第74話 「それでは逆に困る」
。。。
かれこれ10分程気まずい無言状態がここ、警備部の応接室に漂っている
先に沈黙を破ったのはやはり警備部の統括、ガイだ。
「その…「気持ち」と言うのは相当高額を請求するつもりなのかね?」
「えっ⁉いや…いつも依頼主さんが払っても困らない額しか頂いてません。場合によっては物々交換ですし…」
「物々交換?」
「えぇ、お金で無理な時は作物とか…他の方法で頂いてます。それでもない時は出来たら頂いてますね」
「何と⁉」
「俺は田舎から出てきてモノの価値とか常識とか全く分かってないんです。なので依頼を請けて幾ら?って設定が難しくて…」
「うーむ、君には驚かされてばかりだよ」
「…すいません…世間知らずで…」
「君の行いは世間知らずの域では説明が出来ないのだが?」
「す、すいません!」
「あ、いや。此方こそ申し訳ない、あまりにも荒唐無稽な出来事につい取り乱してしまった」
「…すいません…」
「(苦笑)これでは話が進まんな。それでは単刀直入に腹を割って話そう」
「はい」
「この国では魔物の討伐は先ずその土地を警護している警備部が行っている。
それでも対応が出来ない程の事態であれば国に直訴して軍を要請している」
「はい、それは村人から聞きました」
「うむ、この場合警備部も軍も治安維持の名目で無償で動いておる。活動費や駐留費用等は民からの税で賄っておるからな」
「はい」
「そして…まぁ襲撃には限らんが本来治療を必要とする民が出た場合その土地にある「教会」が治療を担っている。
これもまた普段より民からの寄進によって運営を保証されておるので無償での治療となる」
「あ、はい」
「ところが今回、君が全てを行った訳だ。依頼を受ける形でな」
「?」
「そうなると無償と言う訳にはいかん。これを違えると世の中の規範が崩れてしまうからな」
「そうですね…」
「そこで先程からヒル殿と頭を抱えておったのだ。君の活躍に見合う報酬はいかほどになるのだろう?とな」
「なるほど、分かります」
「討伐も治療も国の名の元に貴賤の隔てなく行う為に基本的には税や寄進で賄われている以上、これに金額をつけるべきではない。と私は思う」
「同感です」
「そこで今回は町の民を救ってくれた「お礼」として特別に報償金をカズヤ君に「私とヒル殿の連名で」渡そうと思う」
「そんな‼結構ですよ」
「この提案を断って貰っては逆に困るのだ。民にも示しがつかんからな」
「…はい、その様に仰られるのであればお受けします…」
「うむ。で、相談なのだが報償金の金額はもう少し待って貰えるだろうか?適正な金額でないとこれもまた民に示しがつかんからな」
「…了解しました。お任せします」
「カズヤ君とは今後も良い関係を保ちたいからな」
「こちらこそ宜しくお願いします」
やっとの事で落とし処を見出だした3人はホッと溜息をつくのであった




