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第24話 視点変更はややこしい

 ネウレアが、二十歳!?

 見た感じ、まだ垢抜けない少女と言ったところ。

 魔法少女を堂々と名乗っても、恐らく納得してもらえるだろう。


「え?いやそんなわけ無いだろ。見た目がまだ子供だし……」


 すると、ネウレアは頬を膨らませ、


「失礼だなぁ。実は14歳あたりから歳をとらなくなったの、だからいつまでもこの姿なんだけど」


 そんなのありか。

 世のロリコン共が大喜びしそうな設定じゃないか、合法だ!って。


「パリス、そういえば知らないんだったね。後でミカミがばらそうとしてたけど、必要なくなっちゃった」


 エリトリナが横になりながら笑う。

 いつから聞いていた。


「パリス、ちょっとしたら私も行くね。ミカミと喧嘩しないか心配だもの」


「わかった。しばらく寝てろ」


 いろいろあったが、ようやく出られそうだ。

 既に一時間近く話し込んでしまっている。何が起こっているのかはまだ知らないが、しゃくではあるがミカミに聞こう。


 玄関の方へ行く。


「それじゃあネウレア、閉めてくれ。行ってくる」


「行ってらっしゃい。待ってるからね」


 悲しそうなネウレアは、私の背中に手を一生懸命振る。


 本当、ネウレアはズルいな。


 ◆


 やっと視点が返って来た。

 長い間、誰視点の場面を展開していたのだろう。

 作戦がやっと決定し、会議はいよいよ大詰めとなった。

 かれこれ二時間経っているのだが、パリスは本当に何をやっているのだろう。


「済まない、遅れた」


 噂をすれば、息を切らしつつ、バン!っとドアをパリスが開ける。


「遅いぞ、何やっていたんだ」


「野暮用を少々。それより、何があったんだ」


 パリスは、自分で空いた椅子を探して俺の隣に置き、そのまま座る。


「えっとだな、ザックリ説明すると、魔族がこの街に来る」


「魔族、だと!?」


 そして、今までの会議のおおまかな内容を話し、それから少しして会議はお開き。

 各自で準備を始め、夜に備える。


「ただいま」


 ギルドを後にし、ネウレアの家にパリスと共に帰ってきた。


「……お帰り」


 ネウレアが出迎えてくれたのだが、なぜか何となく恥ずかしそうな表情をしている。


「すまん、ネウレア。襲撃は夜以降だし、そのまま直行というわけではなかったのだ」


「さっきまでのムードが台無しなんだけど」


 リビングに入ると、エリトリナが眠そうに目を擦りながら起きた。


「ふぁぁ。パリス帰ってきたんだね、どうだった?」


「どうだったも何も、会議はほとんど終わっていた。それで、みんなが慌てていた理由だが、ここに魔族が攻めてくるらしい」


 エリトリナは、なるほどね、と手を打つ。

 いやそんなテンションで良いのか。なかなかのピンチだと思うぞ。

 ただ、寝込んでいたとはいえ冒険者であるエリトリナにはしっかりと説明をしておかなければならない。


「まったりしている余裕は無い、パリスは今回の作戦に使う荷物を準備してくれ。俺はエリトリナに作戦の内容を説明する」


「了解だ。じゃあ頼むぞ」


 パリスはすぐに部屋を出る。

 俺はポケットからメモを取り出して、街周辺の地図を探していると、ネウレアが袖をクイクイと引っ張ってくる。


「ネウレア、どうした?」


「ミカミ、私にはやることは無いの?」


 使命感を帯びた目でこちらを見る。

 ネウレアに頼むことなんて何も考えていなかったが、そんなことを言われると何か役目をあげなければと思ってしまう。


「うーん、今のところはなぁ。とりあえず飯を作っておいてくれ」


「わかった。何がいい?」


「腹が膨れて短い時間でも食べられる物。夕方には奴らが来るかもしれないからさ」


 ネウレアは懐から包丁を出し、台所へ向かった。


 ……ビビるわ。せめて包丁は台所で出せよ。


 ◇


 太陽が地に沈み、燃える空が余韻を残す。

 街の門の前には何十人もの武装した男達が、地平線を睨み付ける。

 やがて、空からポツポツと星が出てきた頃、街門に火が灯され、男達の鎧を照らし出していく。


「来るぞ」


 俺の左で、パリスが静かにそう言った。

 呟き程度の声だったが、前衛の冒険者は一斉に武器を構え、後衛の魔法使いなどは位置につく。



 十分後……


 冒険者達は構えを崩さずに、じっと魔族を待ち構える。



 三十分後……


「なぁパリス、まだ来ないのか?」


「遅いな。確かに向こうから気配を感じたのだが……」



 一時間後……


 冒険者は武装を解き、中にはその場で居眠りしている者もいる。


「……全然来ないな」


「本当だな。こっちに向かって来てはいるが」


 こういうのって、ひょっとしたらもう街にいたりするのだろうか?


「おいパリス、街の中見て来いよ。避難所の様子とか見たりさぁ。もしかしたら静かに侵入してた、とかあるかもだし」


「しかし、もしも鉢合わせたらどうするのだ? 私一人では助けも呼べないかもしれない」


「はぁ、面倒くせぇな、トイレなら一緒に行ってやるから」


 ※トイレの部分を強調してみた。


「おいミカミ、トイレじゃないだろ! てかもともとお前が言い出したことだし」


「はいはい、怖いんですね。一緒に行ってやるからさっさとついてこい」


 ◇


 暗い夜道を男女二人で歩く。

 これが祭りの時に二人でここが神社とかだったのならば、ドキドキのシーンのはずだ。

 だが、これは祭りじゃないし神社とかあるわけがない。それに、相手がパリスだ。


「静かだな。これと言って気になることは無いが、こうして見ると何となく新鮮だな」


「気をつけろよ、お前が驚いてチビっても替えを用意する時間は無いからな」


「だから、トイレでは無いと言っているだろう!」


 状況に似合わない、くだらないやりとりを続けながら巡回する。

 再び静かになった時、何やら金属を擦りあわせたかのような音が。


「パリス、聞いたか?」


「もちろんだ。金属音だが、やり合っている感じではないな」


 そして、共に音のした方へ向く。

 そこには、俺が一日目で散財したレストランが。


「どうする、この中かもしれない」


「物がたまたま落ちただけだったのを祈ろう」


 昼間では気にならなかった、キィーとドアが開く音を響かせ、店内に入る。

 なんと、そこには……


「お前、何やってんの?」


 頭に角を生やして露出度高めな黒い服を着たボインなお姉さん魔族が、こっそりとソフトクリームを食べていた。

次回もよろしく!

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