第93話 「初出動‼」
神様と別れて自宅に戻るとノアが
「カズヤ君、ガイさんから依頼が来てるよ」
と伝えてきた
また王様から何か言われたのかな?と宿場町まで転移するとガイさんが居る警備部の建物まで歩いて行った
「ガイさん、依頼があると聞いたんですがどうしたんですか?」
「おぉ、カズヤ君!実はな…」
宿場町の周囲には元々ブルビット等の小型魔物が多く住民や商人からの依頼があると警備部が討伐に向かうシステムで運営している
だが最近小型魔物に混じって中型魔物が増えてきて警備部の隊員にも少なからず甚大な被害が出る様になってきたそうだ
今回、要請で現地に向かうと中型の中でも狂暴な「ガゼルキラー」が集団で襲ってきて隊員が数名犠牲になったらしい
ガゼルキラーは文字にある様にガゼルの容姿が大型化した魔物で後ろ足の蹄の近くに切れ味鋭い角が生えている
単体なら数人で陽動を掛ければ簡単に討伐出来るが集団となると連携されて危険度が増すそうだ
「フフフ…ガイさん。俺に任せて下さいよ」
カズヤは不敵な笑みを浮かべてそう答える
「何か作戦でもあるのか?」
ガイさんがそう尋ねるのを待っていたかの様にカズヤは動いた
「サモンメイルッ‼(鎧召喚)」
カズヤの体が一瞬光に包まれた次の瞬間、赤と金色の鎧を装着していた
「…恥ずかしくはないのか?」
恥ずかしくは…ないっ‼
変身シーンは「漢の浪漫」なのだ
逆に中途半端に照れていては「漢の浪漫」は辿り着けないのだっ‼
コレを理解出来ない人は「男」ではあっても「漢」ではないのだっ‼
「う…うむ、済まなかった…」
普段温厚なカズヤの興奮っぷりに顔を引き攣らせつつガイは謝る
変身シーンを完璧にする為に掛け声にはかなりの時間を割いたのだ。
「蒸○‼」や「変~身っ‼」等様々な候補の中から血反吐を吐く思いで決めた「サモンメイル」。
そして装着シーンの演出にもカズヤの想いが存分に込められている
ヒーローたるもの装着にぐずついていてはいけないのだ‼
満足げに胸を反らせるカズヤにガイは一抹の不安を感じざるを得なかった
カズヤはガイに出没ポイントを聞き出すと
「じゃあ行ってきます‼」と力強く言い放って空高く飛翔した
(直ぐソコではあるのだがな…)
漢たるもの、細かい事を気にしていたら「負け」である。
飛翔して即着地するとカズヤは右手をガゼルキラーの群れに向けた
「ディフューズウェイブガン‼(拡散波○砲)」
カズヤの攻撃でガゼルキラー達は瞬殺、残るのはカズヤの高笑いのみだった
速攻でガイさんの元に戻ってきたカズヤの顔写真には遣りきった漢の笑顔が張り付いている
「お、おう。カズヤ君ありがとう…」
「また危機が訪れたら喚んで下さいっ‼じゃっっ!」
カズヤはそう言うと空高く飛翔し帰って行った
(相当深い悩みを抱えているのだな…)
ガイはカズヤを飲みに連れて行こうと心に誓うのだった




