第11話 三上死す!?
ネタバレ予告!?
待て、まだ決まったわけではない。
そもそも城◯内は死んでいないし、普通に病院送りになっただけだ。
気を取り直して、今の状況を簡単におさらいすると、巣穴を見事に何事も無く進んだ俺達は、奥地の行き止まりで真っ黒なヒメアントの大群に追い込まれている。
更に、あてにしていたネウレアがヒメアントにビビって俺の後ろに完全に隠れているという絶体絶命な状況が今である。
「キシャー」
前回からのくだらない茶番と今回の状況説明を律儀に待ってくれたヒメアント達が、やっと終わったか、とでも言うように一斉に飛びかかって来る。
心もとないし、あまり長くはもたないことも覚悟の上、構えた包丁でヒメアントに斬りかかる。しかし、傷は浅く大したダメージにならない。
仕方ない。接近して来たヤツから順に蹴りを食らわせ、時間を稼ごう。
すると、蹴り飛ばされたアリが尻部の先をこちらに向けてきた。
その道においては全くの素人の俺でもわかる、蟻酸を掛けるつもりだ。しかもここは行き止まり――避けられない!
と、心で叫んだ時だった。
洞穴の向こうから何かの叫び声のようなものが聞こえると同時に、アリ達を吹き飛ばすあるいは両断しつつこちらに向かってくる白い斬撃が見え、蟻酸を掛けようとしたアリを半分に斬り俺の頬を掠める。
一瞬で多くのことが起こり過ぎたため、説明が長くなってしまった。簡単に言うとこう。
※△◯×□(謎の叫び声)→白い斬撃がアリの集団の奥から来る→俺達に液体をぶっかけようとしていたアリを真っ二つ→俺の頬を掠めてドーン。以上。
「な、なんだ!?」
そして、砂煙と共にアリの集団を斬り伏せつつ現れたのは、昨日ギルドでお世話になった糞剣士、パリスだった。狭い通路のためになのか、背中に背負っている剣ではなく腕の長さ程の剣を使っている。
「騒々しいと思ったらお前達か。入り口にヒメアントの屍があったから他の洞穴を探そうかと思ったが、まさか貴様を助けることになるとはな。本当、無様な姿だな」
「お前に言われたくないセリフだよ。てか、お前の飛び道具が俺のイケメンな顔を傷つけたんですけどぉ!」
「それは良かった。帰ったら神に感謝しなければ」
あの野郎、後で覚えていろよ。
しかしながら、パリスとエリトリナが来たことで、形勢逆転。
あっという間にヒメアント達は蹴散らされてしまった。
残った少数のヒメアントは逃げて行き、行き止まりには俺達だけが残る。
「ふぅ、とりあえずここは押さえたな。……ネウレア、終わったぞ。それ、隠れられてないから」
小さな岩の陰に隠れてじっとしているネウレアに呼び掛ける。しかし、なぜネウレアはヒメアントに向かってヤンデレを発動しなかったのだろうか?
「ネウレア、今日は調子が悪いのか? ドラゴンの時みたいになると思ったんだが……」
すると、呆れたような顔でパリスが、
「お前は何を言っている。ヒメアントのほとんどは、メスだ」
このアリどもの全てがメスって、そういうことか!
「おい、見ろよ。ネウレアが男連れてるぜ、あいつ、まさか知らないのか?」というギルドで聞いた言葉。
それはおそらく、ネウレアはメスにしか反応しないということなのだろう。
さらに、近縁種のハチなんかは働きバチ全てがメスであり、オスは普段何もせずに巣で過ごす。
そして交尾の季節になると、女王バチ目掛けて飛び立って、最初に女王の元にたどり着いたオスのみが交尾するという習性を持つらしい。
アリが人に被害を与えることなんてなかなかないので、アリもそうなのかは知らないが、ハチに近いのであればそうなのかもしれない(アリ系で被害を与えるのはシロアリぐらいだが、実は分類的にはアリじゃないと聞いたことがある)。
「たく、そんなことも知らないのか」
「パリス、そういうことばっかり言ってると、ネウレアちゃんに嫌われちゃうよ」
「う、うるさい! ネウレア、悪いのはこのミカミとか言うヤツだからな」
と、パリスがネウレアを抱き締める。
あ、何? お前そういうタイプ?
次回もよろしく!




