージ壊しちゃいけないの。部下を侵攻させるから、先に侵入してスイーツを堪能しようとしてただけなんだけど何か!?」


 いや何か!? じゃない。敵地侵入してこっそりアイス食べるなよ。

 てか、部下いるならちゃんと指揮しろよ。

 お前の部下、まだ来てねぇぞ。


 俺の表情で察知したのか、ボイン魔族は机を叩きつつ、涙ながら訴える。


「しょうがないじゃん、魔族の長なのに実権はジジババに握られてんだもん! 私反対したんだよぉ。なのにさぁ、『あの街の方角に一つの煌めく光が舞い降りた。我々の障壁になる前に駆逐せよ』って言い出して私に現場全部押し付けて、アイツら村でのんびりしてんだもん!」


 と、どこかの号泣会見を思わせるように泣き叫ぶ。めんどくせぇなぁ。

 パリスの方を見ると、パリスは俺の方を向き、固まっていた。


「……ミカミ、どうする?」


「念のため、捕まえておこう。襲撃してくる奴らはコイツの部下らしいし、人質にできるかも知れない」


 すると魔族は、泣きすぎて真っ赤に腫れた目でこちらを睨む。

 そして、手元のアイスクリームを急いで完食し、使用済み食器の棚に置いた後、次のアイスを奥から取り出し、再び食べ始めた。


「ごめん、ちょっと待ってて」


 まだ食べるんかい!

 完全にごちそうさまの流れだよな、ちゃんと棚に置いてから戦闘パートへ進む流れもおかしいけどさぁ!


「ミカミ、どうする? いちおうみんなに報告した方が……それに、コイツの部下、まだ着いてないっぽいぞ」


「あぁ、私の部下は全員歩かせているから、もう少しかかるよ。……なんだよ、魔力の節約で歩かせてるの、飛んだりしたら無駄に使うでしょ」


 ごめん、魔族への幻想が全部打ち砕かれた。

 というか、遅れるなら街を守るために置いてきぼりとなっている冒険者のみんなに伝えなければならないことがある。


「なぁ魔族、このパリスとか言う人はさぁ、街の正門前で『来るぞ』なんて思わせるぶりなセリフ吐いちゃったから、ちょっとみんなに伝えに行っていいかな?」


「ミカミ、やめろ恥ずかしい」


 涙を拭いつつ、魔族は笑いながら、


「あんたら仲良いねぇ。あ、そうそう私の名前はブライバス。いちいち魔族って言われると腹立つから名前で呼んで」


 友達感覚かよ。

 俺達は敵同士だったはずなのでは?


「えっと、ブライバスとやら、本音を言うとこちらも争いたくは無い。しかし、襲撃されるというのなら話は別だ。今回は見逃してやるから、部下を退かせてはくれないか?」


 すっかりやる気を失い、パリスはそう提案する。

 まぁ、戦いを避けられるのならば、その方が良いに決まっている。

 ブライバスはしばらく考えて込み、アイスを机に置く。

 そして、なぜか枝毛チェックを済ませた後にやっと口を開き、


「私もそうしたいんだけどなぁ。正直言って占領した後の領地経営とかかなりダルいんだもん。残党がしばらく抵抗してきたりしてさ、治安は悪くなるし、人間が昼に活動するから全然寝られないし……」


 急に何も無い所を見つめ出し、小声で愚痴を吐き始める。魔族もいろいろと大変なのだろう。

次回もよろしく!

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