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第15話 ストーリーに常識人は一人くらいちょうど良い。ただしコメディに限る

 巣穴から出ると、外は既に夕暮れになってしまっていた。


「今日は散々な1日だったなぁ。……なぁミカミ、お前はいつまでふてくされているのだ? なぁエリトリナ、私は何かとんでもないことをしてしまったのか?」


 と、パリスはオロオロ。

 エリトリナはそれを笑いながら見ている。


 夕日に照らされた街に入り、パリス達と共にギルドに直行すると、カウンターには前にも見た顔が……


「こんにちは。残念ながらアリの餌という第二の人生を歩まれなかったのですね」


 ドラゴンの時もお世話になった、例の失礼な受付が、こちらに笑顔で毒を吐く。


「それはもはや人生なのか? てか、お前ずっといるよな、何かお前見るとイライラするんだけど」


「その鶏頭でも覚えておられたのですね。明日明後日もぜひ死にに行ってください」


「お前、その性格でよく面接通ったな」


 口を開く毎にイラっとするセリフを吐く受付に報告した後、報酬を受けとることができた。

 値段で言うと、一人あたり三食付きの宿に泊まれる程度の値段。

 初心者向けの目標のわりには高いが、死にかけたわりには安い気もする。

 それが冒険者という職業なのだろう。


「これでミカミも宿に泊まれるな。だが、ミカミはこれからも冒険者をやるのだろう? 武器や防具を買わなくても良いのか?」


 そういえばそうだ。巣穴では途中からネウレアから包丁を一本、パリスに剣を一本借りたのだが、今の俺はほぼ丸腰状態だ。

 異世界から戻るためにも、これからいろいろな物が必要になる。

 だが、またネウレアの家に一人で泊まるというのも、気が引けるんだよなぁ。


 悩んでいると、エリトリナが閃いたようにこう言った。


「あ、そうだパリス、ミカミさんが1人で泊まるのはアレだし、私達もネウレアちゃんの家に行かない?」


「わ、私達が? まぁ、ミカミとネウレアを二人きりにするのはネウレアのことを考えたら、どうかと思うしそれは良い案だが、いきなり大勢で家に押し掛けるのは迷惑じゃないか?」


 おっと、誤解されているようですね。

 俺は案外紳士なんだよ。

 だが、いちおう空き部屋はそれなりにある。


「ネウレアの家は大きいし、部屋もそれなりにはあった。……パリス、その顔はなんだよ」


「明日になったら、ミカミも自分の寝床を用意しろよ。しかたない、ネウレアには悪いがそうしよう」


 ◇


 というわけで、ネウレアの家にみんなでのお泊まり会が決定したわけだが、先に俺の装備を調達しなければならない。

 そうとなれば、行く場所は一つ。ベルの鍛冶屋だ。


 扉の鈴を鳴らしながら店内に入ると、そこには作業が終わったばかりなのか、椅子に座ってくつろいでいるベルの姿がある。


「お、今日は大勢でいらっしゃい、流剣も一緒か。どんな用事だい?」


「いや、実は装備を買いに来たんだ。恥ずかしながら、俺は今丸腰で……」


「なんだよぉ、前来た時に一緒に買えばよかったのに。だが、ウチの店来たのは正解だよ。なんせ、ネウレアの大理石を貫通させる最強の包丁はここで作っているからね」


 それは過剰強化というものだ。何度も言うが、包丁は調理器具だからな。

 ここの街にはまともなヤツが全然居ない。

 ベルは俺の財布(と言っても報酬の袋をそのまま持ってきただけなのだが)を見て、少し考え込み、


「そうだなぁ、ミカミの有り金だと一式は無理だな。それなら剣、盾、胴をオススメするよ。膝当てとかは無理に買わなくて良いし、最小限だけの装備でも戦えなくはないからな」


「なるほど。じゃあどれを買うかはベルに任せる。なるべく良いものを選んでくれ」


「任せろ、まぁウチの商品は全部良品なんだけどな」


 ◇


 ガシャガシャと音を鳴らす袋を抱えながら、日が落ちかけてあちらこちらにランプの明かりを帯びる街を歩く。


「今日は散々な1日だったな、ゆっくりと休みたいところだ。エリトリナ、私達の荷物は持ったよな?」


「それはもちろん。でも、巣穴でネウレアちゃん達を見かけた時はビックリしたよね。パリスも人の前ではそんなんだけど、叫び声が聞こえた時は本当に……」


「ちょ、それ以上言うな!」


 パリスがエリトリナの口を慌てて塞ぐ。


「まぁまぁ、それは後で聞くとしてーーついたぞ。ここがネウレアの家だ。ネウレア、鍵開けてくれ」


 ネウレアはポケットからストラップのついた鍵を出し、鍵を開ける。


「お邪魔するぞ……おぉ、広いな」


 感心するパリスを放置して、リビングへのドアをネウレアが開ける。

 昨日と同じ部屋で寝ようかなぁ、と考えながら歩いていたのだが、扉を開けた瞬間立ち止まったネウレアに、ぶつかりそうになり足を止める。


「とっと、急に止まるなって……」


 しかし、その中を見て、絶句する。


「ミカミ、お前もどうしたのだ。中に何かいるのか?」


 リビングには昨日ネウレアが寝ていたソファーがある。

 そこに、居てはいけないはずのモノがいた。


「やぁ、はじめまして。ボクの名前はアメス、これからよろしく!」

異世界転生・転移ランキングでランクインしました!

日間87位、週間170位、月間284位!(文芸、SF、その他)

応援してくだっている皆様、ありがとうございます!

2020年3/11(火)


次回もよろしく!

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