第20話 某ゾンビゲームの序盤に出てくるボスが中盤以降になると複数で出たり中ボス扱いの前座になっていたりすると何となく悲しくなる
ネウレアが見つめていた茂みの中に、アメスが隠れていた。
ストーカーをここで野放しにするわけにいかず、仕方なく斥候として先に行かせることに。
「オラオラぁ! アメス、さっさと歩けよ、斥候やるってことで許してやってんだろ」
「うぅ、なんでボクがこんな目に。……ネウレアちゃんもなんで手錠付けられているんだい?」
そう、ネウレアはアメスを見た瞬間、いつものように包丁を持ちダッシュしようとしたので、エリトリナが速攻で捕まえ、ネウレア自身の手錠で繋ぎ二人仲良く後ろからついてきているというのが、現在の状況である。
「そこで血がドッバってかかって……」
「ほーら、ネウレアちゃん。あそこに蝶々がいるよ」
ネウレア、聞いてないし。
てか、妄想が口から出てるぞ。
「いやぁ、そんなにネウレアがボクのことを思ってくれるなんて、照れるなぁ」
「なぁパリス、次の休憩でサックリいくかないか? どうせ殺しても死なないし、どうせなら再生する様子も見ておきたい」
「わかった、ネウレアから包丁を何本かパクってある。それでやろう」
「あのぉ、お二人さんいったい何を話しているのかなぁ」
「「ヒ・ミ・ツ!!」」
◇
「見ろ、あそこにいる」
ギリギリ降りられるか降りられないか位の高さの崖から下を眺めると、崖の真下にたてがみの無いバーンライオが一頭、狩ったばかりであろう獲物を食べ初めていた。
「それじゃあ、パリスとミカミさん。持ってきた荷物の中身、出して」
そう、アメスのせいで忘れかけていたが、俺達は街を出る前に意味のわからないほど大きくて重い荷物を罰として持たされていた。
ゆっくりと下ろし、中身を開けると……
「何これ、ビン?」
水で満タンのビンが大量に入っている。
「エリトリナ、これは何なのだ?」
「フッフッフッ! 猫避けに水入りのビンが良いことは知ってるでしょ? バーンライオって実は猫の仲間なんだよ。これがあれば、テリトリーに入ってもやり過ごせると思って持って来たんだけど、今回は逆の用途で使えるね!」
確かにバーンライオは名前の通り、ライオンの仲間かつ猫の仲間。
しかし、ライオン様を猫扱いして良いのだろうか?
というか、そんなことの為に俺達は重い荷物をここまで運ばされて……
「なるほど! でかしたエリトリナ、さっそく並べ始めよう!」
と、パリスは嬉々としながらビンを持ち崖を降り始める。
「ミカミさん、私はネウレアちゃんといるから、アメス連れて行ってきてね」
ネウレアを放っておくわけにはいかないから、仕方ないのだが、何となく理不尽な気が。
「おら、アメス行くぞ」
「本当、来なければ良かったよ。ボクがまさかパシりに」
されるなんて。
アメスがそんなことをの呟きながら崖を降りようとした時だった。
ズルッ!
「あぁぁぁぁぁ!」
足を滑らせてアメスが転ぶ。
そして頭を石にぶつけ、そのまま気絶。
「おい、アメス起きろ。おい!」
「ミカミ、今ので気づかれた! 作戦変更だ!」
作戦と言えるものではなかったけどな。
アメスが転んだ時の断末魔でバーンライオはこちらを察知し、向かって来ているらしい。
「たく、何でこうなるんだよ。パリスはバーンライオを引き付けてくれ! エリトリナの準備ができたら合図する!」
「了解! ……ミカミは加勢しないんだな」
俺は戦力にならないかもしれないからな。
やっと体制が整った俺達を見て、バーンライオは大きな口を開き咆哮を響かせる。
次回もよろしく!




