第2話 ロリコンでも近づかない
「お、目ぇ覚めたか」
「ここは……」
気づいた時には、俺はとあるさびれた村のベッドで寝ていた。
聞き取りづらい方言のような言葉を話す、このおっさんに、俺は助けられたようだ。
……助けてくれたのが美少女ではなかったことを残念とは思っていない。
これは本当。
「んで、あんたは『ニホン』ちゅーとこから来たんか」
「はい、そうです。実はとある人探しているんですが、ご存知ではないでしょうか」
「ほうほう、どないな人かい?」
「この世界で最も強い人なんですが……」
この一言で空気が凍結する。
え? タブーなんすか? まさかガチでヤバい殺人鬼とか、頭おかしい奴だったりするのだろうか。
「一番強いゆーたらな……あんた、本当に会うんか?」
「いや、まぁ都合があって会わないといけないので」
「そうかい、仕方ないんやなぁ。ここから西にの方の街行ってみい。
『ネウレア』っちゅー人探してるって聞きゃあ親切な人が教えてくれるで、気いつけて行きな」
「何から何までありがとうございます」
「ほんじゃあなぁ。何か困ったことあったら、またここにこりゃあええからな」
そして、俺は『ネウレア』を探すために西の街に向かって歩いていくのだった。
◇
山奥の村を出発して数日後、西の街の入り口にたどり着く。
街は要塞のように城壁で囲われ、城門には門番の兵士が並び、町並みはまるで中世ヨーロッパのよう。
まぁ、地球ではないので、中世ヨーロッパと言っても、いつ辺りなのかは説明できない。あくまで雰囲気の話だ。
『ネウレア』を探し、聞き込みをする。
すると、街中で、なんとなく気になる少女を見かけた。
真っ黒でイタいゴスロリ風の洋服に身を包み、眼から光が消えている。
人々は皆、髪から靴まで真っ黒な彼女のことを『ネウレア』だと話す。
あれがこの世界のシステムから逸脱した異端の存在なのか? そうは見えないが、話をしなければわからない。
自身のチキンハートから勇気を振り絞り、その全身黒ずくめの(コナ○の犯人みたいな表現だな)少女に話しかける。
「あのぉ、すいません」
「どうしたの? 見慣れない格好だけど、ここは初めて?」
「そうなんだけど、君がネウレア?」
「そうだけど、お兄さんは私を探していたの?」
「あ、いや、まぁそうなんだけど」
「へぇ、珍しいなぁ。話しかけられるのは随分久しぶりだから。 ロリコンでも私に話しかけないのに」
「え?」
「私のことを知る人は誰も近づいてこないから。でも、なんだか懐かしいなぁ」
そう言いながらネウレアと名乗る少女は、不思議そうに目をパチパチさせる。
上目遣いでこちらを見た後、今から行くところがあるの。と言い、三階建ての商館のような建物を指差す。
その建物は、途中の街でも見かけたので知っている。冒険者ギルドとかいうところだ。
「あそこ行くんだけど、一緒に来る?」
「あ、うん。でもあそこって冒険者ギルドって所だったはずだけど……」
「知ってるの? じゃあ説明はいらないね。ついてきて」
ネウレアは足早にギルドへ向かっていくので、ついていくことにした。
◇
「おい、見ろよ。ネウレアが男連れてるぜ、あいつ、まさか知らないのか?」
「あいつも恐らく餌食だろうな、知らぬが仏というやつだ。今のうちにみんなで祈っておいてやろう」
入った瞬間、割れた腹筋が服の上からでもわかるような男達がヒソヒソと話している。
俺達の話をしているということは、聞かなくてもわかる。
「えっと、これお願いします」
ネウレアは、依頼の紙を掲示板から、ペリッと剥がして受付に持って行く。
「えっと、ドラゴンの討伐ですね。承りました」
周りの雰囲気を気に止めず、ネウレアは勝手に手続きをしていく。
手続きが終了し、職員が内容の確認をしていくが、なぜか俺が同行することになっていた。
え? 俺聞いてないんですけど?
「あ、そこの人、今回初めてですか?」
「そうですが」
「そうですか。安らかに眠れますように」
「いや待て、失礼だし縁起悪い」
「あなたのことは一生忘れないでしょう」
「いや死んでないし、お前最低だな」
いろんな意味で居心地の悪いギルドを足早に出て、少女と共に東の峡谷へ向かう。
門番にも何か変な目で見られたが気にしてはいられない。
「いつもこんな感じで一人で行っているのか?」
「うん。だって、私は嫌われてるから。一人で行かないといけないの」
光の無いクリっとした目は、寂しげに遠くを見つめる。
未だにその能力はわからないが、強さ故に人を遠ざけてしまうのだろう。
そんな時に空気を読まず、どこぞの自称全知全能の神が俺にお告げをしてきた。
『ようやく彼女に会えたようだな』
「お前には会いたくなかったよ。できれば勝手に消えていてほしかったかな」
『そう酷いことを言うな。それと、今回は、君にとって有益なことを教えにきたのだよ』
「有益なこと?」
『君はこの世界で最も強く、異質な存在と旅をするのだからな。私の計らいで、君にしか使えない、特別な能力を用意した。ゲームで例えるならば、チートと呼ぶのが相応しい程のものだろう』
「と、特別な能力? チートってことは、俺にも何か規格外で強力な力をくれたってことだな!」
確かに、今まで日本で平和な世の中、のうのうと生きてきた俺を急に異世界に送ったんだ。
ある意味そういうのが無ければまともに生きられないのは普通にわかるはず。
なんだよ、たまにはまともなことできるのかよ。この爺さんのことを少しだけ見直すか。
『君の能力は、ズバリ! "ステータス・オープン"だ!』
特別感出す必要性なくないか? てか、「""」とか、「・」とか無駄に格好よくしようとしているのが、逆にダサい。
ただのメニューから能力値見るやつだろ。ド○クエやってたがそんなの使わなかったわ。
チートとか、普通に誇大広告だろうが。
『おっと、君はわかってないようだな、この凄さを。とりあえず、大声で"ステータス・オープン"と叫んでみろ』
「ステータス! オープン!」
草原にピューと、風が吹く。
ネウレアは、大声で叫んだ俺を見てビックリ。恐る恐るこちらの様子を伺いながら、
「あの、何やってるんですか?」
……何か恥ずかしいんですけどー!
俺意外このジジイの声が聞こえないから、ネウレアから見たら急に大声で訳わからんこと叫んだ風に見えてんだな!
『あ、大声で叫ばくても使えるんだよね』
「先にそれを言え!」
ステータスオープンによって、何やらゲームとかのステータス画面みたいなのが出てきた。
ーステータスー
種族:人間
年齢:17
力:76
魔力:60
……
単位も基準もわからない数値がただただ並んでいる。下にスクロールしていくと、スキルというよくわからない所に行き当たった。
―スキル―
ステータスオープン(対象のステータスを知ることができる)
ヤンデレガード(ヤンデレの恋愛対象にならない)
「なぁ、この二つ目の『ヤンデレガード』ってなんなんだ?」
『これはだな、この宇宙で君にしか与えられなかったスキルだ。文字通り、ヤンデレの恋愛対象から外れるという、とても素晴らしいスキルである』
「どのへんがすばらしいのかわからんが、ネウレアに関係するんだな?」
『無論、その通りだ。これらのスキルを手に入れられるのは、君のように、黒髪黒目で顔が悪いわけではないのにモテたことの無く、他人にイジられやすい10代で、中身が中学生のガキだったのじゃ』
「いや、条件のほとんど悪口だよなぁ!」
『ホッホッホ、ネウレアのステータスも見れるから、見たくなった時にいつでも見ればよいぞ。では、また逢おうか』
「ちょっ待て!」
嵐の様にやってきた自称神は、通り雨のように逃げて行く。
そして、その様子を見ていたネウレアが、同情の目で見てくる。
違うんだ、イタい人を見る目で見つめないでくれ!
と、突然にも影が俺達を通り過ぎた。
「あ、何か来る」
「な、なんだあれは……」
遥か上空、雲の上に、何かがいる!それは、巨体から一対の羽ばたく翼を持つ黒い影。
咆哮が辺り一面に響く。
雲に大きな穴が空き、そこから巨大な黄色の翼竜が舞い降りた。
次回もよろしく!




