第10話 最強とは、序盤で活躍させて重要なシーンで封印するためにある
こんにちは。執筆を再開させて頂きました。
作者の都合で休止することとなってしまい申し訳ありません。
二人の足音が巣穴の中で何度も響く。
さっき倒した門番アリから浴びた体液のせいでせっかくの服が臭くなってしまったが、いよいよヒメアントの巣穴に潜入だ。
ヒメアントは、その大きさ以外日本にいる普通のアリとさして変わらない。
黒く光沢を帯びた複眼、力強い顎や壁をよじ登る身体能力に同じアリ同士でも脅威となる蟻酸。
特に蟻酸は、狭い所では避けられないため、十分な装備を持たない今の俺が最も気を付けなくてはならない攻撃だ。
まぁ、ネウレアに任せればそんな心配をする前に巣穴ごと滅ぼしそうだがな。
問題なのは、ネウレアが俺の後ろにいることである。
◇
巣穴に入ってからどのくらい歩いたのだろうか。
巣穴に入れば頻繁にヒメアントとエンカウントすると思っていたのだが、予想に反して今のところネズミ一匹すら出てこない。
分かれ道は何個かあったが、あまりにも単調な探検に嫌気が差してきた。
もしかしたら、たまたま何も無い洞窟にヒメアントがいただけなのかもしれないな。
「ネウレア、全然ヤツらが出てこない。外れだったかもしれないから、引き返さないか?」
「ミカミがそうしたいならそうするけど」
「じゃあもう少し歩いて何も無かったら引き返そう」
カツコツカツコツ。
再度歩き始めるが、道が広くなった以外には、やはり何も起こらない。
もう少しだけ歩いて、それでも何もなかったらいよいよ引き返そう。
そう考えてから数分ほど歩き、足に疲れが出てきた頃、学校の教室の半分程の広さのある空間に出た。
ようやく現れた大きな変化。しかし、ここで行き止まりのようだ。
「なぁネウレア、行き止まりのようだ。引き返そうか?」
と、後ろを向くと、そこにいたのはネウレアでは無く、――入り口で俺が刺しまくった巨大アリ、ヒメアントの大群だった。
地面から壁、さらには天井まで。
松明の淡い光で照らされた洞窟をびっしりと、真っ黒なアリ達が覆い尽くす。
そうだ、アリはある程度の壁ならよじ登れる。
そして俺は、入り口でしっかりとお仲間の臭いを付けていた。
ヤツらはいなかったのではない。
俺に気付いて後ろから付け狙っていたということだ。
「まじかよぉ!」
さっきネウレアからもらった包丁を構えるも、見えるだけでもその数、50以上はいる。
こんなものでは、五分ともたないだろう。
「ミカミ、ミカミぃ! こっち来る!」
後ろから悲鳴が聞こえる。
なんでお前がビビっているんだよ!
虫は苦手ですかぁ? お前が頼りなんですけど!
理由はわからないが、ネウレアのヤンデレは発動しないようだ。
こんなんならネウレアに安い剣の一本でも買わせれば良かった。
「ネウレア、どうにかしろよ!」
「無理無理無理ぃ! ミカミがやってよ!」
ネウレアはそう泣き叫びながら、俺の背中を包丁の柄でどつく。
くそ、完全に追い込まれたようだ。
どう見てもダンジョンのピンチシーンだし、肝心のネウレアもこんなんだし、起承転結の転の部分だが、包丁一本でどう切り抜けろと。
『次回、三上死す!』じゃないか。
デュエルスタンバイできねぇよ!
次回もよろしく!




