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第22話 緊急イベントはシリアスの香り

 プスプスと音を立て、あぐらをかくアメスの頭から煙が上がる。


「……表現が古風だし、それマンガの感電表現だろ」


「酷いなぁ、ボクは被害者だというのに」


 アメスの隣には、同じく感電して気絶したバーンライオの姿が。

 体は焦げ茶色に焼け、アメスと同じように煙が上がっている。


「ふぅ、やったなエリトリナ。みんな、帰ってギルドに報告とでもするか」


 パリスがフラグを立てた。

 いや、まぁ焦げながらもピクピクしてるし、刺激を与えたら起き上がるかもしれない。


「お前ら、絶対触るなよ。まだ電流流れているかもしれないし、弾みで意識を取り戻すかも……」


「何を言っているのだビビっているのか、ミカミ? 別にこれくらいなら触ったくらいでは何ともない」


 と、パリスはお約束の展開をしようとしている。おいパリス、ストップ。


「まさかミカミさんに私の魔法の威力が疑われるとはねぇ。ミカミさんも一回食らってみる?」


 と、エリトリナも杖の先端でプスっと刺す。


「ギャウン!!」


 ほら。息を吹き返したバーンライオは、常夜の森の方向へと逃げようとしていく。

 呆気にとられてポカンとしているパリス達。


「ほら言っただろ! くぅ、早くトドメを!」


「それならボクにお任せだね」


 急に出てきたのは、先ほどまでじゃれられていたアメス。

 両手を突き出し、何やら魔法を唱えると……


「"ヘルネスト"!」


 バーンライオが入って行った森を覆い尽くすほどの大魔方陣が浮かび上がる。

 そして、たいして何も起きずに魔方陣は消えた。


「アメス、終わりか?」


「もちろん、でもこれで大丈夫さ! さぁ帰ろう!」


 自信満々のアメスだが、それを見ていたエリトリナ達は完全に固まっている。


「なぁ、どうしたエリトリナ。そういえば、この魔法って何なんだ?」


 口をパクパクさせながら、その場に倒れた。

 パリスとネウレアは昏倒したエリトリナに駆け寄る。


「おいアメス! お前何やったんだ!?」


 すると、アメスは何食わぬ顔で、


「うん? とある呪いの魔法だよ。三日後に魔方陣内の生物は死ぬんだ」


 このバカ。


「何でこんなデカイ範囲でそんな魔法使うんだ! あのライオンだけを倒せば良いんだよ! てか、もしも森の中に人がいたらどうするんだ!」


「えぇ! だってもしも避けられたりしたら……」


「はぁ、とりあえず街に戻ったら、変な魔方陣の中に入ってしまった人を探して、アメスに解除させよう。と言っても、これだけの植物が枯れたりするのは防ぎようが無いが」


 パリスはエリトリナを背負いながら、ネウレアを連れて帰る支度を始める。


「たく、仕方ねぇなぁ。アメス、解除はお前がやるんだぞ」


 ◇


 荷物の半分以上をアメスに持たせ、街へと戻る。

 依頼は失敗したが、ギルドに報告しなければならない。

 しかし、街にはそんなこと悠長なことをしている余裕など無かった。


「そっち、バリスタを設置してくれ!」


「木材が足らん! 急げ、間に合わなくなる!」


 あちらこちらで何かの作業をしている。

 念のため、持ち物を置いていくかと考えながらネウレアの家へと向かっていたら、偶然ベルを見つけた。


「お、ベル。忙しいようだけど、どうしたんだ?」


「あぁ、ミカミ達か! 簡単に言うと街が大変なことになっている! 冒険者達は少し前に召集がかかっていたぞ、それらを置いたら早くギルドに向かって説明を受けてくれ!」


 なるほど、緊急イベントだ。

 じゃあ!っとベルはそのまま走り去った。


「パリス、アメスは俺が連れていくから、エリトリナとネウレアを家まで送ってくれ。ギルドで会おう」


「わかった。行くぞ、ネウレア」


 荷物を受け取り、ネウレアと一緒に家まで駆けていく。

 ネウレアの出番がまた失われた気がするが、今はそんな余裕は無いようなシリアス展開だ。


「アメス、ギルドに急ぐぞ」


「いいけど、うぅん、ボクは人間として振る舞っておくから合わせてね」


 ◇


 ギルドに入ると、既に冒険者が集まり、ボードのような物にいろいろと書き話し合いをしている。

 誰に状況を聞こうかと思ったが、端の方の席に、見知る人がいた。


「よぉ、さっきまで依頼をこなしていたんだが、どうなっているんだ?」


 仲間と共に装備の手入れをしながら話を聞いていたのは、ヒメアントのことを俺達に教えてくれた例の陽気な冒険者


「おお、お前かぁ。いやぁ、実はこの街に魔族が攻めてくるらしいんだ」


「えっと、お前は確かミカミってネウレアが呼んでいたよな。今朝、二人の冒険者が常夜の森で遭難したというのは知っていたか?」


 今朝ってことは、掲示板辺りに人が集まっていたアレだな。

 常夜の森といえば、さっきアメスが呪いを掛けて行った場所だが……

 続けようとする陽キャ冒険者の仲間を遮り、例の失礼受付が入って来る。


「ここからは知性の無いあなた方より知性に富み、そして義務もある私が説明します」


 お前、知性はあるのに礼儀が無い。

 だが、冒険者達は素直に受付に説明を譲った。


「街の観測隊が、常夜の森にて魔族を観測したとの情報が入りました。また、今朝に行方不明となった冒険者の死亡も確認され、街へと襲撃する準備も伺うことができたようです。魔族は昼でこそ光を苦手とするため、暗い場所に近づかなければ危険性は低いのですが、夜となると話は別。魔法を撃ちまくり街を崩壊させられるほどの力を持ちます」


 つまりは、危険な魔族が来るから、それの対策を練っている状況ということか。


「わかった。後でパリスが来るから俺が説明しておく。それと、常夜の森に入った人は冒険者二人だけか?」


「そうですが、つまらない話なら折りますよ」


 いちいちイライラするが、それを聞けただけで十分。

 まぁ、行方不明者が出ている場所に行くヤツなんていないだろうが、安心した。


「よかったなアメス、とりあえず被害者は……」


 後ろを振り向くと、入り口の影にアメスは隠れており、


「了解だよ。……ミカミ、どうしたんだいそんな怒った顔をして」


 アメスにアイアンくローを食らわせる。

 お前は何で毎回毎回隠れてんだよ。

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